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異世界探偵アルバ  作者: 木林白田
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自己紹介

 緑色の皮膚をした子供のような化け物、通称ゴブリンが洞窟の奥から現れる。リューは瞬時にゴブリンに肉薄し腰に差していた剣で一閃。


 奥から更に三匹のゴブリンが現れたが、ゲリー、ジェシカ、ケイミーが各個撃破していく。


「素晴らしいな諸君!この程度の敵は朝飯前ということか」


「まあそうですね。これでも街一番のパーティで売ってますから」


 リューは血糊を払いながらアルバに告げた。


「他のパーティでは到達できない場所でもお茶の子さいさいというわけか」


「そうですね。深層五階はまだうちのパーティーしか到達していません。そして、そろそろです」


 ケイミーが祈りを捧げながら先陣を切って大広間に入る。


「さあ。神が思し召す地へと着きました」


 ケイミーがそう告げると開けた場所に出てきた。


 相変わらず薄暗い洞窟ではあるがその広場ではこの迷宮での光源となるヒカリゴケが大量に生えており、比較的はっきりと周囲を見渡すことができた。


 広場の真ん中に少女が横たわっていた。赤髪でまだあどけない顔立ちをした少女だった。蒼白い顔をした少女は口を真一文字に結び、安らかな顔つきをしていた。彼女の周りに生えているヒカリゴケはどこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。


 ジェシカが駆け寄って死体の頬に触れる。


「カサンドラ...」


 膝をついて祈っているケイミーを追い越し、アルバは死体に腕を伸ばすと、ジェシカが振り向き様にその腕を弾いた。


「妹に触るな!!」


 ジェシカは少し細い眉をとくっきりした目鼻立ちを鬼の形相に変えて、アルバに吠えた。


「いや、死体の状況を調べないと捜査にならないでしょ...」


 アルバは急に吠えられたことに怯えながらも、実家で飼っていた柴犬のことを思い出していた。あぁ、あいつもこんな風に急に吠えたな。


「アルバさん、カサンドラに何をするつもりですか?」


「何って、検死だが」


「それはカサンドラを傷つけるものですか」


「死亡の原因を調べる上で必要ならばするだろう」


「すみません、ちょっと良いですか。カサンドラさんは厳密にはまだ死んでいません。魂が神の側に寄っているだけです。故にその身を弄ぶにはカサンドラさんの許可が必要です」


 と、ケイミーが理論整然とアルバに告げる。


「半死人からどうやって許可を取れっていうんだ」


「ご家族であるジェシカさんからの許可ならば神も納得するのではないでしょうか」


 そう言いながらケイミーとアルバがジェシカに目を向けるとジェシカは、


「絶対ダメよ!!」


 そう反駁した。


「おいおい、勘弁してくれよ。それくらい協力してくれないとこの謎は解きようがないぞ。それは君たちにとっても困るはずだが。大事なパーティーメンバーだろ?どうやって死んだかくらいは知りたくないのか?」


「あんたの手で汚されるくらいなら、そんなことどうでも良いわ!私たちは元々も中央から役人が来るなんて反対だったのよ。私たちはまだカサンドラが完全に死んだと思ってない。たまたま迷宮のシステムに何か不具合が起こっているだけよ!」


 ジェシカが大声で捲し立てるとその声は洞窟中に響き渡るようだった。アルバはため息をつきながら床に座り込んだ。見かねたリューがアルバを咎める。


「ちょっと。アルバさん。幾らここがセーブポイントだからといって無警戒すぎますよ」


 ヒカリゴケが群生するこの場所はセーブポイントと呼ばれて魔物が近寄れないように魔法で守られている。


「まぁ、いいじゃないか。皆んなも座りたまへ。今一度状況の整理をしよう。君たちが何を望んで今、この場にいるのか。そして僕、いや、国は今何を望んでいるのかの擦り合わせをまずしなければ始まらないようだ。」


 アルバは円になるようにリュー、ジェシカ、ケイミー、ゲリーを座らせると時計回りに自己紹介からさせた。冒険者一同は渋々といった様子でリューから語り出した。


「俺の名前はリュー。このパーティーのリーダーをしている。今日、この場に来たのは蘇らない死体の謎を解いて、カサンドラを復活させるために来た。クラスは戦士だ。」


 リューは頭を軽くかいて、「改めて自己紹介なんてめんどくさいな」という顔をした。端正な顔立ちをしたリューは体格も良く、いかにも好青年といった様子は見る人に安心感を与えた。


「私はジェシカ。魔法使い。妹を助ける為にここに来たわ。後リューは私の恋人よ」


 淡々とした口調で告げたジェシカは燃えるような赤髪をツインテールに纏めて、細い眉と目鼻立ちがくっきりしていて、街でも有数の美女であることが窺えた。


「私はケイミー。神官です。カサンドラさんに起こった出来事の調査に参りました」


 ケイミーはゆったりとした神官の装いをしていて、首からロザリオを下げ、豊かなエメラルドグリーンの長髪を胸の辺りまで伸ばしていた。切長の目と筋の通った鼻は、見る人に知的な印象を思い浮かばせる。


「あっしはゲリー。盗賊でゲス。カサンドラの嬢ちゃんに一体なにが起こったのかを調べにやってきたでゲス。」


 ゲリーはどこかみずぼらしい格好をしていて黒い布を頭から被ったかのような貫頭衣を着ていた。小柄でいて、頭はスキンヘッドで大きく開かれた目はギョロついていて、常に辺りを警戒するように目を泳がせていた。


「じゃあ折角だから僕もしようか。僕の名前はアルバ、探偵さ。今日は中央から命じられた謎の死体の調査に来た。」


 アルバは丁寧にセットした髪の毛が汗でめちゃくちゃになっていることに気を配りながら、できる限りのキメ顔で言葉を発した。アルバは黒髪黒目の二十代後半くらいの年齢で身長はこちらの世界の基準よりは少し低いくらいの身長だった。衣服から覗かせる彼の腕や脚はかなり細く、今まで全く運動していなかったことが伺えた。顔は二重に低い鼻、そして薄い唇と、見る人によって好みが分かれる顔つきをしていた。


「さて、皆の目的がはっきりしたところで、探偵スキル【嘘発見器】(ブラフキャッチ)を発動!」


 冒険者一同は急過ぎるアルバのスキル発動にほとんど何も対処する方ができなかった。体を硬直させ、表情に動揺が浮かび上がらないように押さえつけることしか出来なかった。


「ふんふんふん、半分以上が嘘をついているね」


 アルバは片目を閉じ、もう片方の目を大きく開けて、リュー、ジェシカ、ケイミー、ゲリーを睨みつけた。


「なっ!俺たちが嘘ついているってどういうことですか?」


「そのままの意味だよ。リュー君、君、何か隠しごとをしているね」


「どういうことよ!リュー」


 ジェシカが声を荒げた。ケイミーとゲリーは我関せずといった態度を貫いている。

 

「どういうことって言われても...」


 リューは突然のことにしどろもどろになり、手を胸の前で振った。


「冷静を装ってる二人も、嘘、ついてるよね」


「いいえ、私は神の忠実な僕であります。欺瞞、虚偽は私から最も遠い場所にあります」


「ゲスゲスゲス、嘘ついてるよねって言われて認める馬鹿はいないでゲスよ」


「なにこれ、一体どういうことよ」


「どうもこうもしない。ジェシカ、本気でカサンドラのことを想っているのは君しかいないってことだよ」

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