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十七章 理想の『現実』

 異世界の浸食が止まり、すべてが元通りになっていくと雪が降ってきた。

「あ……そういえば、今日はクリスマスイブだったね」

 杏の言葉に怪盗達は今更気付く。

「そうだ!明日、クリスマス会をしましょうよ!」

 春香の言葉に朝日が「いいな、それ!」と賛成した。そして信一が大人達の方を見て、

「四人もどうっすか!?」

 そう誘う。

「そうだね……まぁ、明後日までに帰ったらいいし、大丈夫だよ」

「え、明後日に帰るのか!?」

「私達、仕事でしょ?出張ついでに来たんだし、そろそろ帰らないと。……あと忘年会もあるからね」

 フッと涼恵が遠い目をする。そういえば仕事がたまっていてもおかしくはないか。

「あんまり無理すんなよ?」

「大丈夫、ある程度は優秀な部下が終わらせてくれているから」

 愛良がケラケラと笑いながら告げると、涼恵は睨みながら答えた。日頃から仕事三昧なものだから疲れているのだろう。

「帰ったらお菓子でも送るよ」

「お、いいな。すず姉あのお菓子買ってくれよ」

「はいはい、ついでに買うか。風達も待ってるだろうし」

 記也が涼恵に引っ付くと、涼恵は優しく笑う。本当にこの弟は甘え上手である。

 送っていってくれると言ってくれ、涼恵達は信一達を連れてその場を去る。その場に残った親子はデスティーノに帰る。

「それにしても……暁もサタナエルを使えるなんてね」

 コーヒーを飲みながら蓮が告げる。

「そういえば、母さんも使えたの?」

「うん。人間姿のアルターが進化した姿だった」

 人間姿……?どういうことだろうか。

 首を傾げている子供達に蓮は「守り神の生まれ変わりって言うのは聞いたよね?」と答える。

「その守り神姿だとアルターも変わるんだよ。守り神のアルターは「ミカエル」だね」

「ミカエルって、天使の?」

「そうそう」

 そんな話をしていると、デスティーノの扉が開いた。

「あぁ、もう閉店してる……」

 蓮がそちらを見て、目を丸くした。どうしたのだろうと暁と悠も見ると、そこに立っていたのは安村だった。

「え……?安村君……?」

 どこを探しても見つけられなかったのに、なんで今頃?

 そのことに違和感を覚えつつも、二人は駆け寄る。

「……よう」

「安村、なんで……」

「何とか脱出したんだよ。花子さんにも言われてるから自首する前にお前達に会っておこうと思っただけだ」

 それを聞いて、二人は顔を見合わす。

 それは両親も同じだった。彼らは考え込み、

「……ごめん、ちょっと用事できたから愛良と一緒に話してて」

 そう言って、蓮はデスティーノから出た。急にどうしたのだろうと思っていると愛良が安村にコーヒーを淹れた。

「まぁ、座れ」

「はぁ……」

 愛良に言われ、安村はため息をつきながらカウンター席に座る。そして一口飲み、

「……苦い」

「悪かったな、いつもはもう少しおいしいハズなんだが」

 わざとらしく告げる男に安村はもう一度ため息をついた。

「……あんた、二人の父親なのか?」

「あぁ、そうだ。暁とよく似ているだろ?」

 愛良がいたずらっぽく笑うと彼はうつむいた。

「……なるほどな」

「聞きたいことはそれだけか?」

 それには頷くだけで答える。

「それじゃ、オレは一度外に出るか。積もる話もあるだろうし」

 愛良が上着を持ち、「一時間後には戻ってくる」とだけ伝えて出た。

 その場に、五人が残される。

「……本当に、無事だったの?」

「見て分かる通りだよ、お花畑な頭でも分かるだろ」

 悠が改めて聞くと安村は彼女の方を見る。本性を隠すつもりもないのだろう。

「それならよかったけど……」

 やはり、違和感をぬぐうことが出来なかった。悠のそんな様子を見ていた安村は鼻で笑った。

「別にいいだろ。こうして「生きていた」んだから」

「…………」

「どうしたの?ユウ」

 マリアンが足元から尋ねてくる。それに「あ、ううん。何でもないよ」と笑った。

 ――今、少し違和感があった気が……。

 しかし、兄もネコ達も特に何も感じ取っていないようだ。自分の気のせいだろうか?

