ファンクラブを公式にしてみました。
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この城には 「王室魔族専用騎士団」 と 「王室魔族魔法騎士団」 が存在する。
想像に難くないだろうが、この両者は仲が悪い。
騎士団は魔法騎士団を護衛と呼び、魔法騎士団もまた騎士団を護衛と呼ぶほど仲が悪いのだ。
私からしてみれば、騎士団だけでは倒せない敵もいれば魔法騎士団だけでは倒せない敵も居るのだから、両者いがみ合う暇は無いだろうとツッコミを入れたい所だが、実際本当に仲が悪いのだから致し方ないことだろう。
解り合えない脳みそと割り切ってもいいくらいだ。
しかし、前南の魔王の後始末はキッチリとやらねばならない為、ここは一旦協力してもらうしか他無いだろう。
現南の魔王から届いた沢山の高級なフルーツ及び、大魔王の孫主催として両者を送り出すパーティーを開くことになった本日。
国を守る二大勢力といっていい騎士団の前に出るに恥じない装いでスタートしたパーティーだが、やはりピリピリとした両者の空気は変ることはない。
私の隣に座る大魔王も 「やれやれ」 と、ぼやくほどである。
そんな中、平然としているのは勇者さんくらいだろう。 彼の希望で一緒にパーティーに出たが、この緊張感漂うパーティーは久々だと楽しんでいるようでもあった。
「王室騎士団と魔法騎士団の仲の悪さはどこの世界でも一緒だな」
「人間の世界でも同じなのですね~」
「当たり前だ、分かり合える脳みそをしていない」
そう言って北の魔王から頂いたお酒を飲む勇者さんに、私は目の前に広がるピリッとした空気に溜息を吐いていた。
確かに後衛と前衛では脳みその作りが違うのは、ゲームをしていても感じられることではあった。
実際ネットゲームなんかになるとそこは露骨に現れてくる。
私は後衛が主ではあったが、前衛のあのノリにはついていけない。
また後衛は頭を使う職だというのに、前衛はボタン連打で済む職業なのだから解り合えないのは仕方ないことではあった。
ヘマをすれば後衛の責任。
それは致し方ないが、そこをカバーするのが前衛の仕事だろうと暴言を吐きたくなることもしばしばあったのを思い出す。
大きく溜息を吐いて背もたれに寄りかかると、王室騎士団隊長さんが駆けつけてきた。
「如何なさいましたお孫様!」
「あなた方の空気の悪さに気分が悪いだけです」
「申し訳ありません。 魔法騎士団とは今日くらいは仲良くするようにと伝えていたのですが………」
「それは聞き捨てなりませんなぁ」
「む!」
騎士団長の言葉に今度は魔法騎士団長の団長さんが私の元へとやってきた。
「魔法騎士団としても騎士団とは今日くらいは問題を起こさぬようにと通達しておいたのです。 それらを破ったのはそちらでしょう」
「何を言う!」
「これ、お前たちワシの前で喧嘩はするでない」
「「しかし!!」」
確かにこれは根が深そうだ………こんな状態で南の魔王の軍勢の襟元を正すことが出来るとは思えない。
お互いに睨み合う騎士団長に私が溜息を吐いていると、勇者さんは笑いながら歩み寄ってきた。
「ははは! なかなか滑稽だな!」
「勇者さん」
「人間のようにまとまる事も出来ないのか? 此処の大魔王の騎士団たちは」
そう声を高々に発言した勇者さんに、会場の中は静まり返った。
「幾ら平和協定が結ばれているといっても、書類とただの約束に過ぎん。 それをお前たちは理解していないのかと思うと滑稽で腹を抱えて笑いたくなるな!」
「おのれ勇者!! 我々を侮辱するとは!」
「全く持ってその通りですわ勇者さん」
「お孫様!」
騎士団長が剣を抜こうとし、魔法騎士団長が両手杖を構えた時、私がクスクス笑いながら勇者さんに同意すると、他の皆も私たちに注目したようだ。
「人間達は実戦で力をつけてイザと言う時に動けるようにしているというのに、魔物のほうがこの体たらくでは先が思いやられますね」
「しかしお孫様!」
「話の途中ですよ」
そう言葉を紡ぐと両騎士団は頭を下げた。
「双方の騎士団には私を守っていただかねばならないのに、私を守る気がないとしか見受けられませんね」
「その様なことは決してありません!」
