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第四話 端折られた屋敷探索!!!そして狐とシステムキッチン(違)と小麦さま



ご奉仕すると決めた私がお部屋に戻されるとなんとなんと!旦那様自ら私を連れて屋敷の中を案内してくださりました


2階の書斎から出発して寝室、書庫、メイド様の控室

1階の玄関や客間、お手洗いに倉庫など屋敷の母屋をぐるりと回っております


「コン!!!」(素晴らしいです!!これがハイカラなお屋敷というものなのですね!!!)


「気に入ったか…?ここがキッチンだな…食い気のありそうなお前はここが一番気にいるのではいだろうか」


中に入ると暖かな色合いのレンガの壁に作業場としての風格を損なわぬ石の床

今まで巡ってきた漆喰の壁と板張りの床の部屋とは雰囲気が違いますね


周囲を見渡すと何やらここは台所とお見受けします


しかしながらところかしこに霊力を使うだろうカラクリがあちらこちらに…えぇ!先程も屋敷の中にいくつもありましたとも!!妖怪神霊の力をどこまで使えるのかと戦々恐々いたしましたがどうやら使える神術妖術呪術の類いは平和な用途で使われているらしく安心いたしました


「キッチンに来るとは珍しいですね旦那様、小腹でも空きましたかい?」


なんと…この様なガタイの良い大男まで旦那様などと…いいえ!解っておりますとも!ここはおそらくどこぞの大店なのでしょう?それならば使用人一同皆旦那様と言うのも当たり前ですよね


決して二枚目様が衆道(BL)などとはもう考えませぬ!!はしたなく詮索して勘違いを起こすのはもうやめにございます!!!


「いいやこいつに屋敷を案内していてな…そうだ今後こいつを飼うことにしたんだがラッセルはこいつが食べれそうな物が解るか?」


「フォックスでしょう?肉を適当に食わせればいいのでは?」


「この体躯だ、少しばかり痩せれるように食べ物を調整したい」


「ふうむ…ならば穀物ですかね?こいつらは基本肉食ではありますが野草なんかもたまに口に入れるとか聞きますぜ」


「ふむ…しかし野菜で腹はふくれんだろう…野菜がイケるならむぎもイケるだろうしパンでも試してみるか?」


「丁度いい、晩飯用のやつがさっき届いてきましたんでさ」


興味津々で周りと見ていたので聞いていなかったのですが何やら台所役らしき人は奥に行ったと思いきやすぐさま戻ってきましたね


「焼きたてほやほやのバタールですぜ」


そういって台所役の大男さんが机に置かれた籠の中の私に差し出して来たのはなにやら香ばしい狐色の塊


鼻をクンクンと匂いを嗅げばどうやら食べ物のような…はて以前どこかで…ううむ?


「おい…ブール一つは流石にでかいだろう…太らせぬ為なのだから小さく切ってやれ」

「あっ…すいやせん」


何やら懐かしいと感じるそれを何か何かと思っていたらいつまでも食べずにいたことで食べる気がないと感じられたのか微妙な雰囲気が漂ってしまったようです


「ココンっ!」(あぁあお待ち下さい!!決して嫌なのではありません!!食べます!食べますのでどうぞそのままに!!!)


引っ込められそうになったその塊をとっさに両手で掴んで抱え込んでしまいます


芳醇な匂いが抱え込んだ物から漂います…あぁ…これはもしや麦を焼いたものですね?


…んっ?麦…ぁあああ!!!


「コッコーーン!!!」(あぁあ懐かしの小麦さまにございますね!!!あぁああ嬉しきかな)


目の前にあるのは明治になって外からの神様に神界天界霊界などなど驚天動地になった後信仰廃れたその後に戦争激しく恩紗に溢れ社がボロボロになる前に一度食べたことのあるものでした


少し形は違えどもこのフテン事食べ物のことに限れば一廉の知恵者でありまして、匂いを嗅げば解りますとも!使われている食材は以前に食べた小麦を挽いてねって焼いたあの食べ物にございましょう!!!


「コーン♡」(あぁ…なんとも美味しそうな…早速ですがいただきまする)


パクリと小麦様の大きな腹に食らいつけばサクりという音が広がりそれに追随して口の中に香ばしい香りが立ち込めて…


「コももも…モキュモキュ」(美味にございますぅ~~~!!!)