「じゃあ、帰るよ。お前達の両親が怖いしな」

 それだけ言って、安村はデスティーノから出た。



 安村が帰り道を歩いていると、愛良に会った。

「よう、もういいのか?」

「あぁ。……お前、何か知っているのか?」

「……どうだろうな。蓮次第だが」

 微笑まれ、安村はため息をついた。

「まぁいい。いずれ分かるだろうしな」

「それは保証しよう」

 一瞬だけ、火花が散った気がした。



 次の日、安村のことを話すと「そうだったのか……」と朝日がうつむいた。

「……あいつのことは許せないけど……でも……償うなら別に……」

「うん、私も……」

 春香も複雑そうにしながら頷いた。もちろん、この二人が納得しているのなら何も言うことはないのだが……。

「悠?どうしたんだ?」

 優士が顔を覗き込む。

「あ……ううん。何でもないよ」

「そうか?少し様子がおかしい気がするが」

「少し考え事してただけだよ」

 アハハ……と悠が笑う。

 そこに、大人達もやってきた。

「こんにちは、料理持ってきたよ」

「おー!うまそうだ!」

「ネコちゃん達はこっちだよ」

 涼恵が刺身を渡すと、「マグロ!やった!」とロディとマリアンが目を輝かせる。

 蓮はケーキを作ってきてくれた。

「どうぞ。これ、うちの喫茶店でも出しているものなんだ」

 蓮が切り分けて皿に乗せてくれる。

 そうして、クリスマス会が始まった。


 夜、悠が風に当たっていると蓮が声をかけた。

「どうしたの?悠」

「あ、お母さん……」

「何か悩み?なんでも話していいよ」

 隣に立つ母親に悠は「……なんか、おかしい気がするの」と答えた。

「おかしい?」

「うん……本当に、なんとなくなんだけど……」

「……そう。その違和感は正しいと思うよ」

 その意外な言葉に悠は蓮の方を見た。

「一応、守り神だからね。異世界の方で何かあったら分かっちゃうんだよ」

 その表情は寂しげだった。


 次の日、悠は優士とデートに出かける。

「思えば恋人らしいことしてこなかったな」

「そうだね、忙しかったし」

 クリスマスの余韻か、街はまだ少し浮かれている。

「それにしても……暁は?」

「兄さんは朝日ちゃんに捕まってるよ。「古いゲームをさせろー」って」

「そうか、朝日らしいな」

「本当にね」

 クスクスと笑いあっていると、美術館に来た。

「そういえば、俺の作品が一月に展示されることになったんだ」

「え、そうだったの?」

「あぁ、十一月に賞を取ってな」

「すごい、おめでとう」

 美術……という言葉が、やけに強く頭に残った。



 涼恵と記也も東京に戻り、大晦日。二人からお菓子と手作りの蕎麦が送られてきた。

『せっかくだからみんなで食べて』

 そんな手紙を添えられており、仲間達やあきも呼んで蕎麦を湯がく。

「本当に涼恵は何でもできるなぁ」

「あいつ、子供のころから実質一人暮らしだったらしいし慣れたんだろ」

 なんか重い話をしている親を聞きながらみんなで蕎麦を食べ始める。

「ん!おいしい!」

 杏が笑顔で告げる。ちなみにネコ達には冷凍マグロが送られてきていた。本当に気に入られたらしい。

「あの、私もよかったんですか?」

 あきが不安げに聞いてくる。悠が「いいよ、みんなで食べた方がおいしいし」と笑いかける。

「そうだぜ。それにこんな量、食いきれないだろ」

 信一も蕎麦を食べながら微笑む。それにあきもつられるように笑顔になった。

 ――兄さん、あきちゃんとは最近どうなの?