「その通りです! その様なことは決して、命に代えてもありえません!」
「それでは何です? この有様は。 双方がいがみ合い連携すら取れないこの有様は」
立ち上がりそう口にすると、全員が膝をつき頭を垂れた。
「皆さん、私が言いたい言葉は理解できますね?」
そう告げると全員が声を揃えて部屋が揺れるほどの返事が返ってきた。
「前南の魔王がしでかした内容は皆さんに報告が行っているはずです。 そしてあなた方が何をすべきかも」
威勢のいい返事が返ってくると気分がいい。
だがそこに酔いしれるほど今は平和ではないのだ。
「今はいがみ合う暇はありません! 私の為に死力を尽くしなさい! 人間に侮辱されたのが悔しいのなら高みを目指してみなさい! 私と大魔王の為に今ここで再度忠誠を!」
そう告げると全員が立ち上がり各々武器を手に掲げた。
なんとも気持ちがいい光景だ。
そしてそれらを纏めた私に大魔王と勇者さんは驚いた様子で私を見つめている。
「孫ちゃん凄い……気後れして出来ないと思ってたのに」
「まぁ、この程度の事で気後れなんてしませんよ。 私の為にも動いてもらわなくてはならないのですから」
「相変わらず肝が据わってる。 半分異世界の人間の血が流れてるとは思えないな」
「お褒めの言葉として受け取りますわ」
そう言って微笑むと、双方の騎士団長は私に駆け寄り頭を垂れて跪いた。
「我らがお孫様に敬意を!」
「敬意を!」
「敬意を示すのならまずは騎士団長二人がある程度分かりあう必要があるでしょう。 そうですね、この前南の魔王がやらかした問題を片付けた暁にはあなた方に一つ名誉ある立場を用意しましょう」
「名誉ある立場とは」
「私の親衛隊隊長の任を二人に与えようと思います。 私を守る直属の部下といえば宜しいかしら?」
この言葉に大魔王を含め双方の騎士団長は目を見開いた。
「大魔王を守ること以外に増える負担は大きいでしょう。 しかし、次期大魔王の私の為に動くこともそう悪くは無いでしょう?」
そう言って微笑むと二人は顔を真っ赤に染めて頭を垂れた。
「本当に……お孫様の親衛隊長となって宜しいのでしょうか!」
「我々のような者がその様な恐れ多い立場になってよいのでしょうか!」
「双方の騎士団長が私の親衛隊長になるのであれば、私の守りは強固なるものになると思っているのですけれど?」
「勿体無きお言葉!」
「けれど、今回の任が本当に達成できたらの話です。 無論他の部下の為にも一つ用意していることもありますよ?」
そう口にすると、全員が静まり返り跪いて頭を垂れた。
「色々お聞きした結果、どうやら私のファンクラブなるものが存在するようですわね」
「なんじゃと!!」
「俺はそれは初耳だぞ!」
「ええ、そこで公式にファンクラブとすれば月額お金は多少取りますけど月に一回、もしくは数ヶ月に一回はこういった場を設けようと思います。 場合のよっては先着順に私と一緒に二人で写真を撮るというイベントなんてどうかしら?」
その一言に会場はざわめき、皆が頬を染めている様子が見て取れる。
「皆さんにとっても悪い話ではないでしょう?」
そう言って微笑むと、扉や窓が揺れんばかりに歓声が沸きあがった。
そして隣に居る二人は顔面蒼白となった。
「今回の任務を完璧にこなした暁には―――と言うのをお忘れなく。 双方協力し合い今回の任務に当たって下さい。 宜しいですね?」
「「「「お孫様の為に!!」」」」
そう割れんばかりの声に私が微笑むと、空気は一変して双方が仲良くなった。
そうとなれば現南の魔王から頂いた果物を堪能できるというもの………。
どれもこれも瑞々しく、元居た世界では味わえない美味しいフルーツを堪能した。
が、しかし―――。
「俺の嫁がそんな見世物のようになるのは嫌だ!」
「ワシも嫌!」
「私としてはお金が入ってきて皆がまとまるならそれで良いです」
「孫ちゃん!」
「嫁!!」
「寧ろ纏め上げた私に感謝していただきたいところですけど?」
そう言ってパーティーが終わるまでの間、なんとかファンクラブを作るのを諦めさせようとした勇者さんと大魔王がいたのは―――無視した私がいたのだった。
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