第百三話 興味
次で、野雲さんの過去終了。
なんか、書くの辛くてテキトーかもしれないですね。。。
でも、これも一つの作品の内容ですから、あしからずです。
若者の飲酒運転が原因だった。
会社からの帰路で電車を介し、駅の裏口から通りへ出た時だったらしい。夜の八時を過ぎていて冬のせいか辺りは暗く、何とかタクシーを拾おうと父は道行く車のヘッドを目で追った。すると、まもなくして煌々とまぶしい光を発する軽トラが遠方から走ってきた。不良のおふざけだと思った父はタクシーだと勘違いして上げそうになった手を下ろし、そっぽを向いた。その数秒後、父は蛇行した軽トラに数十メートル吹っ飛ばされた。
病院に運ばれた父は緊急の集中治療で一度は命の綱を手に取ったが、もうろうとしたなか、事件のいきさつだけ話し、すぐに死んだ。父が死ぬ間際にベッドで医者に止められながらもした発言により犯人はすぐさま特定できたが、私としてはそんなことどうでも良かった。
父を轢いた輩は若者で飲酒運転で男だと聞いたとき、私は胸のうちに何か理解できない感情が宿っていることに気付いた。その感情は私に信じられないほどの行動力を与え、恐ろしいぐらいの残酷さを与えた。
父の死から二ヵ月後、私は告白してきた男をスタンガンで気絶させた。告白されたのが放課後の教室で、彼は私の返事が気に入らないのか突然抱きつこうとした。それを見計らって返り討ちにしたのだ。
父が犯行時に使っていたスタンガンを書斎の引き出しで見つけ、私はその頃からそれを持ち歩くようになっていた。父がいなくなった以上、私は自分の身は自分で守るしかないと理解していた。
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どうやら、母は私と父が週に一度だけセックスしていたことを知っていたようで、いつの日か私と母の間に会話はなくなっていた。しかし、ある日突然、彼女は私との話し合いを求めた。
話は、父と私の肉体関係から、それを嫉妬しての自身の不倫についてだった。「あなたたちが、先に私を裏切ったのよ」と、母は言った。父が死んだとき母はまったく泣かなかったので、私はその理由に納得し、悲しむどころか腑に落ちたことが気持ちよかった。
母は、私を捨てて不倫相手と再婚したいと述べた。このままいくと、どうやら私は見も知らぬ親戚の家へ飛ばされるか、施設へ預けられるという話だった。私がどちらも嫌だと反対すると、母は少し考える素振りをして、一つだけ連れて行ってやれる方法があると面倒臭そうに話した。
どうやらそれは、私が母の新しい主人と性行為に及ぶことだった。母の不倫相手は、私の顔写真を一度見たことがあって、私の顔を知った以降何度も私を紹介するよう母に頼んだというのだ。そして、今回も私が股を開いて母の隣で犯されれば、一緒に住んでもいいということだった。
私は、それを承諾した。
すると、母は驚いた顔になり、悲しい顔にもなった。罪悪感と背徳感の狭間で母は息も絶え絶えだった。私も同じようなものだった。
一度、面会したいということで、私と母は指定されたラブホテルへ肩をならべて向かった。用意された室内へ入ると、そこには細身の男性が独りで居た。彼はすでに裸でソファに座っており、私と母の姿を認めるなり「乗れ」と言った。それだけなのに、母は事を理解し、男の上へまたがった。
室内に母のあえぎ声が響き、私は呆然と立ち尽くしていた。怖気付いたわけではなく、ただ母が知らぬ男と行為に及んでいることに、新鮮な驚きを受けた。
男は母の肌を何度も叩き、何度も殴った。母が疲れて動くのをやめると、忌々しそうに舌打ちして、髪を引っ張った。母は痛みから泣き喚き、やがて床に崩れた。
「まだ服を脱いでないの?」
床でうずくまる母を足蹴にした男は、私に振り向いてそう言った。母とは違って、とてもやさしい口調だった。「乗って?」
私は服を着たままがいいと頼んだ。男はそれもいいだろうとニヤけて、「じゃあ、お馬さんごっこしよう」と幼稚に言った。私が高校生で童顔だから、そんな言い方をしたのだ。
好きでもない相手と行為に及ぶのは、二度目だった。今回は一応合意だったものの、それは私の人生に対する無気力や精神力の欠如からくるものだった。父が死んでから、すべてがどうでも良くなっていたのだ。
「私も離婚していてな。息子がひとりいるんだ。中学一年なんだがな、もう毎晩オナニーをしてるんだ。再婚したら、どうか明美ちゃんが、彼の相手をしてやってくれ」
私はふん、と鼻で笑うしかしなかった。どうやら、今現在は母が息子と性行為をしているようだった。そして、その後釜として私がいるのだ。
私も含めて、みんな狂ってるんだと心から思った。
「それにな、私の同僚に、四十五にもなって童貞のやつがいてな、そいつと君とで今度ホテルに行ってやってくれ。もう約束しちゃってるんだよ。とびっきり可愛い子で卒業させてやるって」
あっそ、と私は適当な返事をした。
すると、それが気に食わないのか、男は私を殴った。私は母と並んで倒れこんだ。なんで母はこんな奴と結婚しようとしているのだろうかと、ふと母の表情を見てみると、その表情には何もなかった。同時に、母の瞳に映る私も、何ら感情を抱いていない表情をしていた。
もう母子ともに、人生に微塵も興味がなかったのだ。
私はそれに気付いたとき、少しだけ視界に色が戻ったような気分になった。
すると、ソファに座って私たちを見下ろしている男に向かい、私は服のなかに隠していたスタンガンを向けた。
私は母に服を着せてホテルから連れ出し、近くのコンビニで別れを告げた。
もうお互い一生会うことはないだろうと言い残し、私はその場を離れた。私には父の形見のスタンガンがあった。それさえあれば、生き抜けると信じた。
それらがない母親が、このあとホテルへ踵を返そうが、真っ直ぐ自宅へ帰ろうが、もうどうでもよかった。
その翌朝、ニュースで母の自殺が報道された。