4
驚いたどうやらヘロンはこの都市の商業ギルドのマスターだったらしい。確かにただものではないだろうなとは思ってはいたが、思ったよりも大物だった。それに苗字持ちとなると貴族であるってことになるぞ、もう聞きたいことが多すぎてどれから聞いていいのかわからなくなってきた。
「その顔から察するに聞きたいことが山ほどありそうですがここいろいろと人もいますので迷惑になってしまうと困りますので私の店につくまで我慢してもらっていいですか」
「ああそうだな…あまりの驚きにここが商業ギルドだってことを忘れていた。ただほんとにいっぱいあるから覚悟しとけよ」
「ええ楽しみにしていますよ」
嫌味を言ったつもりだったんだが、大人な対応をされてしまった。さらにムカついてきたがここは我慢しておいてやろう。
そんなやり取りをしていたら職員のなかでもなにか恰好が違った人が走ってきた。
「ヘロンさん~おひさしぶりです~早くお仕事に戻ってきてくださいってうわぁぁ…」
それは女性だったのだがかなりの勢いで近づいてきていたため止まれるか心配だったが、案の定止まれずにというか明らかに何にもないところで転んでヘッドスライディングをかましていた。ただし顔から床につっこんでいたためかなり痛そうだ。まあはたから見たらただ走ってきて転んだというギャグのような感じになっていたが。
「おいヘロン…この人は大丈夫なのかほらいろんな意味で」
「平常運転なので大丈夫ですよ。ほら立ってください、また踏まれてしまいますよ。それにこれでも優秀なので私がいない間や通常業務はお任せしているます。役職だって副ギルドマスターなんですよ」
いやこれが普通なのかよというかどんだけ頑丈なんだよ、いま思い切り転んだというか突っ込んだばっかなのにもう起き上がっているぞ、これが副ギルドマスターかよ大丈夫なのかこのギルド。というか情報量が多すぎだろうが。
「いててまた転んでしまいました。あっヘロンさん改めてお帰りなさい、あと横の人も初めましてセレーネと申します!よろしくお願いします!」
「ああよろしく俺は悟だ」
相当勢いのある人だなそれに元気だ、それだけにドジっ子属性というのがいい感じに噛み合っているな。相当面白い人材だがヘロンはどこで発掘してきたんだろうかそこも気になってきた。
「セレーネさん私がいない間に何か困ったことや私宛に手紙などは届いてないですか?」
「それなら大丈夫です、特に問題もありませんでしたし。あっしいて言うなら何人か会いたいという人がいましたけど特に大事な人ではなかったので、いつものようにお帰りいただきました」
ヘロンが視線で話しかけてきた、さしずめ「ほらどうでしょう」かな。まあ確かに仕事に関しては優秀なのが言葉の端々から受け取れた。本人の前でそういうことを言うのは失礼だから、軽くうなずいておくだけにとどめたが。
「ああそういえば先ほど違法の疑いのある商売をされている方を見かけましたのでペンと羊皮紙をいただけますか」
「はいとってきま~す」
ヘロンがこういうことを突然いうのにも慣れているのだろうか、何も驚かずにすぐにとって来た。おそらくさっきの店の特徴などを書いてそういう専門の部署にでも出しに行くのだろう。ヘロンが書くのに集中しているため少し手持ち無沙汰になってしまったと思い周りを見ているとセレーネと目が合った。どうやら向こうもこちらに興味があったのだろう、すごく何かを聞きたそうにこちらを見ている。
「あーどうかしたのか?」
「いいえ少し黒髪黒目の方は珍しかったので思わず見てしまってました。失礼ですけどここら辺の出身の方ではありませんよね、確か遠く東の島の方々がそのような色をしていると聞いたことがあるんですが」
「ああそうだなそっちのほうから流れてきたんだ。だからここあたりのことはあまり知らないから今度教えてくれると嬉しい」
「任せてください!セレーネはここには5年ほど住んでいますので詳しいと思いますよ。ただヘロンさんには及ばないと思うので私じゃなくてヘロンさんに聞いたほうがいいと思うのですが?あっこれはけっして話がしたくないとかではないのですよ!」
「大丈夫だ流石にそこまで鈍感じゃないからな、ただヘロンは商人だから常にこの都市にいるわけではないんだろう?それならここにいる人に聞いたほうがいいかなって思っただけだ」
あっこちにも日本みたいな国が存在するのか、だとすると下手に貴族みたいな設定じゃなくて、みんなあまり知らないだろうからそっちの出身みたいな感じのほうがいいかもな。
そんな話をしていたらどうやら書くのが終わったようだ。さすがにに書き慣れているみたいだな相当早かった。
「さてサトルさんこちらの用事も終わりましたのでそろそろ私の店のほうに行きましょうか。セレーネも仕事を頑張ってくっださいね」
「意外と早かったなさすがギルドマスター様は違うな。それじゃあなセレーネ今度飯でも食べながら話きかせてくれ」
「はい!お仕事頑張ります。サトルさんも今度おいしいお店紹介しますから!」
最後まで元気いっぱいだったな、思わずこっちも元気になってしまいそうだ。これからこの都市にしばらくいるだろうから知っておくのは悪いことじゃないだろう。それにセレーネのように明るい人と話すのも楽しいだろうからな。