≪ ❶…モルフォ蝶 ≫
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此処に記そう。
私の生き様とそれに関わった愛しくも可愛い我が子との思い出を。
あわよくば、これを見た君が私を思い出した時楽しい記憶であると願って。
君の糧になる為に、記そう。
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「魔女見習いと言えど誇りを持て。立派な新人になる事を祈っておるぞ」
私の師は90を超えたご老人だ。
だが、何ら不思議な事ではない……
魔女や魔術師、術師はその力を持って長寿であり私の師も90の姿はしていても見た目が年老いて見えるだけで体力や健康や身体の衰えはほぼ30の男性と変わらない。
私も見習いになって18を迎えたけど、魔女になって力を得れば…師と共に長く世界を見て回れるのだろう。そんな期待を胸に、私は魔女になる為に様々な試練や知恵を体験し得る為に旅に出る事になった。
雲の無い満月の夜。
師との暫しの別れに今も言葉を貰っている所だ。
「師匠から授かった言葉と知恵を力に必ず成果を出してきます!」
「お前はいつも前向きで明るいな___。」
「師匠…また私を子供扱いして、真名呼びは魔女にはだめなんですよー!」
「はっはっはっ!お前が新人になれば二つ名を得るだろう。二つ名が無いお前は私にとっては我が子も同然よ」
いつまでも子供扱いされる事に自然と頬が膨らむ。
そんな私に笑って頭を撫でる師匠は出会った頃から何も変わらない…
誰にでも朗らかで寛大で優しい。
そんな師匠を目指して此処まできた…やっと見習い。
師匠からの言葉の意味をちゃんと理解し、知恵を正しく使い師匠ならどう対応するか思考するか…師匠の背中を見て私は今此処まできた。
「師匠……必ず、師匠の力になれるような立派な魔女になって帰ります」
「ああ、楽しみにしているよ___」
そう言って笑った師匠と別れる。
それが、師匠との最後の会話だった。
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