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蒼眼のアイギス  作者: 面倒
第二章 「隠されたモノ」
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第十一話 「傲慢」

北の棟へ足を急ぐ。


鍛錬に時間をかけ過ぎてしまったため、ほとんどの新入生が既に移動を済ませていた。

着替えをすませ、嫌な汗を滲ませつつ走る。


棟の入り口には数人の教員と生徒が立っていた。


「そんなものは私には関係ない」


言い争う声が聞こえ、アイギスはふと耳を傾ける。

一人の生徒と執事、それに四人の教員。


「困ります、この学園では――」


なだめようとする教員の言葉に我慢が出来なくなったのか、生徒の方が大声をあげた。


「くどい!私は王族であるぞ!」


怒気を込めたその言葉に、アイギスの脳裏に古い記憶が過る。

ウルケリオン殿下、第二王子殿下だ。


「たとえ王族と言えど、この学園では平等に――」


「ふざけるな!そんなものは建前に過ぎん!」


王子が遅刻をして、それを叱る教員と喧嘩をしているようだった。

もちろん従者である執事が王子を諭せるわけもなく。


駆けて荒れた息を少し整える。


静かに歩みを進める。


「私は朝から貴族連中の寄越した手紙に返事を書かねばならん!貴様らの誰より重要な務めであるぞ!」


背を向ける殿下と殿下の怒りに焦る教員は気づかない。

しかし、流石は王族の従者。執事の方は背を向けながらもアイギスに気づいていた。


「ですが、いくら身分が――」


「そんなものは建前だと…誰だ!」


学園の硬い床、そこに響く足音に気づいたのか、王子が振り返る。


「背後からのご挨拶、無礼をお許しください。アヴィゲイル伯爵家が三男、アイギス・アヴィゲイルにございます。お久しぶりです、ウルケリオン殿下。」


教員に少し目をやり、すぐに目の前の王子殿下に目線を戻す。

堅い床に片膝をつき頭を下げる。


「久しぶりだと…いや、知っているぞ、我が姉に褒められていたのがお前…貴殿であったな!そうか、同学年であったか」


どうも思い出したようで、少し笑顔になる王子。

しかし緩んだ表情をすぐに厳しい顔つきへ戻る。再び振り向き、教員と対峙する。

執事はまだアイギスを見ていた。


一度会話が途絶えたことで静かになる双方。

父の言いつけには反するがやむを得ない。


「殿下、お先に中へどうぞ、私が変わりましょう」


「む、そうか、では任せることとする、ジル!行くぞ」


実は面倒だったのだろう、アイギスが変わると伝えた途端に執事を連れて会場に向かう王子。

それを横目に、教員に向き合う。

目があった教員がふと思い出したかのように話し始める。


「君、いくら貴族とは言え勝手は許されないよ」


「勝手ではありません、私は王家に忠誠を誓う一員として、代理人を務めるまでです」


その言葉に、四人の教員の内の一人、最も年配の教員が笑みを浮かべる。

それ以外の三人が眉間に皺を作り、少し悩む。


「この学園では身分制度に関わらず、学生としてのルールが適応される、王子であっても貴族であってもだ」


大きな体の男性教員が、反論は許さないという風にそう告げる。

正直、学園のルールを全部読んだわけじゃないから分からない、わからないが、学園内で身分制度が無効というわけでは無いはずだ、あくまでも学園のルールには従わなければいけない、という決まりにすぎないはず。


「貴族、それも王族が代理人を立てることを禁ずる決まりが、この学園にはあるのでしょうか」


「だから、学園で――」


「ない、ないとも、学園の規則はあくまでも学生の守るべきルールを記した物にすぎない、既存の法律に反する規則は記されていない」


男性教員の言葉を遮り、年配の教員が話し始める。


「では、この辺りにしませんか?教員の皆様とて、第二王子殿下と真っ向から喧嘩したい訳ではないのでしょう?」


「そうだな、助けられたのはワシらの方かもしれん、しかし…君はなぜ遅刻したのだ?」


「朝から上級生と一緒に鍛錬に参加していました、多分騎士学科の皆さんだと思います」


そう返すと、年配の教員は再び笑みを浮かべる。


「そうかそうか、今回のみ見逃そう、さあ、早く行きなさい」


その言葉にひとつ礼をして踵を返す。

他の教室の門よりも一回り大きな北の棟の門。


少し重たいその扉に手をかけ、力を込める。

グググと鈍い音を響かせながらもゆっくりと開く。


軽々しく開けていたさっきの執事はやはり異常だ。


門を開くと、後方で座っていて音に気づいた生徒が何人か目を向ける。

最後列の端、執事を後ろに立たせている生徒がいた。


そちらに向かい歩き始める。


早い。

執事の方はすでに接近に気づいているようだ。


ある程度まで近づくと、王子もこちらに気づいたのか、ふとふり返る。

目が合うと、笑みを浮かべ手招きする。


「先は助かったぞ、横に座るがよい」


「失礼します」


一瞬執事に目をやり、王子の横に腰掛ける。


「先ほどジルから聞いた、貴殿は相当に魔術が出来るそうだな」


「アイギスと、そうお呼び下さい、父上に教わりましたから、魔術はそれなりに使えます」


「そうか、ではアイギス、お前も名前で呼ぶが良い」


少し嬉しそうに話す王子に、自然と笑みが浮かぶ。


「では、ウルケリオン殿下と」


「ウルクと呼んで構わん」


「では、ウルク殿下と」


そう言うと、満足そうに目線を元に戻し、壇上で自己紹介をしている教員を眺める。


不思議と、彼とは馬が合う気がした。


なぜだか、彼もそう思っている気がした。

今日はおそらくもう一話投稿します。

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