第一話 魔王(実父)に勘当されました
この世界は人界と魔界に分かれ、
人が住むところを人界、魔族が住むところを魔界と呼んでいる。
私は魔界生まれ魔界育ち、
しかも魔族の親玉、魔王の娘です。
そんな私が転移させられた場所はなんと人界の片隅。
「お前は気が弱すぎる。
この先、我の後継として魔族を率いるには向かん」
「えっ、でも優しいことは悪いことではないですよね?
お父様だって言ってたじゃないですか。
お前の取り柄は優しいところだって」
「その優しさが魔族にだけ向けられる分には良い……
だが、お前は人族にも優しいではないか!
奴らは我々を散々虐げてきたのだぞ」
「そ、それは……」
私は言い返すことができなかった。
「ともかく、お前は魔王の娘失格だ!お前を人界に追放する!」
「えっ、ちょっとお待ちください!
お父様!」
私の足元に転移魔法の陣が広がっていく。
「魔王の娘、レムエラ。お前を人界に追放する!」
そして、私の体は光に包まれ、気づけばのどかな田舎町に飛ばされていたのである。
「えっ、ここ、本当に人界ですか?」
私はキョロキョロと辺りを見回す。
確かに同族の気配はない。
代わりにもーと鳴く、白黒の謎の生物が柵に囲われた中で干した草っぽい何かを食べている。
見たことのない風景に私は戸惑い、ぽかんと佇む。
「いや、とりあえず……ど、どうすればいいのでしょう!?」
私は百面相をしながら、辺りを見渡す。
するとありがたいことに声をかけてくれる人物が。
「どうかしました?」
私は声の方に振り向く。
「え、や、優しきお方……
人界にもやはり優しい方が」
「えっと、お困りなんですよね?」
「は、は……え?」
私はその人物を目の当たりにした瞬間、その腰に携えられたものにも目が入った。
間違うことはない。そこから感じたのは圧倒的光魔法の気配。
そして光の魔剣を扱えるのはただ一人だけ。
そう勇者である。
あの魔王幹部であるゲーティスを一撃で吹き飛ばしたという伝説のある魔剣を携え、
あまつさえそれに手をかけている。
えっ、お父様!?ピンポイントで私を勇者の元に!?
え、勘当というよりむしろ死にに行けと?
「えっと、大丈夫ですか?」
「あ、え、は、はい」
動揺は隠せない。
まさかこの人気づいて──
それで私に声をかけたのではといえ、疑念が湧いてくる。
「あの、名前は」
「レムエラ……いいえ、レムです!」
咄嗟に口にしてしまう。
口を塞いだがもう遅い。
その名前は魔王の娘のものとして、世に知られているはず。
「レム!いい名前ですね!」
「えっ、あ、ありがとうございます」
勇者はにこにことして、私のことをレムと呼んだ。
何かの間違いだろうか。
「僕の名前はユウキです。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
ユウキと名乗った勇者は手を差し出す。
なんと握手を求めてきたのである。
ここは魔王の娘らしく堂々と、いや、どうなんだろう?
とりあえず握手を返す。
かくして、私は勇者に助けられたのである。




