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おかえし その5

「……あったかいね」


ようやく君が口にした言葉。光の加減で表情が読み取れない。僕は困惑した。


「えっと」

「このたんぽぽさん、あったかいね」


君はそこで一呼吸入れる。


「青葉くんのたんぽぽさん、私……好き、かも」


世界から音が消えたかのように、君の声だけが頭に響く。しんとした中に「私好きかも」という言葉がリフレインする。

でもそれはたった1秒足らずの事で、すぐに園の環境音がわっと戻ってくる。

戻ってくると同時に君は僕の方を見ていて、その顔はまだ光に照らされていて……僕は……僕は……


「かわいい……」


ポロっと僕の意思に関係なく転がった言葉。

……と同時に現実の温度が追いついてきて、更に僕は加熱して、君もそれに続いて赤面していく。


「えっいや、うん」

「……」


無言で赤くなりきった君はくるっと後ろを向く。


「……ありがと」

「あ、あう……ん……いやあの!」

「うん、しってる」


食い気味に君が早口で言う。僕は何を言われたのかうまく聞き取れなかった。


「へ……?」


君は大きく深呼吸して、また素早くターンして大袈裟に笑顔を作って言い放つ。


「私も!青葉くん!大好き!」


言い切った時には君はもう全速力で走り出していた。

僕は慌てて、でもハッキリと大声で。


「僕!も!ももちゃんが!大好き!だよ!大好きだからね!」


君は一瞬速度を緩め、でもまた走っていく。

僕は僕で走ってもいないのにゼェゼェと肩で呼吸する羽目になる。


周りがぎょっとしたり笑ったりして僕たちを注視している事に気がつくのはそれから10秒程経ってからの事だったと思う。

でもそんなことどうでも良いくらい、当時の僕は達成感に満ちていたと思うし、運動会で1位を取ることよりもよっぽど嬉しい事だと確信していた。

そうハッキリと僕の記憶に刻まれている。

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