 悠がからかうように尋ねると、暁は蕎麦を喉に詰まらせそうになった。

「どうしたの?暁」

「な、なんでもない」

 美佳に心配され、暁は何でもないと笑いかける。

 ――急になんだよ?悠。

 ――だって、あきちゃんのこと好きなんでしょ?

 ――うっ……なんでバレたんだ……。

 ――心の声、ただ漏れだよ。

 ――それを言うなら悠の方もただ漏れだよ。

 ――え、嘘!?

 ――本当本当。

「おい、お前ら、二人で話すな」

 ロディが足元から声をかけてくる。「あぁ、悪い」と暁が笑う。

「何の話をしてたの?」

「恋バナー」

「ちょ、悠!」

「え、気になる!」

「私も、暁君の好きな人が誰か気になるかな?」

 杏と春香が身を乗り出す。暁は妹を恨めしげに見るが、「私はもう付き合ってるし」と笑うだけだった。

「ほう、暁にも好きな女がいるのか」

「父さんも乗ってこないで」

「そうだぞ、愛良。まずは母さんに言ってからだもんな」

「母さんも悪ノリしないでくれ!」

 暁の顔が羞恥心で赤くなっていく。

 それを、あきが寂しげに見ていた。



 目が、開く。

 謎の空間……いや、ここは保健室だ。

 なぜ?なんでここにいるのだろうか?

 ぼやける頭を振りながら見渡すと、悠も同じように暁を見ていた。

「……兄さん?なんで、囚人服……?」

「悠こそ、囚人服の姿だよ?」

「え、なんで……?」

 二人して戸惑っていると、校内放送が聞こえてきた。

「下校の時間です。校内に残っている生徒は早く帰りましょう」

 それは、いつも聞いている放送と少し違っていた。

「……悠、帰ろう」

「うん……」

 恐怖感が押し寄せてきた二人は立ち上がって保健室から出る。

 歩いていると、青い光が飛んでいた。まるでついてきてほしいと言うように。

 追いかけていると、声が聞こえてきた。仲間達の声だ。

 信一、杏、優士、美佳、朝日、春香……そして、あき。全員、誰かに話しているようだ。

 青い光についていき、玄関にたどり着く。すると誰かの声が聞こえてきた。

「もう帰るのかい?」

「帰らないと」

「うん。心配かけちゃう」

 二人が答えたのは本当に無意識だった。声の主は「君達はまだ、受け入れられないんだね」と寂しげに告げ、

「では、また会おう」

 その言葉とともに、光に包まれた。



 隣に人の気配がする。

 悠が薄く目を開くと、そこには白い髪の女の子が幸せそうに寝ていた。

「ひゃぁあああああ!?」

 悠が悲鳴を上げ、ベッドから落ちてしまう。

「うわぁあああああ!?」

 同時に、暁の方もソファから落ちてしまった。そちらも見知らぬ黒髪の男性が寝ていたのだ。どうやって眠っていたのだろうか……?

「ん……何よ、ユウ……」

「なんだよ、アキラ……朝っぱらから」

 見知らぬ二人が目をこすりながら起き上がってきた。……この声、聞いたことがある……。

「……もしかして、ロディとマリアン……?」

「そうよ?」

「あぁ、もしかしてぼくがイケメンすぎて驚いたのか?」

「「ぼく!?」」

 どうしよう頭がついていかない……!

「どうしたんだ?二人とも」

「様子がおかしいわよ」

((おかしいのは君達だ……!))