「こいつはいい顔して食ってやがりますぜ…」


「どうやら食べ物のアテは着いたらしい…しかしこの食らいつきの良さではブクブク太るのもうなずけるな…やはり食事制限は掛けたほうが良さそうだな」


「ですねぇ、それならとりあえず油が少なめな塩パンでも頼みましょうか?」


「そうだな…しかし油のとらなさすぎもよくないというし…動物には塩も与えすぎないほうがいいらしい、人よりも体が小さいから今のパンの大きさでは調整もしづらいし不便だな」


「そんなパンなんて有りませんって新しいパンのレシピを考えるほうが早そうですぜ」


「ならばいっそ作ってみるか?油分はラードの代わりに最近うちの商会でも取引を始めたバターでも入れてくれるか?」


「北部の奥地から最近流れてきたってあの油の塊ですか?なるほど新しい試みですね…このちびが食べるならパン自体を小さくする方が管理しやすいかもしれませんね…小さくすると柔らかい部分が減るのでパンよりもビスケットのほうがいいかもしれやせんが」


「ふむビスケットか…いやパンでたのむ。労働階級向けとしての商品がほしい所だったからな…。もう少しバターが流行れば富裕層を狙った商品を出す気ではあるしとりあえず労働階級向けにパンで試作を頼めるか?」


「できる前から売りにだす気ですかい?!?そりゃぁご機会をくれんなら現役料理人で元はパン職人の端くれです、頑張ってみましょう」


「最近の悩みが解決しそうだ…こいつに会えたのも精霊様のお導きかもな?」


「精霊ですか…へっ旦那様からそんな言葉を聞いたのは初めてですぜ」


「これでも教会に通っていた事もあるんだぞ?敬虔な信者ではなかったがな…一ヶ月である程度形にしてくれるか?」


「どうにかしやしょう…久々のパン作りでバターでの作成も初めてですがいい刺激になりますぜ」





―――


こうして試作パン製造を開始したラッセルだったがそれなりに忙しい仕事の合間にパンを練っては発酵を繰り返していると時たま忙しさに忙殺されて作ったパン種をついついそのままにしてしまっていた


そこを補ったのは食の直感により頃合いよしと察知したフテン狐がソワソワと周りをうろついてから慌てて生地を作り上げるのが常になっていた


しかしいつもよりも長く発酵されたそれは見事に膨らんだ、これは忙しなく捏ねていく専業パン職人ではなし得ない快挙であっただろう


あまり多くの量は食べさせれないフテン狐の為に滋養強壮のお供である卵を多めにいれたり様々なチャレンジが行われた


途中ボウルを水桶にひっくり返してしまって捨てようとしたそれをもったいと怒ったフテンの導きにより次の試作品のかさ増しに使ったことでグルテン率を増えたし作品は膨らみが増したのもさることながら焼き上がりに絞れずに冷めてもふっくらとした姿のままであったため小麦粉の粘りも重要だとラッセルは気づいた

そこからは料理人の知識によってすぐに目的のものは屋敷に届いた


さっくりとした食感が好まれているこの国では粘りが強く使いにくい強力粉は粗悪品とされていたのでパンにあまり使われなかったのだ


薄力粉と適度に混ぜて数日前に発見した長期イースト発酵法と組み合わせ見事なふかふかパンのレシピを作り上げたのだった


バターと小麦が香ばしく狐色のふんわりとした姿はことの発端となったまん丸狐の大きな尻尾のようだと誰がいったか皆が思ったか、ラッセルは見た目も料理だと発酵前に一手間加えくるりと”尻尾を巻いて”小ぶりなパンが出来上がったのだった



「たった一週間で出来てしまうとはな…」

「こいつが色々とサポートしてくれたおかげでさあ、名付けてフォックステールパン(ロールパン)!…なんちゃって」

「よし特許はその名でいくか…しかし発案者はお前の名前でいいが貴族共のやっかみが有るやもしれんから特許の名義は俺にしなきゃならんがな」

「えぇえ!?特許とかほんとに言ってるんですかい??」

「見た目も味も香りもいい、作り方も今までのパンよりもかなり独自、元々はこいつの為に作ったものだがよくよく考えればこのパンはご婦人や子供に必要なものでかなり売れるのは確実だしお前達が頑張ってくれた商品を後追い連中にみすみす売らせるのも勿体ないから特許は必須だ」

「しかし特許を取るのは膨大なお金が必要ですし…単価も安いとは言えないので本当にうれるのかは…」

「ラッセル…こいつの顔を見ていると売れないほうがおかしいと思わんか?」


「もきゅもきゅ」(炊きたてのお米のごとくふわふわで薫りもよろしくほんとうに美味にございますぅ~~~はわぁああああ)


食べるの大好き飽食まっしぐらな狐神フテンも満点を出すパンなら売れるのは必然だろう


感じろ…ぽってりでぷでぷまん丸狐が両手を添えてパンをもきゅもきゅしている様を…ふふふかわいかろう…


この国(世界)の主食はスープなどに入ったニョッキやパスタ類が主流でありパンは外で食べる労働階級向けというイメージがあります

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