イザナミからの依頼Ⅲ
ぬらりと手は伸びた。
そして、その手は
「貴様……何をしている」
紫電の臀部を狙った。
「あら、捕まっちゃった?」
筋肉の鎧をまとったガチムチの男がビキニ姿でニヤニヤと笑っている。
「ちょっといいですか?」
イザナミの手がガチムチ男の手首を掴む。みしみしと音を立てているのは気のせいではない、と紫電は呆れている。
「なによ、この小娘は? アタシは彼を気に入ったのよ! このまま、アタシの家まで連れ込むんだから!」
イザナミから殺気が放たれる。紫電は呆れ顔のままだ。
「変態は刑務所! 痴漢は死刑! 当然の摂理です!」
「死刑にはならんがな……とりあえず、この変態は警察に引き渡す。いいな、イザナミ」
紫電はイザナミが決定的なことをやらかす前に両者を引き離した。もちろん、周りのイザナミの友達はぽかんとしている。
「いいえ、死刑です! 私の彼に手を出しておいて、許せない!」
「落ち着け、これ以上掻き回さないでくれ……」
紫電の顔からは疲労の表情が見え始めた。通常任務よりもはるかに疲れる、と思ったが口に出さないでおく。懐にある拳銃は抜くな、と読唇術を心得ているだろうイザナミに伝える。
「……分かりました。彼氏のお願いですから、死刑は勘弁します。その代わり……終身刑です!」
殺人事件が起きずに済んでほっとしている紫電は、そんな自分に気付いて可笑しくなった。そして、ククク、と人知れず笑っていた。
「彼氏さァん! そんな乳臭い小娘に飽きたら、いつでもアタシに乗り換えていいわよン! 監獄の中で未来永劫待ってるワ!」
「次に手を出した日が命日になると思ってください!」
そんなやり取りをしながら、ガチムチ男は鉄道警察隊に引き渡された。イザナミの通う高校で、この出来事がビッグニュースになったことは言うまでもない。そして、イザナミに好意を寄せる男子全員が一年で一番落胆した一日になったことは想像に難くない。
こんばんは、星見です。
節分ですね。
節分なんですが、恵方巻は節約しました。今年も増税、値上げラッシュの一年でしょうし、節約生活は続きそうです。おかげで痩せてきて、健康的になりましたが……。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……