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異世界探偵アルバ  作者: 木林白田
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リューの独白

「脅されてたんだ」 


 そういうとリューは力無くその場に座り込んだ。


「脅されてたって何をタネに脅されてたんだ?」


 アルバが詰問する。


「それは言えない...」


「ちょっと!私とゲリーに攻撃を仕掛けておいてそれはないでしょ!」


「本当にすまないと思っている」


 リューは項垂れながらそう言った。


「ケイミーだな。ケイミーに脅されてパーティーメンバーを襲ったのだろう」


「あぁ、そうだ」


「嘘!なんでよ!?」


「黒いローブを纏った者と入れ違いでリューとケイミーが来たんじゃなくて、黒いローブを外したリューとケイミーが戻ってきただけだったのだな。おそらくリューとケイミーが二人きりになったタイミングで脅されたんだろう。目的はわからない」


 ジェシカがリューを睨みながら告げる。


「脅されてたのってカサンドラとの関係のことについてでしょ?アンタがカサンドラに指輪を渡してプロポーズしたってゲリーから聞いたからね!」


 ジェシカがリューの胸ぐらを掴む。リューがそれに抵抗する。


「プロポーズなんかしていない!俺は嵌められたんだ!」


「ほう、一体どういうことだね。リュー君」


 リューは観念したように幻灯祭の日のことを語り出した。


 あの日俺は浮かれ気分だった。空に浮かんでいくホロゴーストの灯りが街の闇を照らして、ジェシカの瞳をしっかりと見つめることができた。


 俺は誰もいない橋の上で片膝をつきジェシカにプロポーズしたんだ。その時、ジェシカはてっきり喜んでくれるかと思ったが、その表情は悲しみに溢れていた。


 ジェシカは俺のプロポーズにノーで答えると、自身にかかっていた魔法を解除した。カサンドラはジェシカに化けていたんだ。


 俺はどういうことかとカサンドラを問い詰めるとカサンドラはこれまで隙を見てジェシカと入れ替わり、俺と交際していたことが発覚した。


 思い返してみればジェシカと話が合わない時がいくつかあった。それは全てカサンドラによって齎された齟齬だったのだ。



 俺は自分とジェシカの全ての記憶を疑わなければならなくなった。膝をついて一頻り、ジェシカへの謝罪の言葉を口にした。その間もカサンドラは謝罪の言葉を口にしながら俺の腕に纏わりついてきた。


 それがあまりにもうっとおしく感じてしまったから、俺はつい腕を振り払ってしまったんだ。そしたらカサンドラは橋の上から落ちてしまったんだ...


 次の日だった。カサンドラの死体が川から見つかり、ケイミーの証言によって橋から足を滑らせて死んだということになっていたんだ。 


 俺たちは死体を迷宮に安置して、アルバさん、アンタを護衛してここまで戻ってきた。そしたらなんだ、カサンドラは生きてるだって?


 訳もわからないまま転移魔法でケイミーと二人きりになったら、やっぱり俺がカサンドラを橋から落としているのをケイミーが意図的に誤魔化していたのが分かった。


 ケイミーはそれをバラして欲しくなければ、黒いローブを羽織ってパーティーメンバーを襲えという。俺はもう何が何だか分からなくなってゲリーを殴ってしまったんだ。


 俺は最低なやつだ。許してくれとは言わない。きっとカサンドラの復讐が始まっているんだ。俺はそれを受け入れる覚悟がある。それに乗じてケイミーが何かを企んでいるってことだけは承知しておいてくれ。


 リューの独白を聴き終えると、ジェシカは青白い顔をしてえずいた。リューはそんなジェシカから目を逸らし、下を向いている。


「この男の言ってることが全て正しいとは限らないわ。プロポーズに失敗して逆上して妹を殺したのかもしれないわ。」


「そんなことするわけないだろ!そうだ指輪を持ってるなら、指輪の刻印を見てくれよ」


 ジェシカはゲリーから渡された指輪を見るとそこにはR&Jと刻印されていた。


 ジェシカはそのことに気づき少なくとも裏切られてはいなかったと確信した。しかし、妹を殺したこの男への怨みまでは消えなかった。


 アルバはこれまでの会話からある違和感を感じた。


「ジェシカ。お前さっきゲリーからカサンドラとリューの浮気について聞いたって言ったよな」


 ジェシカはどこか魂の抜けた顔で答える。


「そうよ。でも、今はもう一旦帰って色々整理してから話しましょう。私もうこれ以上は耐えられない」


 ジェシカは冷静さを取り戻したようだった。


「そう...だな。まだ不審者が残ってる以上早く帰ってギルドに報告しなければ」


 リューが普段の判断力を取り戻す。アルバはリューとジェシカに従った。


 先の見えない道のりをリューは地図を確認しながら、右へ左へと迷宮を抜けていく。硬い岩肌に足を挫きそうになりながらもアルバは懸命に歩いた。


 リューは手探りながらもモンスターを避け、まだ未踏の地へ足を運んでいった。すると崩落して潰れていた道の裏側に着くことができた。


 しかし、彼らの目に飛び込んできたのは信じ難い光景だった。


 崩落していた通路には数多もの死体が転がっていて、通路の横の壁には文字が引っ掻かれていた。その文字は以下のように判読できた。


 迷宮に潜れ。


 ジェシカとリューはこれほどの死体の数に慄いた。アルバは死体を検死した。この死体は右腹部にナイフで刺されて死んでいた。


「あぁ!カサンドラ!見てるんだろ!?一体俺たちをどうしたいんだよ!」


 そう言うと、崩落した通路の反対側の闇からゲリーが現れた。


「大変ゲス!ケイミーがあっしのことを殺そうとしてくるでゲス」

 

 リューとジェシカは顔を見合わせた。そのまま走ってゲリーに近づこうとするリューとジェシカをアルバが止めた。


「ちょっと待て。ケイミーはどこだ?」


「一心不乱に逃げてきたから分からないでゲスよ!とにかく今は合流を!」


「そうだぞ、アルバさん。一旦合流してから話し合おう」


「いや、もう既にゲリーは話し合いのステージに居ない可能性が高い」


「あんたは毎度毎度訳わからないことばかり言って、結局どうしたいのよ」


 アルバはジェシカを無視して進める。


「その手のひらに隠しているナイフを落としたらどうだ?カサンドラ」


 そうアルバはゲリーに告げた。


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