始まりの悪夢
ダキシン=オフミは満足げに官邸の執務室でワインを呷っていた。
「私に反対する政党の支部は地震で潰した……次は……増税だ!」
彼の笑いは止まらない。
「復興税、少子化対策税、防災税……色んな税が思いつくぞ。素晴らしい! さすが私は世界一の政治家……」
上機嫌で酒を飲むダキシンの机にある電話が鳴った。
「なんだぁ……ボクのワインタイムを邪魔する愚か者は……」
「ダキシン、とっとと金を払え。約束通り、地震は起こしてやった。今頃、マスメディアも混乱しているだろう。約束を反故にするとは言うまいな?」
電話を取ったダキシンはこの声を聞いただけで、酔いが醒めた。
「ああ……ああ、ももも、もちろんだとも。この英雄、ダキシン=オフミは必ず約束を守る! 私は正義の味方だからな!」
抑揚のない、しかし人に恐怖を与える声の主は
「お前が国民に対して約束を守ったことは一度たりともないはずだが、まあいい。期日は今日中だ。予算など、お前の権限でどうにでもなるだろう。さっさとやれ」
と殺意のこもった声を届ける。
「あわわわ、分かった。お前の言うとおりにしてやろう。この私は寛大だ。その無礼、許してやらんでもない」
「……自分の立場を分かっているのか、このゴミは」
「ヒッ!」
グラスを床に落とす。割れたグラスからは真紅のワインが流れ出した。
「貴様を殺すことなど容易い、と説明したはずだ。実際に死なないと分からないというなら、分からせてやろうか?」
ダキシンはその声からあふれ出す恐怖に縛られた。
「歴史上最悪の先代総理大臣として名を残すか、それともただの無能総理として名を落とすか……好きな方を選ばせてやる」
お前は幸せ者だ、とも言った。
「お前は死に方を選べるんだからな……」
それだけ言うと電話は切れた。
こんにちは、星見です。
ダキシンの話をはさみました。誰にとっての「始まりの悪夢」なのか?が今後のストーリー展開に影響してきます。ダキシンの電話相手は誰なんでしょうね?
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……