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花束 その5

記憶を辿ってももちゃんの話、要約。

ももちゃんの家にはおばあちゃんがいて、おばあちゃんは骨折だったかで入院中だったんだそうだ。

それでももちゃんは数日に一度は幼稚園のあとにご両親と一緒に市内の病院へお見舞いに行くことになっていて、その時必ずご両親は花を持っていくのだとか。

病院で花を持っていくのは当時はどうだったのかは正直分からないけど、多分おおらかなものだったんだろう。おばあちゃんはお花が好きで、それを楽しみにしていたようだ。

それでももちゃんは病気や怪我をした人にはお花をお見舞いにプレゼントするものなのだ。と覚えたらしい。

大体こんな感じの話を聞かされた。


「えへへ、そこのたんぽぽね、ちょっと前に咲いてたんだよ」


園庭を指さして君は少しはにかみつつ説明する。


「どう?きれいでしょ」

「うん……!きれい!」


僕はちょっと前のめりぎみに頷いた。


「気に入った?」

「気に入った!」

「よかった!じゃー、はいっ!これで元気だしてね!」


君は少々強引に花束を差し出し、僕に握らせる。

君の小さな手が僕の小さな手をぎゅっと包む。

君は満面の笑みに少し桃色を足したような、そんな顔を向けた。目と鼻の先にあるその顔に僕は桃色どころか真っ赤に染まる。手は少し震えた。

君の丸い黒い目はキラキラして、僕の目は白黒した。


「あ、ありが……とう」


思わず顔を下に向けてしまう。

僕は嫌がったように見えなかったか、下に向けた瞬間後悔して不安になる。

君は少し間をおいて声を発した。


「……うん、元気、だしてね!」


そう言いながらパッと弾けるように遠のいて、そのまま走り去ってしまう。

僕は遠のいてから顔を少し上げたのだけど、君がどういう表情でそうしたのかまでは分からなかった。

すぐに視線をたんぽぽの花束に戻し、じっと見つめる。力を込めて握っていた事に途中で気がついて慌てて緩める。

ももちゃんに貰った花束、絶対ダメにしちゃいけない……!

僕はなにか物凄く重要な任務を負ったように思えた。

その後、たしか先生に言って枯れないように包んでもらったように思う。

先生がそれになにか言ったかは忘れたけど、とにかく僕はこの宝物を無事に家に持ち帰り、しっかり綺麗に飾らなければならない。と固く決心して、凄く凄く真面目に、丁重にたんぽぽの花束を扱った。

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