≪ ❶…Ⅴ ≫
目を閉じ、精神を集中させる…
「どういう事ですか、女王」
『説明した筈だ___。我々の使命を』
「使命……」
モルフォ達の事?
『我々のしなければならない事は?』
「子等が灯を運んで女王へと運び、理を守る」
『そう。その使命の方法こそ、死の魔法の一部と言える』
「……え?」
『死んだモノに関与する我々こそ、魔術師からしたら死の魔法そのものよ』
「じゃあ…!それって…」
ズキッと頭が痛くなった途端、女王の声が消えた。
「どういう事?今のは一体……」
女王の言葉を整理しようとした瞬間、モルフォの子等が師匠の周りに集い始めた…
この行動は…まさか
「だ、だめ!師匠の灯には…触れないであげて!」
そう口にしても、子等は使命を遂行する。
灯は私へと運ばれ……私は気を失った。
「___がモルフォの力を得たじゃと?」
「はい。確かです」
「…___が死の魔法を…」
いや、弟子が私の憧れた魔力に見初められたのは嬉しい事じゃ…
「ガーファル様こそ相応しく、欲しかった魔力を弟子に取られるとは…」
「…!」
「お可哀想に。あんなに欲して様々な事をしてきたのに残念ですな…」
「ぐっ……」
そうじゃ…私は、あの力を欲する為に……何度も何度もっ
死に関する禁じ手を研究してきたというのに!
私こそが、相応しい使い手である筈…!!
それを!!!
___!!!!!!!
感情が爆発した師匠の周りには私の目の前に現れた時のような毒々しいヘドロが溢れていった。
「っ……!?」
「あ!モルフォ様!お目覚めですか!良かった!!」
「モルフォ様が目覚めたぞ!!」
目を覚ますと、そこは私が目的としていた村だった。
目の前には先程助けた女性が安心したような表情でこちらを見ている。
「私は……」
「モルフォ様はあの道中で倒れていたのです」
「あの黒いのは…?」
「モルフォ様の周りには居なく、消えておりました」
「そう……」
「モルフォ様。本当に助けて頂き有難う御座いました。どうかゆっくりお休み下さい」
「有難う御座います」
さっきのは、きっと灯の…師匠の記憶。
優しい方だと思っていた。けど、私の知らない師匠がそこにはいた。
あんなに死の魔法を探していたなんて知りもしなかった。
そして何より、死の魔法がモルフォの事だったとは…
色々な事が起こり過ぎて、頭の整理が追い付かない。
「困ったな……力を得るのも、良い事ばかりじゃない…」
人助けをした事で、大好きな人がこんなにも苦しんでしまうとは思わなかった。
「知らない事が多すぎるなぁ…」
身体を抱きしめるように蹲っていると、モルフォ達が寄り添うように私の周りを舞っている。
「励ましてくれてるの?」
師匠が欲しかった力。
それを私が手にしてしまった。
「いいのかな……私で…」
不安が、どんどん溢れ出る。
強い力を得るとは、こういう事なのだと私は今回の事で痛感したのだった。