吸血鬼&ゾンビ再び
傷心旅行で乗ったクルーズ船で、吸血鬼と出会い、ゾンビに襲われた。
そんな経験をした私は、最近転居、転職をした。
何の因果か、船で出会った吸血鬼が付きまといだしたからだ。
面白い奴と見込まれてしまい、自宅近くにまで現れた。
勘弁してくれ。もうお前とは関わりたくない。
新しい職場は、スポーツジムだ。
健康的な人々が、楽しく過ごす場所。
吸血鬼やゾンビはお呼びじゃない。
幸い運動には自信がある。
事務兼子供スポーツ教室の補助という仕事になった。
さすがに子供の吸血鬼やゾンビは、いないだろう。
新居も職場から近く、歩いて通勤している。
公園を横切るので夜の人通りは少ないが、朝の通勤時は気持よい。
念のため紫外線対策兼、武器になる日傘も持っている。
今も歩いて家に帰る途中だった。
「ギャオー」
暗がりでゾンビが襲いかかってきた。
またか。
二度目ですからね、こちらも冷静に対処しましたよ。
持っていた日傘で、足を狙って突きを繰り出した。
前回よりもジムで鍛えているからね。
思った通り何度かの突きでゾンビの足がもげ、戦闘不能になった。
人が通りかかる前に、このゾンビを何とかしないと......。
「パチパチパチ」
拍手の音がする。
奴か......。
また見つけられてしまったか......。
何のために引越ししたんだ!
「せっかく引っ越ししたのに、残念だったね。」
引っ越し代を返せ!
「何でゾンビとセットででてくるの?!」
「うーん、ちょっと仲が悪い吸血鬼がいてね。
そいつが嫌がらせにゾンビをときどき送り込んでくるんだよね。」
おまえのせいかー!!
お気に入りのレースの日傘が、ゾンビの皮膚だの、体液だのにまみれている。
高かったのに......。
「ちょっとこれ片付けてくるから、待っててね。」
そう言うと、吸血鬼はゾンビを担いで姿を消した。
よくあんなものを触れるわね。
でもゾンビの死体を片付けてくれるのは、助かる。
今のうちに逃げよう。
「ひどいよ。待っていてって言ったよね。」
遅かった......。
「この際だから言わせてもらうけど、いい加減付きまとうのはやめて!!
迷惑です!」
「ごめんね。他の吸血鬼からも嫌われていて、独りぼっちなんだ。
それで、人恋しくなってしまって......。」
イ、イケメン吸血鬼が寂しそうにしていたって、ほだされないぞ!
騙されちゃだめだ!負けるな、私!
「君の血を吸ったりしないから、こうしてときどき話をするのは、ダメかな?
絶対に危害を加えたりしないから。
久しぶりに人と話が出来て、嬉しかったんだ。」
そうなんだ......。
ゾンビを送ってくるくらい、嫌われてんだね。
少し同情するよ。
「じゃあ、近所の知り合い程度なら。
たまにすれ違って、挨拶する程度なら......。」
「知り合いからスタートだね。
よろしくね。」
そそくさと私はゾンビ襲撃の現場を後にした。
暗闇に消えていく彼女の後姿を見送りながら、俺は、ニヤリと笑った。
うーん、結構ちょろいな。
独りぼっちって言ったら、同情したみたいだ。
こんなに簡単に信じちゃいけないよ。
悪い男にそのうち騙されてしまいそうだ。
確かに他の吸血鬼には、嫌われているけどさ、こっちも結構ひどいことをしたからね。
おあいこかな。
まぁ、知り合いからスタートして、友達、そのうち仲間の吸血鬼になるかもしれないし。
ゆっくりいこう、時間はたっぷりあるんだし。




