表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「疲れたら異世界キャンプ ~秘密の焚き火で心をリセット~」  作者: 新米オッさん兵士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/39

第24話 湖畔の炎と、森守の串焼き

月曜の夜、佐藤悠真はアパートのベランダで焚き火台に火を起こしていた。

 先週の湖畔で得た「森の息吹」が、まだ体の中に静かに息づいている。

 深呼吸をするだけで、周囲の空気が少し澄んで感じられ、心が自然と落ち着く。

 月影薄荷げつえいはっかのお茶を淹れ、炎を見つめながら一口飲む。

 香りの導きと森の息吹が重なり、薄荷の爽やかさがより鮮明に感じられた。

 「この力……どんどん深くなってる」

 金曜の夜、悠真は山奥のキャンプ場へ向かった。

 今週はプロジェクトの最終調整で少し忙しかったが、心に不思議な余裕があった。

 テントを立て、焚き火を大きく起こすと、光の門が開いた。

 今夜は湖畔の露店街へ行き、バルトおじさんとリリアさんに会う予定だった。

 異世界に渡った瞬間、湖風がパンの香りとハーブの香りを運んできた。

 露店街は夜の灯りに包まれ、活気に満ちていた。

 まずバルトおじさんのパン屋に立ち寄ると、おじさんがすぐに気づいて笑顔を向けてきた。

 「また来てくれたか!

 前回のコーヒー豆、家族みんなで喜んでくれたぞ。

 今日は特別に、森守鶏もりまもりぎの肉を少し分けてもらったんだ」

 悠真は現代の粗塩と少量のドライフルーツを交換に差し出した。

 バルトおじさんは大喜びで、星白米のパン、森の麦のパン、そして森守鶏の良い部位を少し分けてくれた。

 次にリリアの湖風の香り草堂へ行くと、彼女が優しい笑顔で迎えてくれた。

 「待ってたわ!

 前回のハーブ、どうだった?」

 悠真は現代の深煎りコーヒー豆と蜂蜜を交換に差し出した。

 リリアは目を輝かせ、新しい黄金花の束、月影薄荷の新鮮な葉、銀葉草の大きな束、そして**炎鱒えんます**を2匹分けてくれた。

 「この炎鱒は湖の奥で獲れた新鮮なものよ。

 森守鶏と一緒に焼くと、きっと美味しいわ」

 二人の温かさに胸がいっぱいになった悠真は、湖畔から少し離れた静かな場所に移動した。

 タープを張り、焚き火を大きく起こす。

 今夜は新しく手に入れた炎鱒と森守鶏をメインにした、豪華な湖畔の晩餐を作ることにした。

 一品目:炎鱒と森守鶏のミックス串焼き

 炎鱒を丁寧に下処理し、森守鶏の肉を一口大に切る。

 交互に串に刺し、銀葉草を少し巻きつけ、炎芯胡椒と森晶塩を振る。

 焚き火でじっくり焼いていく。

 火の囁きと香りの導きが同時に働き、火加減が完璧に感じられた。

 炎鱒の脂が滴り落ち、森守鶏の旨味が染み出す。

 皮がパリッと香ばしく焼き上がり、串から立ち上る煙が夜の湖畔に広がった。

 一口食べると、炎鱒の脂の甘みと森守鶏の締まった肉の旨味が交互に楽しめ、最高のハーモニーだった。

 二品目:星白米と森の青菜の湖風炊き込み飯

 クッカーに星白米を入れ、清流の水を注ぐ。

 森の青菜を刻み、銀葉草と黄金花の花びらを散らす。

 森晶塩で味を調え、弱火でじっくり炊く。

 炊き上がったご飯は、星白米の甘い香りと青菜の爽やかさが湖風に溶けていく。

 三品目:黄金花と湖鏡蓮の花蜜茶

 黄金花と湖鏡蓮の花びらを煮出し、星蜜果の汁を加える。

 焚き火の余熱で蒸らしながら飲むと、体全体が優しい香りに包まれた。

 食事を進めていると——

 頭の中に、温かく力強い声が響いた。

 『大地の温もりと、香りの導きが……

 さらに深く繋がりました。

 今、森の息吹が、貴方の中に生まれました……』

 その瞬間、悠真の体に、湖風のような優しい力が巡った。

 森の息吹——新しいスキルが目覚めたのだ。

 深呼吸をすると、周囲の空気が少し澄んで感じられ、体全体がリフレッシュされる。

 焚き火の煙までもが、以前より心地よい香りに変わった気がした。

 悠真は焚き火の側に座り、深く息を吸った。

 湖風がハーブの香りを運び、星空が頭上に広がる。

 体の中に、穏やかで力強い魔力が巡っているのがはっきりとわかった。

 バルトおじさんとリリアさんの笑顔が、胸に温かく残っていた。

 夜が更けても、焚き火は理想的な状態を保っていた。

 悠真はシュラフに包まり、星空を眺めながら静かに考えた。

 現代の仕事、会社の人間関係、未来への不安——それらが、焚き火の前では小さく感じられるようになった。

 異世界の森と人々が、俺を静かに支えてくれている。

 朝が来た。

 湖畔の朝は、今日も美しかった。

 朝陽が湖面を金色に染め、残りの星白米で簡単な朝粥を作った。

 黄金花茶を淹れ、一緒に味わう。

 森の息吹のおかげで、朝の空気がより澄んで感じられ、体が軽く目覚めた。

 午前十一時頃、門がゆっくり薄れ始めた。

 悠真は湖と露店街を名残惜しそうに振り返り、現代側へ戻った。

 キャンプサイトで撤収をしながら、悠真は胸に手を当てた。

 新しいスキル「森の息吹」が、静かに体の中に根付いている。

 現代に戻っても、その感覚は微かに残っていた。

 アパートに帰ったら、ベランダで焚き火を起こし、新しいハーブのブレンドを試してみようと思った。

 秘密の焚き火は、今日も俺の心を深く、優しく照らしてくれている。

 魔力はゆっくりと、しかし確実に、俺を新しい世界へと導いている。

(第24話 終わり)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
途中から23話の内容と同じになってませんか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