今年もたんぽぽのように
「青葉……?なにニヤついてんの……?」
ものすごく気持ち悪そうなものを見る目が視界に飛び込んできた。
僕は驚いて弄んでいたペンを落として更に醜態を晒す。
彼女ははっはーんと鼻で笑いながらペンを拾う僕を見下ろす。
「まーた昔話に浸ってたんでしょ。いい加減にしてよねホント」
「う、うるさいな……そういう季節なんだよ」
僕はバツ悪く頭をかいて上半身を起こす。
目の前にいる彼女は、君はあどけなさは無くなり髪は長くなり、陸上部らしく日に焼けている。
「まあ校庭の隅とか、たんぽぽめちゃくちゃ咲いてるしね」
「うん……だからどうしてもさ」
「マセガキだったよねぇ、私らもさ」
「……」
「お互いママたち知ってたとかさ、グルだしさ、恥ずかしすぎるんだけど」
「そうだね……」
「はめられたわー……ちっさい我が子の恋バナで盛り上がってたんだよ?ママ友でさ、多分」
「ははは……」
君は窓枠に腰を預け、気だるそうに愚痴を言う。
それでも、僕たちは。
「まー……未だに飽きずに付き合ってんだから、私らもしょーがないけどねぇ」
「……飽きるわけないし……」
「は?」
「いやその」
もごもごもご。
僕は相変わらずおっかなびっくりで、君はどんどん強くなっていた……心身共に……
でも君はジト目からパッとイタズラっぽい笑顔に変えて見せる。
「じゃ、私も飽きさせないようにしてよね。親の力借りずにさ……勇気出せ少年!」
「少年って……」
僕は何か言い返してやろうと思ったが、やめる。
でもそれは勇気が出せないからじゃない。
音をたてるまもなく立ち上がり、そのまま教室のカーテンが風ではためくより早く……
僕たちは静かにキスをした。
春の青臭さの混じるたんぽぽの香りが窓の向こうから吹き抜けていく。
毎年繰り返してきた行為、きっとこれからも毎年繰り返すのだろう。
僕が君を飽きさせない限り、君は笑ってくれるだろう。
たんぽぽのように……




