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第三編「我が家の商品」
あー、もう、疲れた。
何で私が手伝わなくちゃいけないの。
商品の仕込みの時期だってのはわかってる。
けど、私はまだ学生なんだよ!? それを何? 朝、三時起きって!!
眠い目をこすりながら、ハタという物干し台に、商品をかけていく。
それは、割り当てられた作業を終えるまで続いた。
……やっと終わった。まず、顔を洗おっと。
目を覚ますため、作業場のすぐ外にある、手洗い場に向かう。
大きなあくびをしながら、蛇口をひねろうとしたとき。
流しの横に置いてあったカゴに、腕がぶつかった。
「……あ」
流しの中に、カゴと、その中身が落ちてゆく。
「こら! 朝食用に、余ってたのを茹でておいたのに!」
お母さんが飛んできて、私を叱りつける。
朝ごはんになるはずだった我が家の商品、手延べそうめんは無残にも、全て流れていってしまった。
「……これが本当の流しそうめん、なんて」
お母さんが、私の頭をチョップした。