ブチキレました。
随分前に書いていた「大魔王のお孫様!」を今回更新し始めました!
書き貯めがある分は更新していきます。
応援宜しくお願いします(∩´∀`)∩
プリャと生活するようになって一週間が経過した。
最初は何に対しても驚き上手く動けないプリャだったが、一週間も経過するとそれなりに動けるようになり、スプーンの持ち方も綺麗になった。
食事は必ずプリャと一緒に食べるようにしているし、プリャも私と一緒にいると安心できる様だ。
それだけでこんなに嬉しいことはない。
年の離れた妹のような、可愛いペットのような感覚は今も混在していて不思議な気持ちにもなるが、これだけ可愛いのだからそれも全て飲み込まれてしまう。
今日はプリャを連れて未だに行った事のない城の中を探索してみようと思うのだが、その場所と言うのがティアさんが渋っている場所の一つでもある。
王室魔族専用騎士団訓練場。
高い塀で囲まれ中を見ることもできないが、スポーツ観戦が好きな私としては行ってみたい場所の一つだった。
「大魔王様の許可を頂かねばなんともいえません。 訓練場はとても危険な場所ですし……」
「そう……困ったわね」
そう、困ったのだ。
実は大魔王が昨日から出張だといってシドラー王国に行っているのである。
こう言う時に空気読まねぇな爺……なんて思いつつも、それならと切り出す。
「分かったわ、ティアさんは見なかったことにして私とプリャとで行って来るわ」
「なりません! それでしたら処分されるのを覚悟して私もついて参ります!」
「安心なさって? 私が二人をお守りするわ」
「ほわあっ」
「お孫さまっ!」
「ふふっ」
頬を真っ赤に染める二人に笑いかけると、ティアさんの案内で訓練場に向かうことができた。
大きな扉を開ければその先は王室専属の魔物騎士団が訓練をしている……そう思うだけで胸が高鳴りそうだ。
扉の前に備え付けられている小さな魔法陣にティアさんが手をつけると、そこから訓練場からの声が聞こえてきた。
「はーい! もしもし~?」
「初めまして、私は大魔王様のお孫様専属の侍女ティアと申します。 ただ今此方にお孫様がお越しになっており、中を見学したいとの事なのですが」
その言葉に扉の向こうは一瞬静まり返った。
そして間を置いた後にバタバタと走り回る音が聞こえ、魔法陣からもノイズが聞こえてくる程である。
三分待っただろうか?
大きな門はゆっくりと開かれ、その前には整列した騎士団の魔物たちが立っていた。
「大魔王様のお孫様に祝福あれ!」
「「「祝福あれ!」」」」
そう言って剣を掲げる魔物たちに、私は微笑を絶やさず前に出た。
嫌と言うほど感じることができる彼らの緊張……だらけて訓練をしていた訳でもなく、純粋に私を迎えるという行動の為に三分を使ったのだろう。
プリャは驚いた様子で私の手にしがみつき、恐る恐る歩いているようだ。
「皆さん、突然の訪問にさぞや驚いたことでしょう。 ごめんなさいね?」
「ようこそ御出でくださいました!」
「「「ようこそ御出でくださいました!」」」
「あなた方でいう異世界、私がもといた世界ではこういった訓練をしている姿を見るのがとても好きだったの。 見学させていただいて宜しいかしら?」
「はい喜んで!」
「「「はい喜んで!」」」
「何時もどおりの訓練を見せていただければ嬉しいわ」
そう言って微笑むと、魔物たちが頬を染めて震えているのが分かる。
その姿がまた面白い。
一人の騎士が私に歩み寄り膝をついて頭を下げると、安全な場所まで案内してくれるという。
その言葉に従い向かった先は、訓練を一望できる二階にある展望台だった。
「戦争が終わった今、戦争のための訓練はしておりません。 しかし何時何時動けるように我々は大魔王様をお守りする為に日夜訓練に励んでおります」
「ええ、それはティアさんからお聞きしました。 とても過酷な訓練もなさっているのですね」
