おかえし その1
「ほら!綺麗に飾ったよ!」
母は大喜びで食卓にたんぽぽをいけてくれた。
焦げ茶のテーブル、小さなサイダー色の瓶に、黄緑の茎、黄色い花びら。
僕の眼はその下から上、上から下を何往復しただろう。テーブルに肘をついて顎を乗せてみたり、手を置いて前のめってみたり、椅子ごと1mほど下がってみたり。
そんな僕を母は耐えきれずに少し笑った。
「良かったわねえ、大好きな子にお花もらえて」
「……うん、よかった」
噛み締めるように言う。その視線はたんぽぽに向けられたまま。
「お母さん」
「なに?」
「お花、僕がもらっちゃった」
「そうねえ」
「僕があげるはずだったのに」
「まあ……」
僕は真剣に、頭をぐるぐるさせながら言葉を口にする。
「どうしたらいい?」
「お礼?」
「うん。それ」
人生経験が浅すぎる僕には何も浮かばない。こういう時は大人に頼るしかない。
「んー……どうするかなあ……」
母が天井を仰いだ時、チャイムが鳴った。
インターホンに目をやると、父が画面の向こうで手をヒラヒラ振っている。
「お父さんだ!」
そうだ。父だ。大人の知恵、男の人の知恵、父を頼ろう!
僕はピーンときて玄関へ走っていった。




