四天王とやらにお会いしました。
随分前に書いていた「大魔王のお孫様!」を今回更新し始めました!
書き貯めがある分は更新していきます。
応援宜しくお願いします(∩´∀`)∩
数日後、各地に居るという魔王たちを集めての会食が行われるという連絡を受けた。
城に居る間、時期大魔王としての挨拶などの作法は受けていたが、やはり心の中では不安は渦巻いてしまう。
頼りになる相手もあまり居ない中、こう言う時は両親が恋しいと思ってしまうのも仕方が無いことだろう。
次期大魔王の相応しいドレスや宝石を身に纏い、ティアさんに案内されるがまま向かった部屋の扉を開けると、大魔王を含め五人の魔族が目に飛び込んできた。
魔王は東西南北の四箇所に存在する。
故に魔王といわれる方々は四人しかいないのだ。
大魔王よりもお年を召した方から、私とあまり年齢の変らない見た目の方、そろいも揃って私に一礼した。
「紹介しよう、次の大魔王となるワシの孫だ」
「お初に御目にかかりますお孫様」
「初めまして」
各々挨拶はしてくれるけれど笑顔は作り笑いなのが手に取るようにわかる。
歓迎はしていないのだ
そして一人だけ挨拶をしない魔王が居た。 その魔族は私とあまり年の変らない魔王だった。
「これ南の魔王、挨拶をせぬか」
「やなこった。 人間の血が入った次の大魔王なんか俺は認めない」
「南の魔王!」
「構いませんわ。 あなた方も歓迎してないのは手に取るようにわかりましてよ?」
そう言って微笑み席に着くと、他の魔王たちは咳払いしたり顔を背けた。
「反対に気に入らないとハッキリ言われたほうが幾分やりやすくもありますもの」
「大魔王の孫じゃなけりゃ殺してるところだからなぁ」
「南の!」
「だって考えても見ろよ。 大魔王の血族っていやぁ俺たち魔王を束ねる王だぜ? その次の大魔王が人間と血が流れてるって事は俺たちは人間交じりの大魔王をヨイショしなくちゃならなくなるってことだ。 俺は御免だね」
そう言ってムスくれる南の魔王に、大魔王は立ち上がり 「いまの言葉後悔すまいな?」 と口にした。
一触即発とはまさにこの事だろう。
私は出された紅茶を飲みながらその様子を伺うことにする。
「大魔王も孫可愛さに俺たちの事をないがしろにしてるんじゃねーのかよ」
「何故そう思う」
「人間との平和協定なんて今すぐ取っ払ってしまえばいいだろ! 俺たち魔族が人間を支配してるんだってな! はは! 人間なんて弱い生き物が俺たちにギャーギャー口出しできないように支配する! 最高じゃねーか!」
「これ、南のそれくらいにしなさい」
「大魔王のお陰で我々は各地を統治できているのだぞ」
「まぁ、それだと南の魔王さんは統治すら出来ない無能のような言いっぷりですね」
クスクス笑いながらそう告げると南の魔王は私を睨み付けてきたが、私は楽しそうに微笑んだ。
「ハッキリ言っておきましょうか? 無能な魔王はいりません、この場を機会に別の方を南の魔王にしたほうが余程マシのようですわね」
「なんだと!」
「まともな統治が出来ない魔王は必要ありませんから」
そう告げると南の魔王は机を叩き私を睨み付けて来る。
図星を指摘されて気に入らない……といった所だろうか。
実際軽く書類を見せてもらったところ、南の魔王軍は無能な輩が多いのは目に付いていたのだ。
一番人間と魔物の諍いが勃発するのが南に集中しているのも頷ける。
「軽く書類を見させてもらいましたけれど、南の軍勢は人間を乱暴したり半殺しにしたりと好き勝手なさっているようですね。 だとしたら尚更貴方のような魔王は必要ありませんわ」
「人間を支配している魔物が好き勝手して何が悪い!」
「南の!」
「平和協定を無視するやり方こそが、大魔王に楯突いている証拠だとわからない無能はいらないと申しているのです。 大魔王、いい加減この方にそれなりの処罰が必要ではありませんか? 私なら魔王の任を解いているところでしょう」
「確かに目に余るものがあるからなぁ……」
「ほらみろよ! 大魔王は孫の言いなりじゃねぇか!」
そう言って立ち上がり部屋を後にしようとした南の魔王だったが、大魔王が扉に魔法をかけて出られなくしてしまった。
驚く南の魔王に、大魔王は未だかつて無い怖い表情で南の魔王を見つめている。
「まぁ座りたまえ、色々話をせねばならんのだから。 平和協定を無視して好き勝手していることに対する処遇も決めねばならんのだしのう」
「くっ」
そう大魔王が口にすると、舌打ちしながら椅子に座りなおした南の魔王。
けれど私を睨み付けているのは致し方ない、私は笑顔を返した。
