花束 その4
その日の朝のお遊戯が一旦終わって自由時間になった頃、唐突に誰かに背中を軽く叩かれた。
まだ恥ずかしさを引きずっていた僕が訝しげに振り返ると、そこには君がいた。
「わ、ももちゃん!?」
驚く僕をよそに君は僕を上から下までジロジロと眺める。僕は赤面した。
「な、な、なに…?」
「うーーん」
ももちゃんは少し屈んでまで僕を眺め回す。
困惑していると、これまた急に君はぴょんっと跳びながら眩しいまでの笑顔を見せる。
「うん!ケガ、してないね!よかった!」
「!!」
僕は更に赤面する。
ももちゃんが、ももちゃんが僕の心配をして、わざわざ見にきてくれた……ももちゃんが……僕を……
「んん?どしたの?あおくん?おかげんわるい?」
次は君が困惑しだす。
僕は小さく変なうめき声を漏らしながら二歩ほど下がる。
「あ、いや、うん……心配、ありがとうね」
君はそれを聞いてパッとまた笑顔の花を咲かせる。
「うん!よかったね!」
君の表情はコロコロかわる。
急に花が咲いたり、雨が降ったり、雷が落ちたり、噴火したりと大変エネルギーを消費しそうな変化だ。
僕は恋をする前からそのあたりは気に入っていたし、今だってそうだ。見ていて楽しい……というか、面白い。
「あおくん自転車から落ちそうになって、もも、すっごくビックリしたんだよ?」
「う、うん」
「乗り物から降りる時は、シンチョーにするんだよ。パパがいつも言ってるもん」
「うん、気をつける」
君はちょっとお姉さんのように気取ってみせる。
確かに生まれ月はももちゃんの方が先なんだが……実際はふた月くらいしか変わらない。
でも幼児だからちょっと違うだけでお姉さんお兄さんになれる部分があって、この時は確か君のほうが背が少し高かった。
「ーーーだからね、心配したからね」
「???」
ポーっとなって聞いていたら急に話の方向が変わった。なんだか今度はモジモジしだした。
そしてスモックのポケットから、たんぽぽが3輪か4輪ほどの束で出てきた。
「あのね、これ、おみまい!」




