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【 泡沫の蒼い蝶 】  作者: 灯閖 頼
3/12

≪ ❶…Ⅲ ≫



「此処が…モルフォの聖域ですか?」

「ああ。我々しか入れない我々が管理し住まう場所だ」


不思議な経路を辿り、何かの条件を成した後森は青白く光り聖域は姿を現し私達を招き入れた。

結界のようにも見えるし、そこに存在しているけど周りには見えていないようにも見える

何とも不思議な空間だった。

女王はあっちだ、と指を差し私を案内する。

言われた通りに進む先には青い光を放つ湖があった。

中心には花々が湖の上に咲いていて、これもまた見た事のない不思議な光景だった

挿絵(By みてみん)


「綺麗…」


つい言葉が漏れる程、瞳に映る景色は今まで見たどのものよりも綺麗だった。

そんな私の言葉に微笑み女王は言った。


「ようこそ、我々の聖域へ」

挿絵(By みてみん)





女王の居るべき場所であろう湖の中心で、私は再度女王の傷の手当てをした。

何とか致命傷にはならずに私の魔法と手持ちの薬草で何とかなる範囲のもので安心した。


「魔女よ。童を聖域へ帰してくれて感謝する」

「いいえ。やはり聖域の方が身体に良いのですか?」

「そうだな。此処は生命が集まる場所だ」

「生命の集まる場所?」

「そう。モルフォの使命そのものよ。モルフォは死したモノの残りを運ぶ」

「死んだモノの残り?」

「生気…人は魂ともいうか。それが無くなった身体に残った残留…身体に残った記憶がともしびよ。それを貰い女王は命を永遠と永らえる」

「その灯?というものが此処に集まっているという事ですか?」

「そうだ。魂は常世へ行き、身体は朽ちる前に記憶と共に灯へ変え童の子達が童の元へそれを運ぶのだ。その森で生きた者達の記憶を私は貰い生き、此処を管理し守るのだ」

「凄いですね」

「それがモルフォの存在よ。長らく築き上げてきた存在をお前が救ってくれた」

「たまたま出会わせていて良かったです」

「いや、この世に偶然等ないだろう。運命やもしれん」

「運命だったら素敵ですね」

「お前は本当に素直で面白い」


微笑む女王が真剣な表情へ変わる。


「魔女よ。我々を助ける意を込めて、力が欲しいとは思わないか?」

「え?」


女王の真剣な眼差しと、何処か縋るような感情に心が同様した…


「沢山の子が死んだ。この森も正直、長くはない……だが、魔女よ。童の力を得てその力を様々な世へ解き放ってはくれないか?」

「ど、どういう事ですか?」

「子が沢山死ねば、使命を成す数は減り童の永遠は…永遠ではなくなる。だが、お前に力を与える事でお前が旅する場所へ童の子を解き放ち子を広げる。そして、いつしか新しい女王が生まれモルフォはまた永遠を生きられる。よもやこれは童の我儘だ、途絶える存在に希望が欲しいのだ…」

「私に力を与えるだけで、繁栄が出来るという事ですか?」

「ああ。童の灯と子を色んな場所へ解き放ってくれたらいい。それには童の力をお前が得る事が条件だ」

「その力ってどんなものなんですか?」

「そうだな。残りの子等がお前に使命を果たす、それを受ける事によりお前は長寿になっていくだろう。そして、色んな記憶を得て知恵を得る。魔法の力も強くなろう。力を得れば見習いではなくなるだろうな」

「そうなんですか?!それって私に好都合な事ばかりなんじゃ…?」

「それだけの事をお前はしたのだ。途絶える所だったモルフォをお前は救ったのだから」

「私はただ、助けたかっただけで…」

「立派な魔女になりたいのであろう?」

「はい…」

「では、遠慮する事はない。童の力をお前に譲る」

「で、でも!貴女はどうなるのですか?」


有難い事ばかり、好条件な事ばかりに意識をもっていかれそうだったが…

そんな巨大な力を与える女王は、どうなる?

その不安に女王は微笑んだ。


「死にはしない。ただ、この湖で眠るだけだ」

「一生……?」

「いいや。お前が解き放った子等が新しい女王を生んだ時、その女王の元へ私は灯として一対となる」

「それじゃあ、今…私の目の前にいる貴女とはお別れじゃないです…!」


折角助けたのに?

あんなに頑張って生きようと逃げていたのに?


「泣くな魔女よ。私は妖精、生死などあってないようなもの。気に病む事でもない」

「でも……もう、貴方と会えなくなる…」


ぽろぽろと目の前の女王の姿がこれで最後なのだと思うと寂しくて、悲しくて涙が止まらなかった。


「お前は本当に清らかな者だ。童はそんなお前の力に成り得るなら本望だな。また会える」

「………」

「新しく会った童はお前が思う童ではないかもしれんが。それでも灯は身体の記憶だ。童は覚えているぞ。何せモルフォを救った恩人なのだからな」

「…っ……!」

「童を救ってくれるか?魔女よ」


そう微笑む女王に、私は涙を拭い微笑み返した。


「はい。喜んで」



その瞬間青い光が私の身体を包んだ






「魔女よ。お前の本当の……真名は何という?」




「___です」




「そうか。お前らしい……いや、お前らしくもない不思議な名だ」







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