 同じ言葉を心の中で呟く。その時朝日が下から声をかけてきた。

「おーい!降りてこーい」

「はいはい」

 それに反応し、ロディとマリアンは下に降りてしまった。

「……一体、何がどうなって……?」

「……さぁ……?」

 悠の言葉に暁も首を傾げるだけだった。

 そうして下に降りると、着物を着た朝日が見覚えのある、しかしこの場にいるはずのない女性と一緒に立っていた。

 ――兄さん、この人って……。

 ――あぁ、朝日のお母さんのハズだ。でもなんで……。

「見ろ!きれいだろ!」

 戸惑っている双子など気にもせず、朝日はぐるりと一回転させて見せてきた。

「あ、うん。きれいだね、朝日ちゃんに似合ってると思うよ」

 悠がニコッと笑うと「へへへ……」と嬉しそうだった。

「お母さんに着つけてもらったんだ」

「そ、そうなんだな……」

「今日、本当にどうしたんだよ?」

 ロディが不思議そうに見てくる。

「……何でもないよ」

「ごめんね、ちょっと外に出るね……」

「おう?気をつけろよ」

 白田も不思議そうに見ていたが、それを気にしないようにしながら二人はデスティーノから出る。

 店の前ではすでに両親が立っていた。

「やぁ、暁に悠。あけましておめでとう……ってそれどころじゃないか」

「愛良、お前なぁ……まぁいい。二人とも、ちょっと来てくれる?」

 蓮と愛良が二人の手を取り、歩き出す。

 着いた先は蓮の実家だった。

「あけましておめでとうございます、お母様」

「あら、蓮。久しぶりね」

 蓮が祖母に挨拶し、屋敷の中に入る。そして由弘に声をかけた。

「久しぶり、由弘君」

「あ、姉さん。久しぶり。どうしたの?」

「……違和感に気付いてる?」

 蓮が尋ねると、少し眉をひそめて、

「……やっぱり、おかしいんだね」

 そう答えた。それに「よかった」と蓮は笑う。

「そろそろもう一人来ると思うよ」

 蓮の言葉と同時に、ドアベルの音が聞こえてくる。使用人が出ると、そこにいたのは安村。

「あの、その……」

「いいですよ、彼はボクの客人です」

「れ、蓮様の……ど、どうぞお入りください」

 蓮の一声で慌てて安村を入れた。

「……おい、どういうことなんだ?」

 使用人を下がらせた直後、安村は蓮に問いかける。

「どういうこと……と言われても、ボクにも分からないとしか言えないね」

「本当にか?」

「まぁでも、心当たりがないと言えば嘘にはなるよ」

 お茶を飲みながら、蓮は答える。そして立ち上がり、

「多分、どこかにデザイアがあるハズ。そこが原因だよ」

 行ってみる?

 その言葉に三人は顔を見合わせた。

「オレは行く」

 安村は鋭い目をしながら頷いた。

「……そうだね、このままじゃどうしようもないし……」

 双子も呟くと、「だったら、行こうか」と愛良も笑った。

「気を付けてよ、姉さん達」

「分かってるよ、由弘君。お母様をよろしくね」

「うん」

 由弘にそう言って、五人は屋敷から出た。


 少し歩くと、異様な光景が目に入った。

「え……?」

「な、なんでデザイアが……?」

 なんと、ゲンソウナビを使っていないのにデザイアが見えているのだ。

 近付くと、あきがオロオロとしていた。

「あ、先輩!」

 こちらに気付いた彼女は暁達のもとに駆け寄る。

「その、みんなあれに気付いていないみたいで……あれって、異世界の建物ですよね?」

「あぁ、そのハズだ」

「多分だけど、違和感を持っていないんだと思う」

 それに蓮が答えると、「どういうこと?」と悠が首を傾げる。

「あれは「ここにあって当たり前」だって思っているんだよ、ほかの人達は」

「……理解しかねるが……つまり、異世界と融合しかけていることで起こっている現象ってことか?」

「端的に言えばそうなるな。……とにかく、誰のデザイアなのか入ってみないと分からない」

 安村の質問に愛良は頷き、とにかく入ろうとスマホを取り出す。

「そちらの嬢ちゃんはどうする?一緒に来るか?」

「……はい、行きます」

 ――今の返事に、違和感を覚えたのは悠だけだっただろうか?

