花束 その1
帰宅して、一晩頭をひねって
(ああ、僕はももちゃんが好きなのか)
とやっとたどり着いた。
そしてまた難題。
僕は恋がどうのとか、何も知らない。どうすれば良いのかなんてまるで何も分からない。
そこで僕は素直に幼児らしく、家事に勤しむ母にたずねたものだ。
「ねえ、お母さん」
「なあに」
「ぼく、好きな子ができたんだけど……」
母は一瞬黙って、次に目を丸くした。
「えっ……えっ?」
うん、まあ、唐突に4歳児がそんな事言い出すとは思わなかったのかもしれない。
それでも母親たらんとしたのか、母は一呼吸して笑顔を見せた。
「ああびっくりした。でも良かったね、好きな子ができるって素敵なことだものね」
「そう?」
「うん。だってなんだか恋をするとキラキラ〜ってなるじゃない?」
「きらきら……」
たしかに、キラキラした。
僕は繰り返しながら納得した。
あの時の君はキラキラしてたし、この時もまだそのキラキラが頭の中に残っていた。
「それで、幼稚園の子?」
「うん。ももちゃんだよ」
母ははぁ〜とため息をついた。
「なるほどなあ、ももちゃんかあ……ホンワカしててかわいいもんねえ、ももちゃん」
「うん!」
元気よく即答する僕に、母は笑いを禁じ得なかった。
「あはは、良いね良いね。青葉にも青春が来たね。お母さんもえちゃうなコレは」
「???」
母はしばらくニヤつきながらうんうん頷いた。
この時の『もえちゃうな』の漢字はなんだったのだろうか……気にはなるけど、聞きたくはない。




