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この日、帝都にて、ローズ・ベルリエの裁判が行われた。リディもパパと一緒に参加した。
リディに聖水を飲ませるよう指示し、実際に聖水を制作したとして、一時は死刑が言い渡された。しかし、聖水の制作はともかく、聖水を飲ませるよう指示したことは、エミリー・カリエが言っているだけで証拠不十分として、別の刑罰が言い渡された。
魔力枯渇の刻印を施し、額に罪人の刻印を施し、罪を犯した貴族の令嬢が入る修道院に行くことが決まった。上位貴族だから刑を軽くするのかと、刑の内容に反対する声が上がっていたと聞いた。ベルリエ公爵家にも仲の悪い貴族がいるというから、そのあたりから声が上がったのだろう。
まあ、パパはパパでここがラヴァルディ領なら、死刑一択だと言っていた。ラヴァルディ領にも裁判制度はあるものの、ラヴァルディ以外の家門同士の揉め事の場合しか裁判はされない。ラヴァルディに関わることはパパが処罰するので、パパの裁量次第となる。
ちなみに、罪を犯した貴族の令嬢が入る修道院だが、聞いたところによると、厳しい修道院らしい。規律が厳しく、これまで貴族だったからと貴族扱いは一切ない。みな平等で、世話をする人もいない。全て自分のことは自分でやる必要があり、これまで贅沢三昧だった令嬢たちには厳しい場所だろう。
また、額に罪人の刻印をされるのだが、これがただの刻印ではないという。毎日一定の時間、頭痛のような苦痛を起こすらしい。
裁判の間、意外にもローズは大人しくしていた。リディに顔を向けることもなく、静かに罪状も聞いていた。時々、傍聴席を確認する様子が見受けられた。なんとなくだが、ベルリエ公爵が来るのを待っていたのではないだろうか。ベルリエ公爵夫人とリュカが来ていたけれど、ベルリエ公爵は裁判の間、結局姿を表さなかった。
リュカに聞いたが、ローズはベルリエ公爵家から縁を切られたという。ただ、事件に娘ローズが関わったということで、パパのところにベルリエ公爵家の代理人がやってきた。ベルリエ公爵家の持つ一部の土地を賠償として渡すという。パパは、代理人ではなくベルリエ公爵が来るべきと怒っていたけれど、その後、パパは首を傾げていた。
ベルリエ公爵は、本来、こんなに簡単に賠償などと誠意を示すことはないという。リディは、ベルリエ公爵と会ったことがなく、人となりがよく分からない。パパは皇宮で政治的な話し合いなんかで、まあまあ舌戦をしているようだが。
とにかく、もっと荒れるかと思ったローズの裁判は、思ったよりあっさり終了した。ローズは一生修道院から出ることはないとのことなので、リディとは今後関わることはないだろう。
ローズの裁判の次の日、今度はエミリー・カリエの裁判が行われた。エミリーはローズとは違い、始終自分の犯行を否定していた。
それにしても、学園でエミリー・カリエと接した機会は少ないけれど、なんだか知っているエミリーとは口調が違うというか。あれが本来の性格なのだろうか。
ラヴァルディに聖水は毒だと知っていたことが調査の結果明らかになり、故意にリディに聖水を飲ませたとして証拠も揃っていることから、死刑が言い渡された。その内容は、四肢を切り落として死ぬまで見世物にされるというもの。さすがに、リディはそれを聞いて眉を寄せてしまった。
エミリーは、半狂乱になって叫び、今度はパパを見て「慈悲を!」と叫び出した。ずるずると騎士に引っ張られ退出していくエミリーが、少し不憫だった。リディの回帰でのたくさんの死で、まあまあひどい目にはあってきたが、さすがにエミリーが言い渡された刑は、きつ過ぎると思う。
「……パパ」
リディはパパにある提案を耳打ちした。パパは眉を寄せたけれど、裁判関係者に手を上げた。
パパには、今回の判決の刑の代わりを提案した。リディとしては、エミリーに慈悲を与えているつもりはなく、正直、リディはどっちがマシかは分からない。被害者であるラヴァルディからの提案として、刑の代わりをエミリーが聞くと、エミリーは死刑よりリディの提案を選択した。
ラヴァルディ領には独自の刑が存在する。罪を犯したけれど、まだ何かしら利用価値のある人物には、ラヴァルディ独自の契約にて縛られ、飼い殺しにされるのだ。昔からラヴァルディ領にある刑で、現在その刑を受けている者も数人いる。
エミリーは聖女であるから、神聖力を使った怪我や病気の治癒ができる。それを利用させてもらうのだ。
ラヴァルディ公爵家にも、専属の聖女がいる。パパやリディには聖女の力は効かないが、黒騎士団なんかは怪我が付き物なので、ラヴァルディ公爵家の聖女は忙しい。しかもラヴァルディ公爵家だけでなく、ラヴァルディ領の民の怪我人にも貸し出すことがあり、ラヴァルディの専属聖女が疲弊気味なのが心配だったのだ。だから、そこにエミリーを加わせようというのだ。
ただ、エミリーはあくまでも罪人なので、ラヴァルディ独自の契約を施す。死ぬまでラヴァルディ領からは出ることは許されず、結婚も恋愛もできず、贅沢もできない。そして、悪魔の契約をするため、悪魔の目の監視付きで、かつ、死ねば悪魔に魂を食べられてしまう。つまりエミリーには来世がない。
帝都での死刑と、死ぬまでラヴァルディでの飼い殺しと、どっちがマシだろうか。自分で飼い殺しの提案をしたものの、リディとしては、苦痛が一生続くよりは、帝都で死んでいた方がマシかもしれないとも思う。それはリディが回帰で何度も死んだ経験があるから、そう思うのだろうか。
しかし、エミリーは自分でラヴァルディでの飼い殺しを選んだ。自分で選んだのだから、最後まで責任を突き通してもらおうと思う。
ローズとエミリーの裁判が終わり、やっとこの事件は終わった。しかし、最後までリディが狙われた理由は分からなかった。ローズとエミリーはそこを語らなかった。
でも、彼女らには彼女らなりの利己的な理由から、リディを死に追いやりたかっただけ。これまで、リディが何度も死んできた内容は違えど、根本は同じなのだ。自分の利益を求め、リディ程度の命は軽んじられる。
でも、今世は、生を諦めないとパパと約束した。リディは足掻いてみせるのだ。醜くても、生にしがみ付き、パパとずっと生きていく。
リディは改めて、今後も死には屈しないことを決心した。




