魔王軍の改革に力を入れてみようと思いました。
随分前に書いていた「大魔王のお孫様!」を今回更新し始めました!
書き貯めがある分は更新していきます。
応援宜しくお願いします(∩´∀`)∩
こうして始まった勇者さんとの生活。
食事こそは一緒にするけれど、特にお互いで話をすることも無く……と言うよりは、初日の手痛い辛辣な言葉と私の態度で、勇者さんが話しかけにくいだけかもしれないけれど、平和に過ごしている。
相変わらず一時間に一度のペースで大魔王は会いにくるし、最早慣れに近いと言って良いだろう。
そしてついに、念願だった巨大な図書室ができたとの連絡が入り、私と勇者さんと大魔王とで向かったのである。
扉を開けるとそこは優しい青で統一された部屋。
天井まで伸びる本棚に溢れんばかりの本たち。
私は歓喜の声を上げた。
「まぁ! なんて素晴らしいの!」
「喜んでくれたかね!」
「勿論です!」
「この本の半分は、勇者が寄贈してくれたのだよ!」
その言葉に一瞬止まりはしたものの、勇者さんの手を握り 「ありがとう御座います!」 と感謝した。
今までの本といえば魔族の本ばかりで、人間の生活と言うものに興味があったからだ。
人間たちが読む書物とはなかなかここでは貴重なもので、読んでみたいと大魔王に言っていたのである。
「絵本もあるのね! プリャが喜ぶわ!」
「シリーズ物は新しいのが出たら直ぐに取り寄せるようにしてある。 好きなだけ読むがいい」
「好きなだけ読ませてもらいます。 この城に居る間は暇で本を読むくらいの娯楽しかありませんから」
「娯楽が少ないかね?」
「少ないです。 たまに訓練場を見に行って発散はしてますけれどね」
「「訓練場!?」」
「あら、言って無かったです? 中々素晴らしい稽古の姿を見ることができますよ」
そう言ってどの本を読もうか選んでいると―――。
「そう言えば勇者はどうやって稽古しているのだね?」
「俺の場合は実戦だ。 むやみやたらに暴れまわる魔物もまだ多いからな」
「そんな小さな身体で戦えるの?」
「小さいは余計だ。 仮にも勇者だぞ」
そう言って腕を組んで不機嫌になる勇者さん。
か細い身体で勇者だと言っても無理があるのではないだろうかと心配したのだが、本人が実戦で鍛えているというのなら本当なのだろう。
そう思うと、実戦で戦っている人間たちと比べ、魔物軍勢は訓練場だけと言うのは、些か問題があるように思えた。
人間を倒すわけにはいかないが、何かしら取り入れたほうがいいだろう。
今尚、平和になったこの世界に不満を持つ魔物が多数居るのだから、それらを討伐する遠征も考えたほうがいいかもしれない。
そんな事を考えつつプリャへの絵本と、私用に一冊の本を取ると、私たちは各自自室に戻ったわけだけれど―――魔物のほうも内側と外側で強化していくことが一番無難のような気もしてくる。
平和ボケと言うわけではないが、魔物のほうが血の気が多い者が多いだろうし、何かしらの対策を練ったほうが良いだろうと考えていた。
「御本をお読みにならないので?」
「ええ、少し考え事をしていて……人間側は実戦で経験を積んでいるのに、魔物側は訓練だけでいいのかと」
「確かに実戦に勝るものはありませんね」
「そうなのよ……平和協定が結ばれているとしても魔物側も強化していかなくてはならないわ。 未だに平和になった世界に不満を持っている魔物の討伐なんかも考えているのだけれど……」
そう言って溜息を吐くと、ティアさんは 「まさに大魔王様のようです!」 と目を輝かせた。
今の大魔王は何をしているのかと言う話にもなるが、確かにこの辺りは修正していかねばならない事案だろう。
早急に何かの対策をしなくてしなくてはならない。
そう思い、ティアさんと一緒に大魔王の部屋まで向かうと、書類の山に囲まれた大魔王の姿が見えた。
どうやら執務中らしい。
しかし手を止めて私の考えを告げると、大魔王は 「うーむ」 と口にしてペンを置いた。
「確かに実戦に勝るものは無いのう………」
「今の状態で内側、そして外側から例え平和協定を結んでいたとしても攻撃されたときに一発でアウトですよ」
「しかしだなぁ……」
「真っ先に私が殺されるでしょうけどね」
「何故だい!?」
そんな事も分からないのか爺。