しかしこうして見てみると、北の魔王は威厳ある若い男性で、東の魔王はおっとりとした初老のお爺様。 西の魔王は私と目が合うたびに投げキッスしてくる女癖の悪そうな魔王。
中々個性豊かですこと。
そんな事を思いつつ出されたお酒を飲んでみると、とても美味しかった。
十六歳でお酒はちょっと……と思ったけれど、この世界ではお酒はジュースのような飲み物らしい。
味で言えばイチゴジュースのような甘い味がした。
「まぁ、このお酒とても美味しいわ」
「お褒めに預かり光栄です。 我が国で作られている物を献上いたしました」
そう言って微笑まれたのは北の魔王。
北ではこういった甘いお酒が主流なのだとか。
「お孫様が御気に召されたのでしたら、我が国から幾らでも献上いたしましょう」
「それでしたら我が国のお酒も楽しまれて下され。 甘いものは余りありませんゆえお口にあいますかどうか」
「俺のところの酒も堪能してもらいたいね」
「っは! 皆して魔族モドキをよいしょかよ」
「南の!」
「まぁ、いじけてらっしゃるの?」
そう笑顔で答えると、南のは顔を真っ赤にして机を強く叩いた。
暴力にでれば人間は屈すると思っているところが浅ましい。
「南の魔王の座から引きずり降ろされるのが余程気に入らないのでしょう?」
「俺はまだ引きずり降ろされてねぇ!」
「処遇は大魔王様や他の魔王様にお任せします。 ですが私が大魔王になった時、彼は魔王ではありませんことを覚えて置いて下さいね」
そう言って微笑むと、大魔王は頷き他の魔王たちも頭を下げた。
無論―――南のだけは除いてだが。
ある程度の会話も進み、私は部屋から退出することになったが、部屋から出ようとしたその時、ドアの上からギロチンが落ちてきた。
もう一歩前に出ていたら首が落ちていただろうが、こんな嫌がらせが出来るのは先ほどドアの近くに来た南のくらいだろう。
ざわめく魔王たちと、駆け寄る大魔王。
そして高々と笑う南のに、多少頭にきたけれど持っていた両手棍でなぎ払うと、鏡を割るようにギロチンは砕け散った。
「面白いプレゼントですわね」
「気に入ってもらえて光栄だぜ!」
「私のほうからもお返ししますわ」
そう言うと南の魔王の椅子は砕け散り、一気に押し潰していく。
悲鳴が聞こえるけれど最早そんな事を気にしている余裕も無いくらいに頭にきていたようだ。
「どちらの腕を潰して使えなくしてあげましょうか。 それともいっそ頭を潰して差し上げましょうか」
「やめろ! やめてくれ!!」
「お孫様!」
骨が軋む音と南の魔王の悲鳴が木霊す中、大魔王は 「やれやれ」 と口にして私の魔法を解いた。
途端グッタリと倒れこんだまま動かない南の魔王に、私はクスクスと笑った。
「あの程度の魔法で動けなくなるなんて情けない」
「くっ………」
「処遇は大魔王に任せます。 私は自室に戻りますわ」
「うむ。 ではこの件についても話し合おうかの」
「それでは皆さん、ごゆるりと」
そう言って自室に戻る際、部屋の前で勇者さんが待っていました。
先ほど私の魔力を感じて何か起きたのか気になったらしいので、一連の出来事を語ると頭を抱えていたようだ。
確かに魔王勢には歓迎されてないようだったが、先ほどの魔法である程度の私の魔力は理解してもらえただろう。
「魔王達にも歓迎されない、かといって人間世界で生きてもいけない。 お前は本当にこっちの世界に居て幸せなのか?」
「戻れるならもう元の世界へ戻ってます。 大魔王の我が侭さえなければ」
「………」
「今はまだ時が熟してないだけです。 気長に待ちます」
「で、俺は南の魔王を倒せばいいのか?」
ニヤリと笑みを零して聞いてきた勇者さんに私は一言だけ―――。
「今生きていればですけれどね」
そう返して自室へと入っていった。
その夜、大魔王が部屋にやってきて南の魔王は任を解いたと知らせてきた。
後任の魔王は変わり者だけれど人間の事が好きな魔族なのだとか。
いい方面へと進めばいいけれど、前任の魔王が好き勝手やっていた手前、やることは多そうだ。
暫くは大魔王も手助けをすると言う条件で決まったらしい。
「それで、元南の魔王はどうなったんです?」
「謀反を働いた罪で今牢に繋いである。 全く、孫ちゃんを殺そうとするなど……殺してやりたいところじゃが暫くは様子見かのう」
「普通のRPGなら殺されていて致し方ない事ですものね」
やはりこの爺、甘いんじゃないだろうか。
そう思いつつもその日は疲れたため早々に眠りについた翌日―――。
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