10.魔導書5
本日二度目の投稿です。
セシリアはほんっとうに社交が苦手らしいのよねえ。だから、アタシが攻略対象者をオトすアドバイスをしたら喜んだわ。
で、選んだのはジェイラス・フェアクロフだったの。アラ、二番目に身分が高いひと? アンタにしちゃあ、珍しいわね。
セシリアが彼を選んだのは当然っちゃあ当然だった。だって、彼くらいしか婚約者がいない攻略対象者っていないんですもの。
弟であるギルバートと裏切られたハロルドを除外したら、残るは四人。うちひとりはちょっと会えないだろうからね。
アタシは張り切って伝授したわよ。
そうしたらさ、ちょうどタイミングよく、ジェライス・フェアクロフがセシリアパパのカーライル侯爵に会いに来たって言うじゃない!
アタシは父親にくっついてゴウインに同席させてもらえ!ってせっついたわよ。
あのコ、そういうの、苦手じゃない?
でもね、賢いのよ。アタシが教えた情報の中から、ちゃあんと自分ができることを拾い出したの。つまりは薬草茶を淹れたのね。身体が弱い弟君のためにナンタラいう器械を使って自分が実際に成分を抽出していたっていうからすごいものよね。つか、変わり者令嬢よね、あのコも。
とにかく、そのお茶で喉がすっきりしたらしくて、話が終わったらセシリアも呼び出されたのよ!
キタァァァァ!
しかもさ、あのコが興味がある上に特技でもある薬草やらあまつさえ蒸留の仕方なんか、学者でもない貴族が分かるわけないと思っていたら、いたのよねえ!
その話題で話が弾むってなによ。
うへえ。カタブツ同士の会話ってカンジねえ。
セシリアは「うへえ、とはなんですの!」なあんて言っていたわ。
まあまあ、そう怒りなさんなって。こんなふうにぷりぷりしちゃうアンタもカワイイわよって言ったらさ、
「か、可愛いなどと」
———これ、なんて言うのかしら。ツンデレ、じゃないことは確かね。
カタブツデレ? カタデレ?
ともかく、ヒロインちゃんがフェアクロフ公爵子息にロックオンする前に仕留めるわよ! あ、違った。射止めるわよ! 殺ってどうすんのってカンジよね。
ってなワケで、セシリアママの伝手を使って公爵子息が参加しそうな夜会を探って送り出したわ。お尻を叩く間もやきもきさせられちゃったわ。
言うに事欠いて、「なにを話して良いか分からない」よ?!
そんなの、フツーにテキトーに話しておけば良いのよ! そのときのフィーリングよ! 気が向いたことを話せば良いのよ。
うー、気になるぅ。
これってアレかしら。自分の子供がクラスに馴染めなくて学校に行きたがらないのをなだめすかして送り出した親の心境。
……とりあえず、念は送っておくことにするわ。
がんばれー! がんばれー!
くーっ、気になるぅ!
ああん、もう、部屋の中をウロウロしちゃうわ! って、アタシ、魔導書だった! 動けなかったわ!
なんでよりによってモノなのよぉぉぉぉ!(魂の叫び)
こっそり後をついて行ってデバガメできないじゃんよぉぉぉぉ!
あのコ、良いコなんだけれどねえ。ちょっとホラ、おカタい感じがするじゃない? ううん、きっと相手が話についていけなかったりさあ、あとはその場の空気がシラけちゃわないかって、本人が遠慮しちゃうんじゃないかしら。
帰ってきたら嬉しそうにあれこれ話したことを教えてくれたわ。
あら、カタブツどうし話が合うのね! 良かったじゃない。今までの頑張りが報われたのよ。あら、やだ、湿っぽくなっちゃう。湿気は大敵だってのに!
で、ヒロインちゃんはどうしているのかしらね。あら、今のところはなにもなし?
ううん、次の手を打ってきていそうね。
じゃあ、こちらも次に備えるわよ!
ようやく、タイトルの役者が出そろったわね!
カタブツどうしで進展するのかしら?
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