両親の卒業制作を見た娘
2枚目の画像は、みこと様より頂戴致しました。
その他の画像は、AIイラストくんで生成致しました。
昔の漫画本でも貸して貰おうとしてお父さんの書斎へ入った私は、そこで変わったタイトルのDVDを見つけたんだ。
「へえ…『帰ってきた仮面ウォーリア!凶悪、ゴドゾム怪人軍団』だって。特撮物かな?」
聞いた事もない題名に胸を弾ませながら、私はデッキにディスクを挿入したの。
案の定、それは等身大の変身ヒーローを主人公に据えた特撮映画だった。
世界征服の野望を果たす為に政府要人暗殺やインフラ破壊といったテロ計画を企てる終末結社ゴドゾムのサイボーグ怪人軍団と、改造手術の寸前で脱出した大学生の変身する仮面ウォーリア。
この両者の織り成す死闘は特撮ヒーローとして正統派の流れで、安心して見ていられるね。
出演者の大半は全く知らない人達で演技も殺陣も荒削りだけど、映画制作の楽しさと情熱がヒシヒシと伝わってくるよ。
だけど二人だけ、私のよく知る人達が俳優として出演していたんだ。
その二人というのが…
『やはりゴドゾムの仕業か…許さん、変身!』
「えっ、お父さん!?」
何と画面の中で変身ポーズを取っていたのは、若き日の私のお父さんだったんだ。
「今日こそお前達の最後だ!行くぞ、アマゾンヌ将軍!」
光学合成で格好良く変身したのは良いけど、娘としては複雑だなぁ…
何せ聞き馴染んだお父さんの声で喋っている訳だし。
だけど私にとっての衝撃展開は、これからだったんだ。
「フフ、猪口才な仮面ウォーリアめ…やれ、デスマスク獣人!彼奴の首級を総統閣下に捧げるのだ!」
配下の怪人に檄を飛ばす女幹部の顔がアップになった時、私は我が眼を疑ったの。
「お、お母さん!?」
赤いマントの下は黒ビキニだけ。
そんな大胆な装いで薙刀を構えていたのは、私のお母さんだったの。
やがて怪人と戦闘員は蹴散らされ、ヒーローと女幹部の一騎打ちというクライマックスに突入したんだ。
「あ〜あ、お母さんが爆発しちゃったよ…」
妖術を駆使して善戦はしたものの、勧善懲悪の大原則には敵わない。
必殺技を喰らったアマゾンヌ将軍は組織への忠誠心を示した直後に崩れ落ち、採石場の爆炎として消滅してしまったんだ。
「京花も見たのね、あの映画。言ってくれたら生解説してあげたのに。」
話を聞いてみた所、あれは学生時代の両親が所属していた畿内大学映画研究会の自主製作映画で、当時の部長だったお父さんの卒業記念制作でもあるんだって。
最初は凄く驚いたけど、両親の青春時代を垣間見る事が出来たのは娘として喜ばしい限りだよ。