そう思ったが溜息を吐いて理由を説明した。
そもそも魔王側とて私の事を良く思ってないのは既に把握済み、混乱に乗じて命を奪うことも可能だろうし、その罪を人間に擦り付けることも可能だろう。
また人間側もその難癖をいい口実に魔物軍勢と戦う理由ができるだろう。
それらを考えても私が一番殺される率が高く、それが原因で戦争が更に悪化する可能性もあるのだと説明すると、大魔王は暫く無言だったけれど、両手を組んで私を見つめてきた。
「どうお考えになります?」
「……そうだね、やはり実戦は取り入れたほうが良さそうだ」
「しかし城を守る兵士も必要」
「そうなる……その為二つに分けて一つは人間を脅かす魔物の討伐に、もう一つは城を守る為にと言うのはどうだろうか」
「それが一番だと思います。 他の魔王軍も同じようにしてくださるのならですが」
「そこはワシから連絡を入れていこう。 近々孫ちゃんへの挨拶に各魔王城から魔王たちが集まってくるはずじゃからのう」
「まぁ、恐ろしい」
そう言ってクスクスと笑うと大魔王はキョトンとした表情をした後、笑い出した。
「肝が据わってるねぇ孫ちゃん!」
「良い方向に思われていないことだけは私にも伝わっています。 どんな嫌がらせが来るか今から楽しみですね」
「大魔王の孫に楯突く者等早々おらんよ!」
「そうだといいのですけれどね」
そう言うと、私は執務の邪魔にならぬよう帰ると伝えて自室へと戻った。
プリャは前に借りてきていた絵本に夢中だったし問題は無いだろう。
しかし各国の魔王が私に会いに来るというのは以外だった。
影でどう思われているのかは、魔物たちの噂話を聞けば直ぐにわかったからだ。
しかし―――そこそこ長くこの世界にいれば、いずれはぶち当たる問題だった為、早くに決着なりつけばそれに越したことは無い。
「まるで大魔王の血族と言うだけで呪いのようですね」
「そんな事はありません! お孫様の存在はとても尊いものです!」
「そうでしょうか?」
そう疑問に思いつつ答えると、ティアさん曰く大魔王の孫と言うのを除いても私と言うのは尊い存在なのだという。
今の大魔王こそ例外であり、前の大魔王の時代では祖父である大魔王と会うことすらできなかったのだとか。
「会えば目を潰されるのだと皆さん恐れていたのです。 ですが現大魔王様の時代になりその恐ろしい話はなくなりました。 それも大魔王様が気さくな故に起きた奇跡です」
「………」
「無論、跡目を継ぐはずだったお孫様のお父様が行方知れずになった時、魔物たちは皆人間を疑い戦争をしようと奮起しましたが、それを治めたのも大魔王さまなのです! 確かに息子は人間と駆け落ちしたが必ず孫を連れて帰ってくると皆を説得したのです」
「で、帰ってこなかったから私が召還されたと」
「そうなります……ね」
そう答えるティアさんは苦笑いをしていたけれど、私としてもそんな事をやってのけていた大魔王に感謝せねばならない。
確かに自由な恋愛ができないこと以外では、何不自由ない生活をさせてもらっているのだから。
とは言え、人間世界にも魔物の世界にも、未だに町の散策へのOKは貰えてない訳だけれど……。
「でも籠の鳥は私にはあわないわ」
「いま辛抱なさって下さい。 きっと何かが変ってくれると思います」
「ティアさんがそう仰るのでしたら待ちましょうか」
そう言って苦笑いすると、ティアさんは申し訳なさそうに頭を下げた。
私としても何故籠の鳥で居るのか検討はついている。
大魔王が私を独占したいのと―――人間の血が入っているが為、魔物の血が入っている為、どちらの世界で町を散策しても危険だと判断したのだろう。
髪の毛一つ一つにすら流れるといわれている魔力では、人間の世界で買い物もできないだろうし、魔物の世界にいっても混乱を招くだけだろう。
となると―――自然と一緒についてく魔物が必要になっていくが……相手が見つからないという事だ。
これは困った。
とは言ってもどうすることも出来ない現状もあるのだから、今は我慢の時期だろう。
元々気が長いタイプだからこそ耐えられるものだと割り切ると、私は借りてきた人間用の本を読み始めた。
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