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蒼眼のアイギス  作者: 面倒
第二章 「隠されたモノ」
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第十三話 「忍び寄る影」

お待たせしました。更新頑張ります。

――目が覚める。


心臓の音が口から聞こえてくるようだ。


胸を抑えようとした手はいうことをきかない。


体の節々が小刻みに震える。


獲物に睨まれた子山羊のようだ。



――子山羊?――脳裏の奥で、誰かが舌打ちをした。



「アイギス?」



動悸は治まらない。


目に水が滴り、額を撫でる。


汗、冷や汗。 



背中にも額にも、ひどく汗をかいていた。



「なんだ、すごい汗だぞ、悪い夢でも見たか?」


言葉を発せず、ウルケリオンを見るアイギス。

まだ少し荒い息を整え、思い出そうとする。


脳裏に残るのは炎。しかしそれ以上思い出せない。


「わからない…多分、嫌な夢だと思う、火事かな…?」


「ふーん、そろそろ自己紹介が終わるぞ、俺は騎士学科の訓練場を見てみたい」


その言葉に、気づけば少しだけ平静を取り戻したアイギスが作り笑いを浮かべて返す。


「好きなところを見て回れるわけじゃないと思うよ?」


随分と乾いた声が、自分の喉から出てきた。




ーーー




上級生が先行して階段を登り、後に続くのは三人の同級生。


そのさらに後ろにアイギスとウルケリオンそして執事のジル。



「そろそろ図書室だ、飲料の持ち込みは構わないが食べ物は禁止だ」


階段を登り切ったところで思い出したかのようにこちらを振り返り、そう告げる上級生。


「図書室の本は持ち出せますか?」


唐突にそう尋ねられ、少し驚いたように長髪の男子上級生は答える。


「え?まあ持ち出せるよ、今日は他の班との兼ね合いもあるから難しいけど、受付で手続きすれば大丈夫さ」


「なんだ、アイギスは読みたい本があるのか?」


横から投げられたウルケリオンの言葉に、少し下を向き答える。


「うん、特定の本が読みたいってわけじゃないけど、読みたいジャンルならあるかな」


階段を登り切り廊下に出る。


アイギスが下に向けていた目線を戻す――「すごい…」


最上階の四階はその半分が図書室だと聞いていた、しかしこれは。


思わず口からこぼれた言葉に、上級生はニヤッと笑って見せた、驚いているのは皆同じようで前の同級生三人も目を見開いていた。


他の教室とは違い扉を置かない四階の構造。

そこは階段を登り切ると目が本と本棚で埋め尽くされた。

背丈を軽々と超える凄まじ量の本に驚いているアイギスに、上級生の声がかかる。


「教頭によると、学園で最も価値のある部屋だそうだ」


自慢気な上級生の顔も頷ける、ここまで圧倒的だとは思わなかった。

しかし、その圧巻の光景に何も感じていない生徒が一人だけいた。


「なんだ、王宮のより小さいぞ」


傲慢な王子め、是非今度見せてもらいたい。




図書室の次は運動場だった。


学園の中央を広く使う、楕円形の空間。

そこら中で肉体を痛めつける生徒や魔術の練習をする生徒の姿が見える。


「今だッ!」


少し聞き覚えのある声。


「遅いッ!」


というか今朝聞いた声。


「おいアイギス、見てみろよあれ…学園名物の鬼教官ラバスタンだ」


ウルケリオンに言われ、目を向けた先。

今日の朝、まだ日も登りきら無い時間から生徒を恐喝していたあの男だ。


「ラバスタン教官は騎士科の教官だが、あまり関わらない方がいい…次の日立てなくなるから」


遠い目をする引率の上級生、その姿からは言い知れぬ渇きを感じる。

諦めた者特有の空気を纏っていた。


「先輩、あの人の授業を受けたことがあるんですか?」


同級生の一人がそう問いかけると、一瞬だけ硬直した彼はゆっくりと振り返り、何か言おうとしては躊躇い、焦点の定まらない眼差しを向けた。


「僕は騎士科だ…」


「ああ、その…すみません。」


質問した同級生は申し訳なさそうにそう呟いた。





ーーー





日が沈み夜の賑わいが王都を支配する頃、南部の貧困街の一角、浮浪者の”フリ”をした男が一人。

月に対抗するかの様な商業街の明かりを眺め、思い返す。




紙に書かれた文字は『アザドラニア王立学園』


たった一切れの紙を届けた部下はその場で崩れ落ちた。


傷だらけの体からは人工的な毒物の匂いが漂う。


歩くのもやっとだったのだろう。



ようやく見つけた。



やっとここまで突き止めた。


アイギス・アヴィゲイル。もといアイギス・ゼルネアン。


その命を刈り取るために我々はここに居る。




アザドラニア王国の王都ラグニア、人々の欲望の渦巻くこの都市は、神聖なる我らが都市とは違い欲望の悪臭が鼻を着く。


その諸悪の根源であるゼルネアン家。彼らの当主に受け継がれる能力を奪い、神の再誕のために使用する。




神のため。


だから、例え相手がまだ十歳の子供だとしても、容赦はしない。


逃がしはしない。


「散れ、合図を待て」



その言葉で周囲の気配が掻き消える。




総勢三十名。


本国で鍛えられた本職の暗殺者達だ。


我が父の残した仕事を確実に遂行する、神聖なる我が国に栄光を。

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