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公爵家の養女ですが、来世もパパの愛娘になりたいです  作者: 猪本夜
第一章 幼女編

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 次の日、リディはさっそくカフェのある有名菓子店へやってきた。パパが護衛騎士を二人付けてくれた。ただ、ラヴァルディ公爵家の馬車には乗ってきていない。ブリス曰く、ラヴァルディ公爵家の馬車自体が目立つから、馬車から降りたリディも注目になるだろう、というからだ。注目されてケーキが食べづらくなるのは、リディとしても本位ではない。だから、護衛騎士も、ラヴァルディ公爵家所属とは分からない服装だった。


 この有名菓子店は、カフェが主だけれど持ち帰りもできるお店だ。本日もカフェも持ち帰り用も、どちらも長蛇の列だった。ただ、リディがカフェに到着して小さい声で「ラヴァルディ公爵家のものです」と告げると、すぐにカフェの中に案内された。ブリスが予約してくれていたのだ。


 席に一人で座ると、リディはメニューをキラキラとした目で見た。どれもこれも美味しそう。ヨダレが出そうです。今のお腹の感じだと、ケーキを三つくらいなら食べられる。悩みに悩んで三つに絞ると、リディは紅茶と一緒に店員に注文した。


 ケーキを待つ間、周りを見渡す。あれ? ちらちらとこちらを見ている人が、まあまあいる。リディが誰なのか分からないはずなのに、と首を傾げる。しかし、すぐに気づいた。護衛騎士がリディが座るテーブルの傍に立って、回りを警戒している。すごく護衛騎士が目立っている。そして、誰もリディのように、護衛騎士を連れている人なんていない。


「……」


 急にレオの言葉を思い出す。街へお忍びで出かけるなら、護衛は隠密系がおススメだと言っていた。こういうことかぁ、と思いながら、今日はせっかくパパが護衛騎士を付けてくれたので、このままでいることにした。隠密系の話は、次回があればパパにお願いしてみよう。


 注文していたケーキ三つと紅茶がやってきた。オシャレなケーキは、見た目も素敵だ。リディはさっそくケーキを食し、とろけるような表情でペロリと全部食べきった。


 パパは好きなだけ注文していいと言っていたから、遠慮なく、持ち帰り用のケーキも数種類注文した。パパやブリスのお土産も含んでいる。みんなで一緒にお茶を楽しみたい。お店でケーキを食べられたのは嬉しいけれど、やっぱり一人はちょっと寂しいから、今度は絶対にパパと来たい。


 店を出て、少しだけ街を散歩してから帰ることにした。護衛騎士を連れ、気になるお店の前を通り、店の外から中を覗いたりして、また歩く。


「……リディ?」


 名を呼ばれ、リディは振り向いた。そこに立つのは、蜂蜜色の髪に青い瞳のすごく可愛い男の子。


「……リュカ?」


 ぱぁっと嬉しそうにしたリュカは、リディに抱きついた。


「また会いたくて、ずっと探していたんだよ! リディは街にいるって言っていたのに、どこにもいなくて、僕、心配で……」

「心配かけてごめんね、リュカ。少し街を離れていたの。またリュカに会えて嬉しい」


 リディから体を離すと、リュカは涙を浮かべていた。また泣いている。泣き虫の男の子。リディは、リュカの涙を拭った。


「僕も、またリディに会えて嬉しい」


 リディ達は、近くのベンチに座った。護衛騎士はリュカを排除対象とは思っていないようで、ベンチの外を警戒している。


「リュカは、今日も置いてけぼりにされてしまったの? 家まで案内しようか?」

「ううん。今日は違うんだ。街に用事があって出てきただけ。最近はね、前のように置いていかれることはなくなったんだ。父上が妹に言ってくれて」

「そうなの? 良かったね! じゃあ、リュカのパパが、リュカの味方をしてくれるようになったのね!」

「……そういうわけでもないんだ」

「え?」


 どういうことだろう。

 リディはリュカと会うのは、今回が二回目だ。リュカとの出会いを思い出していた。



 パパの娘になる十日ほど前、帝都の街でリディは泣いている男の子リュカと出会った。レオよりも前に出会った子だ。


「どうしたの? 迷子になっちゃった?」

「うん……」

「心配しないで。お姉ちゃんが家まで連れていってあげる」

「……本当?」

「うん。任せて」


 十二歳のリディよりは年下の、けれど、五歳の体のリディよりは少し大きいところを見ると、リュカは六歳か七歳くらいだろう、とリディは予想した。


 リディはリュカの涙を拭いてあげながら、口を開いた。


「私はリディっていうの。あなたの名前は何というの?」

「リュカ」

「リュカの苗字は?」

「ベルリエ」

「……」


 リディは驚いて目を大きくした。まさか、ここで母の実家のベルリエ公爵家の名を聞くことになるとは。リュカはお金持ちの子だというのは、服装からなんとなく思ってはいたけれど。


「……じゃあ、ベルリエ公爵家のお屋敷に連れて行けばいいかな?」

「……っ、うん! どの場所か分かるの?」

「もちろん。任せて」


 何度も回帰しているリディは、当然帝都にあるベルリエ公爵家のお屋敷の場所も知っている。


 二人は手を繋いで歩き出した。なんでこんなところにリュカがいるのか分からないが、ベルリエ公爵家のお屋敷は、まあまあ遠い。


「リュカは、どうしてこんなところで迷子になっちゃったの? おうちの人が近くでリュカを探しているのではないかな?」

「ううん、探していないよ。僕は帰ってこない方がいいって思われているから」

「……どういう意味?」

「父上の夫人……、僕の義理の母上と妹に嫌われているから」


 なんだか、リュカの家は複雑な家庭環境のようだった。

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