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【 泡沫の蒼い蝶 】  作者: 灯閖 頼
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≪ ❷…Ⅴ ≫


「モルフォ様はこれからどうされるのですか?」


捕らえた魔術師と剣士に、記憶忘失の魔法を掛け…国の門付近に倒れさせておく。

一応死なせない為に防護の魔法も少し掛けておこうか、と考えているとホワルフ様が横からひょっこりと覗き込み聞いてくる。




「そうですね……正直私は行き当たりばったりな所がありまして。今回も何か足りないモノや目新しいモノを探しにこの国に来まして」

「なるほど……ではこの魔術師達の事もありますし、良ければ一緒にここを出ますか?隣やこの付近の小国は案内出来ますよ」

「本当ですか?それは凄く助かりますね」


そう微笑みつつ、本当は私のこの立場と環境からしたら一人の方が良いのだが…どうしてもホワルフ様と白狼様を直ぐに別れさせるのが私には出来なかった。


「では、この方達も一応誰かに見つかる迄は防護魔法を掛けたので行きましょうか」

「ええ、ここからだとエルフ達の貿易が盛んな小国が近くにあるので…そこだとゆっくり出来るかと思います。モルフォ様からしても珍しいモノが見られるかもしれませんよ!」

「有難う御座います。ではそこにしましょうか!ホワルフ様はそこでいいのですか?」

「はい。知人が匿ってくれるので、私も目的はそちらです」

「良かった。その小国の名前はなんと言うのですか?」

「はい。そこは貿易と医療に長けた国、ケーデリアンです」

「ケーデリアン…」


世界は広いものだ。これだけ長く生きた私でもまだまだ知らない国は多い。

と言っても、私が長く生きている間に国も変わり、無くなり、新たに生まれたものも数は知れず多い。

モルフォと契約した身でもあり、生死が関わる医療に関しても勉強するのも良いだろう。

何か発見があるかもしれない。

淡くもわくわくとした期待を宿し、私はホワルフ様と白狼様と狼銀聖を離れケーデリアンを目指した。



「モルフォ様は…本当に何でも出来るのですね……もう、魔法で片付けていいのか驚く程です!」


そう言って目を輝かせては不思議そうに、私の移動する浮遊魔法に驚いていた。

私は魔術を得意とした子等に私達の浮遊を手伝ってもらっていた。

ゼロ、ドイス、シンコが羽を大きくして私達の背中に触れ翼として浮かばせてくれる。

正直、子等の無限の可能性に私ですら驚いているが…女王曰く私の魔力量による進化なので、私が成長すればするほど出来る事は多いという。

そう思うと、子等とここまで一緒に成長出来ていると思うと嬉しい。




「国を出る道中は魔物やモンスターも居ますし、正直私の素性的に変な者に狙われる事も少なくないので空中での移動の方が何かと便利なんです」

「なるほど……空中だと生息してるモンスターも限られますし、視界が広いから直ぐ対応出来ますもんね」

「ええ」


私の言葉で直ぐにそこまで考察出来るとは、と次は私が驚いてしまった。

今まで、白狼様と夢を見る為色々な事を学び成長していたのだろう。

そういったものが窺えた思考だった。



「そういえば、白狼様も…モルフォ様の魔力のせいなんでしょうか?一回り大きくなったように感じます」

「そ、そうですね。私も思っていました…」


私とホワルフ様の後ろに付き添うように付いてくる白狼様は出会った頃よりも数倍大きく、白銀の毛色、金色の瞳は変わらなくとも体も倍大きくなり人が二人乗れる程、馬よりも大きい。爪は氷の様なベビーブルーのように綺麗で鋭いモノに変わり、尻尾は一つだったものが二つになっている。



『これは主の魔力量によって反映している。それだけ主の魔力が大きいという事だ』

「すごいです!モルフォ様!!」

『白狼ですら驚いている。本来契約者の数によって主人の魔力が分配される…それにも関わらず、白狼の魔力分配、蝶達への分配も前と変わってはいない。凄い主を持ったものだ』

「あ、あはは……」


苦笑いをしながらも、二人からは尊敬や驚きの眼差しで見られる。







私はただ、ただ。困っている人を助けたかっただけだ。

それにはどうすればいいか、どんな魔法が必要なのか、どう思考し、立ち回ればいいのか……

ただ、それだけを考えていたのだ。必死に。

死の魔法を属している私が、生き物の死を見たくなく助ける事に必死に生きている。

それを失敗を繰り返しながらも、続け…知らぬ間に世間や周りから高貴且つ尊敬の眼差しと称号を与えられた。

自分では未だにそんな存在に合っているのか、わかっていない。

三大魔女と呼ばれてはいても、私は特に異例だ…

他の三大魔女、カルビナは魔法攻撃に特化した魔術を攻撃として研究し極め様々な国からその魔術を学びたいと切望される方。オフィーリアは魔女としての魔法研究だけを好みありとあらゆる魔法、魔学、魔法薬を研究し生み出している方。

それに対して、私は死の魔法と契約を交わし魔女らしからぬ対価すら得ない…奇妙な魔女と、魔女の間では噂されている。

魔女ではない人や、精霊、種族からは私のような者は関わりやすい対象ではあるだろう。

それは最早、魔女ではなく勇者のような立ち回りだと、耳にする事がある。

正直間違ってはいないだろうと、私も思う。対価を得ず、ただ助けたいが為に魔法を使い、助ける為に魔法を考える。それは、魔女ではなくてもいいものだ。

私は……最初に師匠に告げた言葉のように”立派な魔女”になれているのかは、確信がずっと持てずにいる。

私が、私自身が……こんなの魔女ではないと、思っているんだもの。


魔女とは何なのだろう?

魔女の定義とは?

魔術が使える女性だから?それに長けているから?

今の私は、何者なんだろう。

何になりたいのだろう…






「見えてきましたよ!」


ホワルフ様の言葉にハッとして顔をあげる、人といるのに考え事とは失礼な……反省いしつつ、私は辺りを見回した。

そこには、雪はもう無く青々しい緑が豊かな小国が見えた。

狼銀聖のように防壁や門は厳重ではなく、本当に豊かを象徴としている街並みだった。

レンガの素材が多く、背の低い家や、塔のように長い建物も様々だ。

色々な色の旗が国を囲うように彩られ、これが我々の防壁だと言わんばかりの主張であった。


「賑やかで平和そうな国ですね」

「そうですね!本当に様々な国から貿易や医療を学ぶ為に集まっている国なので。他国からの信頼は厚いんです」


それは空から見ても、人の賑やかさが分かる程平和だった。



「凄く素敵ですね」

「本当に」

「空から見たら本当に此処は周りの立地も良いですね。すぐ傍には海に繋がる海岸も近いですし、農業を出来るだけの森や土地もあります。人が集まる訳です」


ホワルフ様の言葉に納得する程、周りの景色は壮大だが綺麗だ。

綺麗に青く光る海、海岸にも小さい村のような家が少しだがある。






そう、此処で”君”と出会ったよね。

この出会いは私にとって、とてもかけがえのないものだったよ。




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