急転直下
疲れ切った表情でマンションに戻った紫電は、スーツを脱ぎ捨て、シャツ姿でソファに身を深く沈みこませた。それも当然だ。朝っぱらから本物の変態に暗殺者が襲われ、イザナミが大立ち回りをやらかし、殺人事件が起こりかけ、最後は高校側から質問攻めだ。最終的には、政府からの介入で強引に捜査の手を引かせたが
「面倒くさい……」
と紫電をしてぼやかせる一日だった。
だが、悪くないと思っている自分がいることに紫電は驚いていた。こんな日は今まで体験したことがない。血と刃と硝煙にまみれて、殺すか殺されるかの世界で戦い続けてきた。予想すらもできないことには対処しようがない。当たり前ながら、紫電はそのことに気付いた一日だった。
今日も仕事がない。
仕事がないということはそれだけ平和な証拠だが、手持無沙汰ではある。給料は何もしなくても毎月十分すぎる額が振り込まれるし、生活に困ることはない。
ネットを開くと、くだんの痴漢が捕まったと報道されていた。それから、天気予報やウィキペディアを眺めながら時間を過ごす。ネットにも飽きたので、テレビをつけると、政府がガソリン価格の抑制のためのトリガー条項を実施するつもりだというニュースで持ち切りだった。ガソリン価格はリッター一万円だそうで、これを九千九百九十円程度に下げるという。自分自身には全く関係のない話だったので、テレビも消そうかと思ったときに、その報せは飛び込んできた。もちろんテレビからではない。
「こちら、雷電。紫電、緊急事態だ。北陸地方で巨大地震発生!」
「なんだと?」
雷電からの電話で、きな臭い話が舞い込んできそうな予感がした。
「これに乗じて、標的を抹殺せよとの指令が出たよ。赤石市の時と同じ、君と僕の二面作戦だね」
至って楽しそうに話す雷電に対し、紫電の脳裏には幼い頃に焼き付けられた光景がフラッシュバックしていた。
こんばんは、星見です。
今年の冬は寒い日が少ない?ので地震フラグではないかと思う今日この頃です。
実は先日、東京で開かれた学会に参加しまして、面白い話を聞いてきました。
その影響がこの物語に現れています。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……
PS:物価上がりすぎ……