 デザイアの中に入り、研究所内に侵入すると放送が流れてきた。

『侵入者を認識いたしました。放送を開始します。主とお話しされたいのならば、左の扉からおいでください』

「……拒むつもりはなさそうだな」

 愛良が呟く。今までの主と確実に違うことは分かった。

 そのまま進んでいくと、広い場所に出た。そこで、暁と悠、あきは目を見開く。

「やぁ、久しぶり」

「……喜村先生?」

 そう、ここのデザイアの主はお世話になったカウンセラーだったのだ。

「ど、どういう……」

「デザイア自体、強い欲望によって生み出されるものだからね。悪人とは限らないよ」

 それは朝日の時によく思い知った。でも、この先生がデザイアを持つほどの歪みを……?

「……言い方を変えよう。

 デザイアは「強い想い」があれば、誰にだって生み出せる。恐らく彼は純粋すぎてデザイアが生まれてしまったのだろう」

 愛良が補足してくれる。

「……そうだね。僕はどうしても、人々を苦しみから解放したい」

「……それで、この子の認識を変えたの?「きはく」ちゃんの」

 蓮が名前を言った途端、あきの様子がおかしくなる。

「え……きはくって……」

 その時、目の前に何かが流れ出す。

 そこには、あきと彼女によく似た女の子が一緒に歩いている場面だった。一緒に笑いながら歩いていた二人だったが、突然あきに向かって車が突っ込んで来る。動けずにいると、隣にいた女の子があきを突き飛ばして守った。

「あ……あぁ……「あき」……姉さん……」

 彼女は涙を流しながら、その場にへたり込んでしまう。

「え……?」

「あぁ、暁達は気付いてなかったんだ」

「なるほど、だからずっと「あきちゃん」って言っていたのか」

 蓮と安村が納得したように声を出す。

 ――悠はようやく、今まで感じていた違和感に気付いた。

 彼女はきはくだ、あきじゃない。でも、自分達は謎の力で彼女を「あき」だと認識していた。

「多分、彼のアルターのせいだな。……開原先生の時と同じものを感じる」

 愛良が悠の質問に答える。開原先生……?と首を傾げると、「蓮が世話になった先生なんだ」と笑った。

「……それより、今は彼の方だ」

 その話を一度中断して、全員が喜村の方を見る。きはくはへたり込んだまま。

「……僕も、君達と戦うつもりはない。だから一度、見てきてくれないか?」

「……まぁ、ボク達も子供に任せます。きはくちゃんはボク達が――」

「いや、僕が預かるよ」

 蓮が言い切る前に、触手のようなものできはくを抱え込まれた。

「……危害は、加えるつもりもなさそうですね」

「あぁ、約束するよ」

「チッ。なら、一度戻るぞ。話し合いをしよう」

 そのまま、五人はデザイアから出た。

 現実に戻ってくると、「どうするんだ?」と安村が聞いてきた。

「ボク達はさっきも言った通り。君達に任せるよ、あまり干渉するわけにもいかないしね」

「……フン。お前達はお仲間さんの様子でも見に行けばいいんじゃないか?」

 蓮の言葉を鼻で笑い、安村は悠達を見てそう告げる。

「そうだな。オレ達が決めるわけにはいくまい」

 愛良も肯定する。

「……分かった、明日以降見に行ってみる」

「あぁ。オレはその間に調べておくさ。来週でいいだろ?」

 そうやって日程を組み立て、解散した。



 その日の夜、ロディとマリアンがニコニコしながら二人に報告した。

「なぁなぁ!今度、アンと一緒にデート行くことになったんだ!」

「私、アサヒと一緒にお出かけするの!」

 それを聞いて、二人はむなしい気持ちになった。

 ――今までやってきたことは、なんだったのだろうか?

 もう、分からなくなってしまった。

「……そっか。よかったね」

 悠は笑顔を向けるが、果たしてちゃんと笑えていただろうか?

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