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ラッキーカラー  作者: 遠藤 敦子
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 それは秋の風が吹く11月のこと。結婚して4ヶ月となる28歳の竹中(たけなか)敏也(としや)(りん)の夫婦は結婚前から犬を飼いたいと思っていたけれど、ついに保護犬を迎えることになった。2人は保護犬の譲渡会に行き、引き取りを希望する家族や子どもたちに混じってじゃんけんに参加する。

 敏也がじゃんけんに勝った結果、ビションフリーゼの1歳の女の子である「うめ」を竹中家に迎え入れることが決まったのだ。うめは前の飼い主が結婚して海外に行くことになり、かつその夫が犬アレルギーなので飼えなくなって手放されたという。敏也と凜は、今まで以上にうめにたくさん愛情を注ごうと決めた。


 いきなり知らない場所に連れて来られてうめも最初は戸惑っていたけれど、敏也と凜が毎日愛情深く育てた甲斐もありのびのびと過ごせるようになってきている。敏也は営業マンとして大手企業で勤務しており、凜も派遣社員として大学の事務職に就いているため、平日の日中はうめは家で留守番していた。派遣社員の凜は17時退勤なので、19時から20時に退勤する敏也よりも早く帰宅する。そのため凜が帰ってくると、うめは嬉しそうに尻尾を振って玄関で凜を出迎えていた。先に凜を、次に敏也を玄関先で出迎えるのがうめのルーティーンだったのだ。


 ある日、うめは散歩用の首輪を2人に買ってもらう。パステルピンクの首輪で、シルバーのハートのチャームがついている。チャームにはローマ字でUMEと名前が刻印されていて、うめにとって世界に1つだけの特別な首輪だった。そういうわけでこのパステルピンクはうめのラッキーカラーであり、うめはこれを付けて散歩に連れて行ってもらうのが楽しみだったのだ。

 土曜日の朝、うめは凜と敏也に散歩に連れて行ってもらう。みんなで朝ご飯を食べた後に散歩に行くのがうめは待ちきれなかった。まだ朝ご飯を食べている2人を横目に、早く散歩に連れて行ってくれと無言のアピールをするほどだったのだ。


 うめが最初に仲良くなったのは「モカ」というメスのトイプードルだ。モカはいつも可愛い服を着て散歩しているので、うめは

「その服可愛いね。買ってもらったの?」

 と問いかけた。今日はモカはセーラー服を身にまとっているけれど、

「ううん。お母さんに作ってもらったんだ」

 と嬉しそうに答える。モカの飼い主の柴田(しばた)さんは手芸が得意な40代半ばの主婦だ。柴田さんはうめを連れていた凜に

「良かったらうめちゃんにもお洋服作ってあげようか? 私こう見えて裁縫得意なの」

 と言う。いやいや良いですよ、と凜が返したけれど、柴田さんは

「うめちゃん見てると可愛いお洋服着せてあげたくなるのよね」

 とのことだった。それならばと凜は柴田さんのご好意に甘えることにする。せめて材料費だけでもと凜が申し出たけれど、柴田さんは

「私がうめちゃんにお洋服着せてあげたくなっただけだから」

 と特別に無料でうめの服を作ると言った。

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