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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第一章 幼女編

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「これにより、罪人聖女リディの処刑を行う!」


 帝都の街の広場には、大勢の住民たちの大歓声で空気が揺れる。

 これだけの人々が、聖女リディが処刑されるのを、嬉々として見ていることに、今まさに処刑されようとしているリディは、震えることしかできなかった。


 リディの罪状は、大貴族レナート・ラヴァルディ公爵を毒殺したこと。


 違う、違う。決して殺そうなどと、思っていなかった。ただ、リディは騙されただけ。


 しかし、否定も申し開きも、一言も発することは許されず、リディはギロチンの断頭台へ頭を無理矢理乗せられた。


 そして、ギロチンの刃は振り落とされた。



 はっと目が覚める。そこはベッドの上。リディはパパに抱きしめられて、寝ていた。パパはまだ寝ているようだ。


 冷や汗が服に張り付く。じわじわと目に涙が溢れる。


「ごめんね、パパ」


 リディは小さくそう呟き、パパに顔を寄せた。

 先ほどの夢は、本当にあったことだ。リディはパパを、殺したことがある。


 こんな話、パパには絶対にできない。パパに知られたら、きっとリディは捨てられる。


 それでも、ここ最近、この夢を時々見る。今のリディが、パパの傍にいられて幸せだからだろうか。この幸せを、失うのが怖い。


 大丈夫。このことを知っているのは、リディと光の精霊ララだけ。ララがパパに言うことはないし、リディさえ黙っていれば、パパに知られることはない。


 もう二度とパパは殺さない。そう思いつつ、目が覚めて寝られないリディは、パパに抱きつきながら、パパを殺した時のことを思い出していた。



 何度か目の回帰のあの時、リディは十歳になっていた。神殿所属の聖女で、リディは上司の神官の命令で、人々の怪我や病気を治すことを主な仕事としていた。


 リディは光の魔法の癒しの力を、神聖力と偽っていた。そして光の精霊ララに髪色を黒髪から金髪に変更してもらって生活していた。


 リディの上司は神官だというのに、俗物的な人だった。表の顔は優しくとも、裏ではお金さえあれば何でもやる人物だった。リディを含め、上司の部下になる聖女や神官は、上司の命令に従い、普通の仕事とは別の仕事を与えられることもあった。


 リディの場合は、たいていは法外なお金を受け取り、怪我や病気を治癒させること。そういう命令をされることが多かった。


 聖女の神聖力を使った治癒させる力は、もともと無料ではない。神聖力を使える人間が少ないため、治癒内容に合わせて一定額は平民からも貴族からも頂くことになっている。とはいえ、上司の命令は、かなり法外な値段をふっかけること。そういう場合、大抵は相手は貴族なため、すぐに払ってくれるから、上司は味を占めたのだ。


 そんな日々を送っていたある日、上司からある仕事を命令された。聖水を作って、ある人に飲んでもらうように、とのことだった。


 神聖力を使える人は少ないが、聖水を作れる人はもっと少ない。聖水を作ることができたリディは、上司にそんな命令をされた。


 聖水の効能といえば、魔獣にかければ魔獣に傷がつく、ということがある。つまり魔獣を討伐するのに使えるのだ。しかし、聖水自体が少ないために、魔獣などに使われることは、ほとんどない。魔獣除けや悪魔除けにもなるというが、やはりそういった使い方は普及していない。一般的には、病気になった人が飲めば健康に近づく、などといったように、人に使われることが多い。聖水が作れるリディも、そういう一般的な知識しかなかった。


 ある貴族の食事会会場。

 リディは、そこで使用人の服装に着替えさせられた。そして、渡されたのは、一時的に十歳ほど年を取るという魔法薬。それを飲め、ということだった。


 すっごくまずい魔法薬。魔法薬を飲んだのは初めてだった。だって、魔法薬って、すごく高価なのだ。高価なのに、持続するのは一日ほど。まずいけれど貧乏性なので、残すわけにはいかず、全て飲み切った。


 そして、リディは貴族たちが十名ほどいる食事場で、給仕として立った。リディの仕事は、持たされたワインのボトルを聖水に変えること。聖水を飲んでもらうのは、レナート・ラヴァルディ公爵。その時は単純に、『ラヴァルディ公爵は体調不良だから、無理にでも聖水を飲んでもらい、元気になってもらう』とそう聞いていた。


 貴族の食事会は、毒見が行われることもあるという。

 一度目は、ラヴァルディ公爵ではない人が、リディが注いだワインを飲んだ。そして、毒見が終了し、ワインが問題ないと分かると、リディはワインボトルの中を目を瞑って聖水に変更した。目を瞑ったのは、光の魔法を使うと目が金色に変化するので、見られないようにするためだ。手も若干淡く光っていたが、リディは手袋をしていたし、回りが明るいから、誰も光ったのには気づかなかった。


 そして、リディは聖水になったワインをラヴァルディ公爵に注いだ。ラヴァルディ公爵が聖水を口にする。これで任務完了。この時は、ラヴァルディ公爵が聖水を飲んだので、元気になれるね、良かったね、そんな風にまで思ったのだ。


 しかし、ラヴァルディ公爵はその場で崩れ落ちた。大騒ぎになった。ラヴァルディ公爵に聖水という毒を飲ませた、とリディはその場で捕まった。


 その日の内に、ラヴァルディ公爵はリディの飲ませた聖水で死んだと聞いた。ただの聖水なのに、なぜ死ぬんだ。リディはその日、聖水がある特定の人物にとっては、毒にもなるということを初めて知った。闇の魔法一族であるラヴァルディの血筋は、聖水は毒になるのだと、拘束されて罵られながら教えられた。


 そして、リディは、ラヴァルディ公爵を殺した首謀者として、何の言い訳もさせてもらえず、処刑された。


 ごめんなさい、パパ。聖水がパパにとって、毒になるとは知らなかった。

 今思えば、きっと同じラヴァルディの実父も聖水は毒だったのだろう。しかし、実父は自分には聖水が毒になる、とは教えてくれなかったし、リディは同じラヴァルディなのに、聖水を飲んでも死ぬことはないから、分からなかったのだ。


 リディは自分で作った聖水を、何度も飲んだことがある。水でもオレンジジュースでも牛乳でも、聖水にすることができる。


 例えばオレンジジュースを聖水に変えても、他の人からは味はオレンジジュースらしい。だが元の味のままなのに、聖水なのだ。ただ、リディが飲んでみると、見た目はオレンジジュースでも、聖水に変えたら「味はただの水なんだけどな」である。でも聖水なのだ。リディにとっては毒にならず、ただの水の味の聖水。


 おそらくだが、リディは光の魔法の一族でもあるから、聖水は毒にはならず、体の中で相殺されるのだろう。だって、リディには聖水は毒にはならないが、聖水の効能らしき『元気』にもなるわけではないからだ。リディにとって、ただの水だもの。


 ごめんなさい、パパ。これから、パパの役に立てるように頑張るから、パパを殺したリディの罪を許して欲しい。


 リディは、眠るパパを見ながら、そう願うのだった。

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