花束 その3
翌朝。
僕と母を乗せた自転車が園の前に着いた時、ももちゃんは2人の女の子と一緒に門をくぐり抜けた。
いつもの朝、いつものタイミング。
でもここ数日の僕は、君の事を目で追ってしまって注意が散漫だった。
「わ、ちょ、ちょ!」
母の声がし、僕は前に半回転し、胸に母の腕が強く当たった。
僕は君を見ていたばかりに子供乗せから降りるのを失敗したらしい。
母の反射神経の良さが頭から落下するのをなんとか防いだが、代わりに母の自転車がガチャン!と大きな音をたてて倒れた。
それに驚いて周りの大人、子どもが一斉に僕たちに視線を向ける。
「大丈夫ですか!?」
「青葉くん大丈夫!?」
何人もの他所のお母さんやお父さんが駆け寄ってきて、すぐに自転車は立て直され、母はペコペコと頭を下げ、僕は恥ずかしくて顔を上げられないまま母の腕にしがみついた。
母や周りの大人があれやこれやと僕の無事を確かめてくる。僕は頷いたり、横に降ったりして応えたが……とてもとても恥ずかしくて、今すぐ家に帰りたいと思った。
だって、門をくぐっていったはずの君が引き返してきて僕たちを覗いていたんだもの。
母の腕越し、薄ら目で見た君は、全体に少し門の外側に傾いて胸に両手を当てて軽く涙目になっていたように思う。
君は結構すぐ笑ってすぐ泣いてすぐ怒る子だから、途端に顔に出たんだろう。
僕は心配された事に少し嬉しさも感じたけれど、そんな事よりドジを踏んだ事が頭の中にグルグルとしていて
(どうしよう、どうしよう、ももちゃん見てて落ちたのバレたらどうしよう!)
という言葉もグルグル。
グルグルするほど恥ずかしくて熱くなって、またグルグル……
今となっても恥ずかしいのだけど、君が覚えていない事を切に祈る。本当に。




