イザナミからの依頼Ⅰ
赤石市の一件があってからはしばらく仕事がなかった。大体の仕事は雷電が片づけており、紫電は暇を持て余していた。
「毎日がこんな穏やかに過ぎていけばいいのにね」
イザナミは宿題をしながら、ベッドで寝ている紫電に話を振った。
「平和だと収入が増えない」
「それもそうか」
イザナミは問題をすらすらと解いていく。彼女にしてみれば、高校の学習など簡単すぎるのだろう。
そんな姿を横目で見ながら、紫電はふっと笑みをこぼした。この少女は、彼に感じたことのない安らぎを与えてくれる。
紫電はそんなことを頭に浮かべてしばらくすると、頭を振った。死ねば地獄行き確定の殺し屋風情が何を考えているのだ、と。
何もしない時間があると、余計なことを考えてしまう。特に、この少女がいると。今後は仕事を詰め込もうと考えた。最も殺しの仕事が増えすぎるのも考え物なのだが。
「そういえばさ」
小一時間で宿題を片付けたイザナミは紫電に話しかける。
「東京電鉄小石川線でね、痴漢が出るって問題になってるの」
「痴漢ごときを殺すわけにはいかない」
「……どうしてそう殺す殺さないの二択になるの」
「俺の仕事は知っているはずだが」
イザナミはため息をついて
「あなたにこの痴漢を捕まえてほしい。これは私からの仕事の依頼」
と切り出した。
「俺は国家公務員にあたる。副業は禁止されて……」
「ないよ」
笑顔で返す少女は何もかも見透かしているようだった。情報戦略は完全に彼女に分がある。騙しとおすことは不可能だと観念した紫電は
「分かった……ことの詳細を説明しろ。受けるかどうかはそれからだ」
とだけ返事をしたが、彼女の術中にはまっている今、引き受けないという選択肢はないのだろうなと半ばあきらめていた。
こんばんは、星見です。
大みそかから胃腸炎にかかり、作ったおせち料理を食べられず、結局親族にあげてしまいました。
現在は実家で療養中……と過去一悲惨なお正月となりました。30代も半ばを超える(?)と衰えがありますね。
今年もよろしくお願いします。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……