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第五話 (狐の尻尾はもふもふふかふか…まるでパンみたいだぁ)

初期ストック分放出完了

展開は考えてあるので早めに投稿できるとは思いますが不定期更新となるためブクマやアプリのインポート機能などをしてくださると幸いです


「ふむ…これが完成品のフォックステイルですか」

「ああ、先程できたてのホヤホヤだ…あのこのお墨付きだ」


執事のロディオと共に自らも試食を行なっていた


「ほほう…まるでケーキのようにふかふかですな、ここのところ屋敷内で香ばしい香りがしていたもので気になっていたのですがこれはこれは…」

「試作の間は俺にも食べさせてくれなかったからな…あいつも職人気質なところもあるし半端なものは食べさせられ無いと思ってのことなのだそうだ…それよりも10日毎に定期報告は行うように言っていたのだがそれよりも早く仕上げるとはな」


「この程度の日数でこれが作れるなら他のパン職人がすでに開発しているのでは?と疑ってしまいますな」

「それは俺も思ったがラッセルが言うにはあの子が居なければなし得なかったそうな」

「長期発酵の発見、小麦粉の粘りの有用性、卵とバターを多めに使ったことで濃厚な風味と粗悪な物が紛れる事の有るラードからの脱却…これがただただ一匹のペットの食事を作ろうとした結果生まれたというのがなんとも不思議なものですな」


「俺は料理にはバターも使われていたが菓子やパンへの利用用途が増えればいいと思ったがバターの生産はウチの商会が卵の費用は少し掛かるにしろ小麦粉が悪粘粉と上質粉を混ぜてもイケるとなれば安上がりに作れましょう」

「中身を知れば阿呆が突く部分であるがこの出来上がりならば誰も文句は言うまい」


サクッとした食感を好む者が多いので粘りの強い悪粘粉の元になる小麦種は粗悪品として人気がなかったが育てる過程で他の品種からでも突然変異を起こし一定割合混ざってしまう困ったものだった



「悪粘粉は増粘剤のような用途が一般的だったからな、こいつを商品として売り出すなら先んじて悪粘粉の大口買い付けと定期購入の契約を持ちかけておこう」


「クズ粉でボロ儲けできると思った輩は嬉しがって納品してくださるでしょうな…」


「それとは別口で安定供給をしてくれるだろう商会も声をかけておこう」

「かしこまりました…ですが悪粘粉を使っているとなる嫌悪される可能性はありませんかな?」


「それも織り込み済みだ…最近工業ラードの食用として偽装販売する事が横行しているがそれを利用させてもらう。幸い我が商会の取引相手はその手の偽装はまだ行なっていないようだからな・・ランドール商会の奴らを叩けるチャンスとなれば乗っかってくるさ」


「なるほど…一方このパンはラード未使用…そちらのほうが燃え上がるでしょうし悪粘粉など些細なことでしょうな」

「いつ情報が流れるか分からんからな準備期間は一月としておいたほうがいいだろう…忙しくなるぞ?」

「かしこまりました、工場長のマルコなども加えて会議の場を設けましょう」


「久々の商売のチャンスを作ってくれたラッセルとあの子には褒美をやらんといけんな…」


こうして後にフォックステイルと呼ばれ王室にまでその名声が響くパンの商売戦略が始まるのであった




―――――――

近代帝国史 7章 帝国と食


帝国とフォックステイル(食卓パン)


資産家でもあり偉大なる帝国の人がどの紳士たるオーレン卿の個人投資事業にて出来たこの食卓パンはただの目新しいパンとだけではなく近代の食の歴史と栄養学の普及、そして栄光有る帝国史において多大な貢献をもたらしたと言えるだろう


制作発想の当初は『滋養強壮によく太りにくい健康志向なパン』として開発がスタートしたそうだが当の目的である太りにくいという目的は最近発見された栄養素からなる栄養学の視点から言えば太る原因とも言えるカロリーは抑えとは言えない

初期はこの問題をやり玉に挙げて声を上げる栄養学者も居たが別の視点からのアプローチによって崩されることになった


多くのパンは柔らかい内側の面積を増やすために肥大化の一歩をたどっていた為に食卓パンですら一つ食べればかなり腹に溜まるものであった

腹を満たすという観点で言えばそれでいいが野菜や肉などに含まれる様々な栄養を得る機会を逃すことは栄養学の観点で言えばかなりの問題であろう


フォックステイルはこぶりな為女性や子供でもちょうどよく体格や体調に合わせて食べる個数を管理することが出来、制限もしやすくなりとても便利な食べ物であったのだ


このパン一つというわかりやすい基準が広まったことでカロリー制限における基準もすぐに確立され栄養素の単位基準の制定や栄養学だけでなく食文化も見なければ何の意味も無い数字になってしまう危うさも早期に発見されることになったのは黎明期で懐疑的な声が多かった栄養学が有用な学問としてすぐに着目を集め活発な論議が繰り返し行われた一年の間で20年分は学問としての成熟を果たしたのではないだろうか?