「怪我の一つや二つはなんてことは無い掠り傷です。 我々は大魔王様だけでなく、お孫様をもお守りする役目があるのだと各々自覚しております」
「そう……」
「プリャの事も守ってもらえますか?」
そう私に隠れながら口にするプリャに、騎士団は頭を下げて 「勿論です」 と答えた。
ここ一週間の間に、プリャと言う魔物は私の専属の魔物だと城中に行き渡ったようだ。
その手引きをしたのはティアさんであり大魔王でもある。
最初は反対する魔物もいたようだが、私のためだと理解するのは皆さん早かったようだ。
「それで、騎士団長さんでしたかしら?」
「はい」
「私からの我が侭ですけど、これからも此方に訪れては訓練の様子をみさせていただいても宜しいかしら?」
その言葉に騎士団長は驚いた様子で 「しかし、面白くないのでは?」 と口にした。
面白い、面白くないと聞かれれば面白い部類に入るのだ。
元々ゲームの世界ではプレイヤー同士の一騎打ちを観戦するのだって好きだったのだから、この様子が楽しいに決まっている。
「とても楽しいですわ! 皆さんが励んでいる姿はとても男らしく逞しく素敵です」
「お孫様! 少しはしたなく思いますが」
「まぁ、はしたないだなんて。 この様に私や大魔王を守る為に日夜頑張っている騎士団たちの姿を見ることは、とても重要なことだと思います。 確かに先ほどの言葉だけでは語弊がありますけれど、この大魔王城を守る為に有事の際には第一線に出て戦う方々です。 私は彼らの姿を目に焼き付けたいと思います」
「お孫様……なんと美しいお心の持ち主でしょう……」
感動して涙を流す騎士団長に、私は持っていたハンカチを取り出し手渡した。
それに対してもティアさんは驚いた様子だったし、騎士団長も驚いた様子だったが―――。
「貴方の涙も美しいですよ」
「!」
「大魔王の為に、そして私の為に、そしてこの世界の為にあなた方の力は必要です。 平和の為に必要なのです。 ですがこれだけは約束していただきたいことがあります」
「はいっ」
「決して無理だけはなさらぬよう。 あなた方騎士団にも家族がいるでしょう……無理をしたいとそれでも言うのなら、私の為を想って無理をなさらぬよう皆さんにお願いしたいのです」
「お孫様っ」
「それだけあなた方はとても大事な存在なのですから。 無論それだけの器を私は貴方がた騎士団に求めます。 清く正しく紳士的に日々お願いしますね」
そう言って微笑みつつ持っていたハンカチで騎士団長の涙を拭うと、騎士団長は深く頭を下げた。
―――解った、という事だろう。
その後二階の展望台からゆっくりと観戦して、気が済むまで熱気を楽しんだ後に自室へと帰る頃、騎士団長はその日私から言われた言葉を皆に伝え、更なるお孫様ファンが出来てしまったのである。
その話は魔法騎士団にも伝わり、どうやればお孫様に来ていただけるかと話し合いが行われていた事は露知らず―――翌日大魔王が早朝五時に私の部屋を開けて入ってきたので魔法で重圧をかけて潰しておいた。
早朝五時、まだ眠たい時間である。
不機嫌なため力加減は難しかったが、多少強くしすぎた感は否めない。
が、この大魔王元気である。
何より驚くのは、プリャが騒音では起きないほど熟睡型という事である。
「大魔王……朝早くからなんの御用です」
「うぐっ……うむ……今日から……勇者が一緒に暮らすことにっ」
「はぁ!?」
一気に覚醒、眠気も吹っ飛ぶ。
重力魔法を解きパジャマまま大魔王の元へ駆け寄ると、大魔王は息切れを起こしながらソファーに座った。
何でも、昨日呼び出されたのは勇者が私を気に入りすぎて一日でも早く一緒に住みたいと言い出したからだとか。
大魔王は 「まだ二人は一度しか会ってないから」 と言葉を濁したようだが、あの勇者はそれを 論破して今日引っ越してくるのだという。
あまりのショックで私はふらつき、ソファーにもたれ掛かった………。
あの勇者と今日から一緒に住む!?
ここは地獄か!
いや、異世界であり大魔王城ではあるけど地獄か!!
