幕間:始まりの数字
Interlude in
二十年近く前。
目の前が真っ赤に燃えた。
炎の津波が家々を飲み込み、激震が止まることなく大地を壊す。
そんな脅威に対して、人間は無力だった。逃げまどい、泣き叫び、倒れ伏す。
日本全土だけではなく、世界各地で同時多発的に起こった自然災害。それは後に世界大冥災と名付けられた。この災害で全世界で一億人以上の人間が死亡したと言われている。
この被災者の中に一人の少年がいた。
絶滅危惧種と呼ばれている日本人の少年だ。法も秩序も何もない、壊れ切った世界を彼は生き延びた。死肉を喰らい、泥水をすすり、ひたすら生きるために足掻き続けた。
その少年の前に忍び装束を纏った初老の男性が現れ、手を差し伸べた。
「お前には才がある。お前は生きたいか?」
「生きたい! 死にたくない!」
少年は反射的に答えた。強い意志が宿ったその瞳を男性は優しげな眼差しで見つめる。
「良かろう。お前に力を授けよう。何者にも負けぬ力を」
その男性は零と名乗った。
「その意志、ゆめ忘れるな」
少年は差し伸べられた手を強く握った。
Interlude out
こんばんは、星見です。
主要登場人物の名前は基本的に戦闘機の名前に由来しています。
零戦、紫電改、雷電、月光、烈風……etc
ここまでの物語で不自然さを感じておられる方はその不自然さが何であるか、推理しながら読んでみるのも良いかと思います。原作と違い、「敢えて」不自然に描いています。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……