精霊学から魔力を切り離し機械工学として提唱しこの世に覇を唱えた帝国の初代皇帝であるアーサー・ランドロフ一世の治世初期の苦労を赤裸々に書き綴った有名な著書である帝国建国秘話からしても新たな分野とは余人には理解されにくいものであるのは帝国紳士としてではなく帝国の民としても知っていなくてはならない


未だ呼んだことのない者は己は無学だと嘆くことはない近代帝国史 第一巻に記されている『一章 帝国と建国』と『2章 帝国と機械工学』を読めばすぐに解るであろう


さらに栄養学の観点とは少し違うが真の意味での健康食品とは素材の質に左右されるという部分も記載セねばならぬだろう事はフォックステイル販売初期に起こった工業ラードの食用転用問題であろう

多くのパンに使われていたラードだが社会的な問題があり安全なものとは言えなかったのだ

当時機械の差し油などに使われる工業用ラードの加工には薬品の使用が認められているがそれの一部を食用品として転用し市場に流す愚かな商人が後を経たなかったのだ

実際に健康を害された者達だけでなく多くの人々はラード入りのパンを忌避することになってしまったのだ

そこでバターを主に使うフォックステイルが人づてに知られるようになり当時の商品価値を狂わせる程に需要が伸びる事になった

そんな爆発的に知名度を伸ばすフォックステイルに難癖をつける他の商人も居たが『ラードを使わずに作られ上質な油分と卵と牛乳入で滋養強壮効果が食事に必ず食べるとも言えるパンで補えるのはまさに完璧な栄養食と言えるだろう』という栄養学者の主祖ランバート=エメダイン侯爵の声明により外部からの情報により愚かな商人達はその口先をへの字に結ぶしかなかったのだ


こうしてフォックステイルの知名度による部分が多いのは否めないが栄養学の普及とは切っても切れぬ関係があるのだ



滋養強壮食として平民に広く伝わったフォックステイルはミルクとバターが醸し出すほのかな甘みと芳醇な香りで上質な食べ物としての側面でも人気が出るのは間違いなかったがしかしながら当時パンには労働階級達の食べ物という認識が強く富裕層で好むのは少しばかりはばかられるものであった



これは当時のパンは柔らかな中身を増やすため大きく焼いた食べ物であった

ナイフでは切り分けにくいものであり食べやすくしようとすると最初から切り分けるしかない。しかしながら切り分けた物を食卓に並べるのはテーブルマナーとしても見過ごせるものではない

フォックステイルが世に出た後は食す者は居たであろうがそれでも富裕層の食べ物とはパスタやスープに入ったニョッキなどが一般的であった



しかしながら現在においてパンは富裕層に受け入れられる食べ物になった…その下地を作ったのは他ならぬ女王陛下だったのだ…それは食事係が陛下の食卓にフォックステイルを取り上げたことに起因する


食卓に出されたフォックステイルを女王陛下はそのふんわりとした食感と愛らしい外見からケーキの一種と思われ食卓にケーキが出てきた事をいぶかしんだそうだ、しかし食した後に『これこそが志向のパンである』と言われるほど大変お気に入られたのである

貴族院でその話が広がると富裕層の間でもこぞって食べられる物となった


こうしてフォックステイルは富裕層と労働階級を結び『帝国文化を象徴する国民食』とまで言われるようになった



素晴らしい功績を上げるフォックステイルだが帝国紳士としてはあの問題も取り上げなければならぬだろう

成り上がり共の傲慢さが招いた帝国の偉大な歴史の恥とも言えるあの出来事を…



ティータイムには自らを見つめ直し静謐と優雅さ気高さなどを高める為の大事な習慣の一つだということは紳士淑女の皆様にはご理解いただけるであろう

しかしながら理解の足りぬ成り上がりの商家どもは下品とも言える量の砂糖を入れた物を茶菓子などと宣い帝国紳士淑女のティータイムを愚弄するばかりであった

私の付近でも時たま話題に上がったことから真の紳士淑女と成金共の合間に確執があったのは間違いないであろう

そこに登場したフォックステイルははまさに英国紳士淑女のティータイムに一石を投じる事となった


フォックステイルはパンでありティータイムに用いるなどいくらフォックステイルといえどそれは度し難い事だ

だというのに我々帝国紳士淑女の精神を解せぬ成り上がり共は愚かしくもティータイムにフォックステイルを食べるのだという…

すぐさま『ティータイムにパンを食べるのはマナーとしてはいかがなものか?』という嘆きが帝国紳士淑女の皆様方の話題に上がり成金共が厚顔無恥に跋扈する昨今であっても真の帝国紳士は潰えて居なかったことを誇らしく思う


しかしながらその芳醇な香りを紅茶と共に楽しむ誘惑に筆者も駆られた事は否めない。だがが帝国紳士の一人として犯してはならぬと耐えたものだ

そんな折にこのフォックステイルの風味を参考にしてかのエリザベスビスケットが生まれたのだからオーレン卿は帝国に連なる紳士淑女の高貴な精神を正しく理解しているのであろう


この様に様々な方面で成し遂げたフォックステイルはまさに帝国の素晴らしき文化の一端と言えるだろう


どうもあとがき語りがやめられない作者です

細かいことって公開後に感想などで答えるのがいいんでしょうか?


後半の文章を書いている人は主観で物を書きがちの頑固な貴族様です


食文化というものを創作すると技術の伝達とか色々考えないといけなくて大変ですね…

バターは帝国北部にある一部の地域でのみ食べられていた物が工業製品として一般化したという設定です、パンは南部辺りから伝達したためこの2つの食べものは今まで絡むことがなかったという設定…

あ、フテン狐が住んでいるお屋敷の場所は大陸中央の帝都です


地理とかの話は中々考えれていませんが現状は他国との絡みとか考えていないので大陸一つを平定していると考えて居てもらえればいいと思います

きっとこの世界は大作戦記物のナ―ロッパ世界のエンディング後の時代でもう敵対存在なんて居ないんですよ…ええ

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