「寝室は………勿論別々ですよね」
「そこはワシが論破した!」
「私が勇者との婚姻を嫌がっているのは、解っているでしょう?」
そう怒りを込めた言葉を吐くと、私の使っている両手棍と大魔王の持っている両手杖から炎が噴出した。
慌てふためく大魔王、だがそんな事気にしている余裕は無い。
「それなのに一緒に住む?」
「孫ちゃん落ち着いて!」
「落ち着いていられるほどの余裕は……無いんですよ!!」
そう叫んだ後、晴れやかな朝だったのが一遍して薄暗い雲が上がり雷鳴が轟いた。
大魔王はクッションを抱きかかえ悲鳴を上げている。
「毎朝あの俺様を見る日々なんて耐えられません!」
「孫ちゃん落ちついて!!」
「将来有望!? 性格を整形手術してから出直して来い!」
ピカ――――ゴロゴロゴロ!!
荒れに荒れる外を他所に怒りを露にしていると、ティアさんが慌てて部屋に入ってきて私を見るなり悲鳴を上げて物陰に隠れた。
それほどまでに自分は怒っているのだ。
しかし、不意にその怒りは収まった。
「そうだ、死のう」
「落ち着いて孫ちゃん!!」
「お孫様落ち着いてください!!」
慌てふためく二人、ベッドの上で熟睡中のペット。
なんかもう本当に何でもどうにでも良くなった。
生きていることすら虚しい。
倒れた私を大魔王がベッドに眠らせ、医師を呼んでいる声すらもうどうでもいい。
そう想っていると目の前が真っ暗になって気を失ってしまった。
そして気がつけば夜だった。
隣では泣いたのか晴れ上がった目のまま眠っているプリャが寝息を立てている。
そして―――。
「孫ちゃん気がついた!? どこもなんとも無い!?」
「大魔王………」
ベッドの脇には大魔王が座っていたのだろう、私が意識を取り戻すと立ち上がり顔を覗き込んできた。
結局勇者はどうなったのか聞こうとしたその時―――扉が開き現れたのは勇者さんだった。
悲しそうな表情で歩み寄ると、私のベッド脇に立ってジッと見つめてくる。
そして………。
「そんなにイヤだったのか?」
「え?」
「そんなに俺と一緒に住むのがイヤだったのか?」
「イヤでした」
「孫ちゃん!」
歯に布着せぬ即答で答えた。
すると大きな瞳に涙を溜めて震えているのが解る。
だが本心なのだから隠しようが無いし隠す必要も無い。
そう思い勇者の次の発言を待つべくじっと見つめておいた。
「俺はっ 俺は一緒に住むのが楽しみだった!」
「………」
「俺はそれだけお前に惚れたんだ! 俺の気持ちが何で届かない!」
「貴方の性格が好みじゃないからです」
「ちょ! 孫ちゃん!!」
上半身を起こし勇者さんを見つめながらそう告げると、勇者さんは乱暴に目元を拭った。
ウソをついたまま結婚するのはお互い辛いだろうし、私は隠し事をしながら生きるのは無理な性格ゆえにハッキリと答えておいた。
「私は父のようなおっとりとした優しい男性が好みなんです」
「俺に優しさがないとでも!?」
「一度しか会ったことの無い相手にそこまで知る情報量はないと思います」
「………」
「ですが、今更シドラー王国にも戻れないでしょうから、まずはお友達から始めて下さい。 私たちはまだ友達ですらありません」
そう告げると両目を見開いて私を見つめる勇者さんに、何とか何時もどおりの笑顔を向けることができた。
それでも―――苦笑いと言うべきだろう。
「恋愛は二人でするものです。 一人じゃ片思いの一方通行ですよ」
「………努力する」
「では私はもう少し眠らせてもらいます。 魔力を使った分少し疲れたようですし」
「分かった………」
「大魔王様もお休みになって下さい。 私も少し消化にいいものを食べたら休みます」
「うむ、うむ!」
そう言って二人が出て行くと同時にプリャの目が覚め、私に飛びついて泣き叫んだ。
よほど心配をしたようだ………可哀想なことをしたと想い、今日は夕飯後にちょっとしたデザートを頼むことにした。
それをティアさんも含め三人で食べた次の日から、私と勇者さんとの生活が始まることになる。
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