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異世界探偵アルバ  作者: 木林白田
4/10

亡霊

「うーん、こちとら命がかかってるわけで別に勤労意欲はそこまで高いわけでもないし、別にいいよん」


 アルバはあっさりとジェシカの求める協力に応じた。ジェシカは拍子抜けしたような顔で座っているアルバを見る。


「だけど、お前らは本当にそれで大丈夫なの?」 


「は?」


 ジェシカが聞き返す。


「いや別に大丈夫ならそれでいいけど」


 そう言ったアルバは大きく伸びをしてひんやりとして硬い岩肌に体を横たわらせた。


「リュー君、休憩はいつまでだい?」


「あと十分くらいですけど...」


「じゃあその時に起こしてね」


 そういうとアルバは寝息を立てて寝始めた。リューは「こいつ、さっき死にかけたのによく眠れるな」という驚愕の顔でアルバを見つめる。





 アルバが起きると、パーティーの面々は既に出発の準備を整えていた。アルバも渋々起きて身なりを整えると、「さぁ、帰るぞ!」と、号令をかけた。


 パーティーの面々はまた何か言ってると、アルバの号令をさらりと流して、リューの号令を待った。


 「全員準備はいいな。言うまでもないが帰りの方が迷宮は危険だ。気を引き締めて行けよ」


 気合の入った声でアルバ以外が返事をする。アルバはまた走らなくてはならないという事実に変な動悸が収まらないでいた。


 帰りだからゆっくり帰ってくれないかな、と仄かに願っていたが、その願いはあっさりと打ち砕かれることになる。


 セーブポイントを抜けて、通路を曲がり四階に戻ろうと階段を踏みしめた時、上の階からモンスターパレードが襲い掛かってきた。


 リューはすぐさま退却の指示を出し来た道を全力のスピードで走って戻った。アベルはギチギチと歯を嚙合わせるモンスターを前にして、置いて行かれないようにさっきよりも必死で走る必要があった。


 アベルがセーブポイントまで戻ったのは一番最後だった。後ろのモンスター達はアベルの気配がセーブポイントの中に入ったことを知ると、三々五々に散っていった。


 アベルは息も絶え絶えで床に転がり込む。まさかモンスターパレードに出くわすなんて、ついてないにしてもほどがある。それに全員僕のことを置いて逃げようとしやがった。せめて担いでくれたりしてくれよ。


 こっちは高い護衛料払ってるんだから。もちろん国からの経費だけど。と、あらかた頭に文句を並べ立てて、アルバはリューの顔を睨みつけると、リューは顔面蒼白だった。ジェシカにゲリー、ケイミ―は各々目を見開いたり、口を大きく開けたりして、見るからに驚愕といった顔をしていた。


 アルバが皆の視線の先に目をやると謎の黒いローブを纏った者がカサンドラの遺体に触れようとしていた。ジェシカが叫ぶ。


「あんた何者よ!」


 カサンドラの顔をした黒いローブを羽纏った者はその問いかけに答えず、セーブポイントを抜けて洞窟の深部に消えていった。


 追おうとするゲリーを引き留めたのはリューだった。リューは青白い顔でカサンドラの死体があった場所に指を指すと、ヒカリゴケがむしられた跡があった。


 むしられたヒカリゴケを判読すると以下のように読むことができた。


 カサンドラは生きている


 アルバは死に体からなんとか起き上がり、パーティーの面々の顔色を見ると実に様々な表情を見ることができた。顔を蒼白にして怯える者、喜色満面にあふれている者、驚きを隠せない者、ニヤリと不気味に口を三日月の形にした者。


 アルバは今回の依頼が本題に差し迫ってきたことを肌でひしひしと感じた。アルバは少し身震いをした。


 アルバがパーティーに戻った時、パーティーの面々は喧々諤々の騒ぎとなっていた。


「今すぐあいつを追うべきよ」


「そうでゲス」


「あの人をすぐに捕まえましょう」


「いやちょっと待ってくれ。あいつが何者か分からない以上危険だぞ」


 アルバが確認する。


「この迷宮の深層五階までくることができるのはこのパーティの面々しか無理なんだよな」


「あぁ少なくとも他のパーティーの人間が深層五階に到着してたら報告が出回る筈だ」


「じゃああいつは何者なの?」


 ジェシカの問いに答えるものは誰もいなかった。不気味な沈黙が場を支配する。

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