気が済むまで搾取してやろうと決めました。
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王室魔族専用騎士団と王室魔族魔法騎士団が南の魔王城へと出て三日後。
そう、三日もの間……勇者さんと大魔王は毎日ファンクラブを作るのに反対だと抗議してらっしゃいましたが、ティアさんの協力のもと公式ファンクラブを作った。
実に会員数……5千700人以上。
お城で働いている人は勿論、城周辺に住んでいる末端の騎士や魔法使いにまで会員は増えていた。
まぁ一部は私に会うこともできないのだから見てみたいと言ったところだろう。
中々の数字に満足していると、ノックもせず勇者さんが部屋に入ってきた。
「嫁!!」
「なんでしょう」
「俺はお前を守る為ならなんでもする男だと証明することができる」
「まぁ、強気ですわね」
「これをみても呑気でいられるかな!」
そう言って鞄から取り出した光るナニカ。
それは―――私の公式ファンクラブ1番を持っていた。
驚きは一瞬したけれど、コイツ嫁と言う割にはストーカー気質でもあるんじゃなかろうかと推測してしまった。
「どうだ! 俺がお前の一番だ!」
「一番ねぇ………0番はどなたでしょう」
「0……なんてあるのか?」
「知らなかったのです?」
そう言って微笑むと、今度はノックをせず大魔王が入ってきた。
「孫ちゃんよ!」
「なんでしょう」
「ワシは孫ちゃんの為ならなんでもするお爺ちゃんだと証明することができる!」
「まぁ凄い、大魔王は何番だったんです?」
「0番じゃ!!」
「クッ」
その取り出したるカードの前に膝から崩れ落ちる勇者さん。
そして崩れ落ちた勇者さんを前に大魔王らしく笑う祖父。
嗚呼、この人たち掌で転がされてて可哀想なんて思ったりしない。
―――気が済むまで搾取してやろうと決めた。
まぁそんな事を思っているなんて、目の前で繰り広げられる大魔王と勇者の最後の戦い風景みたいなものをみつめながら考えているのだから、私も中々性質が悪い。
「二人とも0番と1番を取られて凄いですね」
「だが俺のほうが愛情は強い!」
「何を言う! ワシの孫ちゃんへ対する愛情は計り知れない強さなのだよ!」
「減らず口を! 俺と嫁が結婚すれば俺の遺伝子を受け継ぐ子が生まれる! つまり俺なくして嫁の未来はない!」
「キイイイイイイ!!」
「大魔王、貴方が勇者と結婚して世界を平和にしてくれと頼んだのです。 今更その程度の事で何を癇癪まわしているんです?」
「それとこれとは別!」
「「別じゃない」」
私と勇者さんのツッコミに大魔王は膝から崩れ落ちた、ザマァ。
まぁ、私としても勇者さんと結婚する気はサラサラ無い訳ですが。
見た目の幼い、しかも俺様気質の男性の嫁になるなんて想像すらしたくも無い。
そんな事を思いつつ二人のやり取りをみていると―――。
「でも一番お孫しゃまをみてるのはティアさんとプリャだよ?」
「それは同性と言う観点からいっても仕方ないことだろ!!」
「異性は四六時中一緒に居られないのだよ!」
「お仕事いっぱい?」
「「お仕事いっぱい!!」」
プリャの素朴な質問に二人は同時に返事を返した。
確かに大魔王はやることは沢山あるだろうし、勇者さんもシドラー王国に戻ったり勇者としての責務があるのだろう。 あまり城ですれ違うことはない。
それ故に少しだけ心の安息は保たれているといって過言ではないだろう。
四六時中俺様気質の勇者と一緒に居るなんて……考えただけでもゾッとする。
なんとしてもこの世界から脱出するか、もしくは父が迎えに来てくれることを祈るばかりだ。
「それにしても、公式ファンクラブなんて作ってこの先どうするのだね?」
「俺も気になっていた、どうするつもりなんだ?」
「簡単な事です。 私の私的なお金を大魔王城や勇者さんから出してもらうわけにもうきませんので、そこから使おうかと思います」
「「何故!」」
「何故? 当たり前でしょう? 大魔王は私が外に出るのを禁じてますし、私は視野を広げるべく金銭面の頼りをなしにそこに使います。 そして勇者さんは自分が出せばいいと言う考えでしょうが、彼方のそのお金だってシドラー王国の血税でしょう」
「くっ」
「孫ちゃんのためを思ってのことなのだよ!」
「私の為だというのなら、籠の鳥から解放なさい! 私はこの世界を見る義務があります」
その言葉に大魔王は言葉を探したものの見つからず、勇者さんは頭を抱えた。
でも実際そうなのだから致し方ない所はあるだろう。
それに私だって欲しいものは気にせず自分で得た金で買いたいし、色々世界を見て回っても罰は当たらないだろうと判断したからだ。
しかし―――。
「俺無しで外の世界に行き、好きな男が出来たらどうする!!」
「まぁ! それはとても素敵なことですね!」
「孫ちゃん! 孫ちゃんには世界の平和の秩序を守る責務があるのだよ!」
「初恋ってどんな感じかしら~」
「嫁!! 俺と言うものが居ながら浮気するつもりか!」
「そんな火遊びお爺ちゃん許さないんだから!」
「あはははは!! 外の世界がどんなものか楽しみですねぇ!」
そう声を高々に笑うと、二人は何とか外の世界で異性の出会いを阻止せねばと語り合っていたようだけれど、私の知るこの世界の人間といえば勇者さんくらい。
他の男性だってみてみたいもの。
父のような大らかで優しくて素敵な男性はいるかしら。
そう思うと頬が赤くなった。
「新しい恋を探している!?」
「俺じゃ不満だというのか!!」
「世界平和が! 世界の秩序が崩れてしまう!!」
「クッ! どうすれば嫁の心を俺に繋ぎとめることができるんだ!!」
そんな外野の声なんて気にもせず、脳裏に浮かぶのは優しい父の姿………。
背は高く、顔立ちもイケメンで、決して驕らず、自分を律しつつも背中で語るタイプの男性………。
「嗚呼………お父さんに会いたいわ」
「親父かよ!」
「息子めええええ!!!」
そんな声を無視して私は二人を追い出し、父との思い出に浸った。
やはり此処には求める男性が居ない。
確かに世界平和のためには勇者と結婚せねばならないだろう。
しかし―――初恋くらいはしてみたいのだ。
「素敵な男性が現れるといいわねぇ」
そんな事を口にしながらプリャの毛並みを堪能した数日後―――。
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