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第1話 三百二十二回目の夢

妹が死ぬ未来を、私は三百二十二回見ている。


そして三百二十二回目の夢で、宇宙は終わる。


だけど私は、その夢を止める方法を知らない。

夢はいつも、同じ場所から始まる。


暗い宇宙だ。


爆発はない。

音もない。


ただ、星だけが静かに消えていく。


一つ。

また一つ。


銀河が崩れ、宇宙はゆっくりと暗くなっていく。


その中心に、二つの光が

寄り添うように浮かんでいる。


ホタル。

アカリ。


私たちの名前と同じ響きを持つ光。

夢の中で、私はそれを見上げている。


そして必ず、同じ瞬間が来る。


アカリが振り向く。

少し困ったように笑って、私の名前を呼ぶ。


「ホタル」


夢の中のアカリは、いつもそう呼ぶ。

それから言う。


「たぶん、これが最後」


私は首を振る。

夢の中なのに、必死で否定する。


「違う。まだ終わらない」


でもアカリは首を振る。

そして静かに言う。


「大丈夫」


少しだけ笑って、


「ちゃんと残るから」


その言葉の意味を聞く前に、

宇宙の光が消える。


最後に残るのは、二つの星。


そして。


そのうちの一つが、静かに消える。


アカリの光。


そこで私は、目を覚ます。


三百二十二回目の夢を、私はついに見てしまった。



天井が白い。

現実だ。


息が荒い。

心臓がうるさい。


三百二十二回目。


最悪の夢だった。


「……また見たの?」


隣から声がする。


アカリだ。生きている。

私は少しだけ安心した。


「宇宙、終わった?」

「終わった」

「何回目?」

「三百二十二回目」


アカリは少し考えてから言う。

「それ、夢じゃなくて記録じゃない?」


私は黙る。

その言葉が、妙に引っかかったから。


 記録。


それは、この施設で一番よく聞く言葉だ。


宇宙観測機関アーカイブリング研究局。

宇宙のすべてを保存する場所。


そして地球の軌道上には、

巨大なリングが浮かんでいる。


 アーカイブリング―宇宙の記録装置。


今日、私たちはそこへ行く。


アカリが開けた窓に、

光の輪が浮かんでいる。


「ねえホタル」

「なに?」

「宇宙が終わるならさ、全部、残したいよね」


私がうなずいたその時、スピーカーが鳴った。


『研究員ホタル、アカリ。リング転送準備完了』


アカリが笑う。


「出番みたいだよ」


私はリングを見る。


胸がどうにもざわつく。

理由は分からない。


だが、

今日、何かが始まるという確信があった。


そしてその終わりを、私はもう知っている。


――三時間後。

私たちはアーカイブリングに到着した。


そして、


“妹の死が記録された未来”を知ることになる。

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