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種蒔く者【再筆版】  作者: 星見流人
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ダキシン=オフミⅠ ~タイムマシンの作り方~

「標的の抹殺および隠ぺい工作、完了しました」

 その報告を秘書官から受けた日本国政府首相、ダキシン=オフミは右手に持っていたワイングラスを一気に呷った。

「うむ、これでまた宇宙の敵を始末した。マザーもお喜びになることだろう」

 贅肉のついた顎をさすりながら、ダキシンは満足そうに嗤った。マザーという言葉が誰を指しているのかを知る者はここにはいない。

「今日は気分がいい。そうだ、増税しよう! 赤石市を止めることができなかった全国の下民どもに罰を下すのだ!」

 ダキシンが指を鳴らすと秘書官が書類とペンを彼の前に運び、彼はその書類にサインする。それだけで増税が決まる。日本という国はそういう国になってしまった。

ある決定的な出来事によって。

「ハハハ……気分がいいぞ。おい秘書官、今日は熊本産黒毛和牛のステーキを夕食にするぞ。東京の有名店のコックに作らせろ」

 予算は五百万円だ、と付け足す。

 命令を受けた秘書官が頭を下げ、官邸から退去すると、入れ違いに白衣を着た初老の男が官邸に入っていく。秘書官は眉を顰めながらも、その男が官邸に入ることを許し、男は我が物顔で官邸を闊歩する。

「ダキシン=オフミ首相、ご機嫌いかがですかな?」

 モノクルを付けた初老の男は昼間からワインを飲みまくり、赤ら顔になっている首相に尋ねた。

「最高の気分だ……! これも支持率五年連続九十九パーセントの私が世界一……いや、宇宙一の政治家であることを証明できたからかな」

「素晴らしいことです。総理の叡智を以てすれば、世界を手に入れるのもたやすいことでしょう」

 恭しく首を垂れる初老の男を見て、ダキシンは問うた。

「それで、お前がここに来たということは研究成果が上がったということだな?」

「はい、さすがは聡明な総理でございます。暗殺結社イザナギ……いえ、人造生命体による特殊部隊の製造工程が整いましてございます」

 ダキシンは飲んでいたワインを放り投げて

「ふふふ……はははは! そうか、そうだったか!」

 と高笑いをする。

「現在稼働している連中は人間をベースにしていますが、もはや今後はその必要はございますまい。一から人間を作り、我々の命令に従う、完全な殺人兵器が出来上がることでしょう。ご安心ください。ダキシン首相をこの国に君臨させるべく、我々……アカガネの工房は力をお貸しいたしますぞ」

「そうかそうか……また増税を思いついてしまうな……」

「良いではありませんか、増税。もっと増税しましょう。下民どもからむしり取るのです。下民どもなどいくらでもいるではありませんか。古来、国民というものは統治者のための道具に過ぎないのです。どれだけの重税を課しても頭の悪いこやつらのことです、何もできますまい」

「それもそうだな。ところで、タイムマシンの進捗状況は?」

「はい。一方通行ではありますが、順調に進んでおります。ただ、総理の求める完全体を作るとなると……少々厄介ではありますな」

「実験体はいくらでも使ってよい。日本人という愚かな人種はまだ掃いて捨てるほどいる。足りなくなれば研究所で作ればいいだけの話ではないか」

「ごもっともでございます。人間を使っての実験など、他国ではできませんからな。これも総理のおかげ。感謝の念に堪えません」

「お前の優秀な頭脳を私は買っているのだ。いくらでも実験をするがいい。その代わり……イザナギの生産工程を整えておけ。出来の悪い暗殺者どもはすぐに死んでしまうからな」

「そうですな……せめて、紫電や雷電、月光に烈風くらいの暗殺者が大量生産できれば良いのですが……現状では難しいところです」

「それを完成させるのがお前の仕事だ。期待しているぞ」

 その言葉を受けた初老の男は一礼して退室した。

 部屋の中では、ダキシン=オフミが搾り取った血税で買い付けたワインを再び飲み始めていた。

こんにちは、星見です。

タイトルは某SF作品から拝借しました。【タイムマシンの作り方】は人によると思いますが、一読の価値ありだと勝手に思っています。


さてさて、新たな登場人物が二人出てきましたね。

一人はダキシン=オフミ。偉そうな人です。もう一人はアカガネの工房と名乗る組織の人物です。彼らがこれからどう物語と関わっていくのか?ご期待ください!

ではまた次回お会いできることを祈りつつ……


追記:リメイク版ですがもはや原型をとどめていませんね……(ぼやき)

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