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0.プロローグ

楽しんでお読み頂けたら嬉しいです…!

(ローラ視点)


「……後、一年ね」




 パタンと読みかけの本を閉じ、私は息を吐いてそう口にすると、いつも見慣れている自室の天井を仰ぎ見た。



 ……後一年とは、明日で私は19歳の誕生日を迎え、その一年後には20歳になるという意味だ。

 この国の結婚適齢期を当に過ぎているが、どうしても結婚する気が起きない。

 ……いや、正確には結婚をすることは出来ない、といったところか。




(そう、私は“呪われ姫”だから)



 自身が城外でそう呼ばれているのを、私は知っている。

 ……無論、それは間違いではない。

 現に私は、“呪われている”のだから。



 ……とはいえ、私の国には王位継承者が私の他にいない。

 従兄弟ならいるのだが、まだ先日生まれたばかりだ。

 つまり、王位継承権は私しかいない。



(……まあ、例え私に跡継ぎが出来なかったとしても、その子が大きくなってから継承して貰えば、それで済む話よね)



 私は再度息を吐き、今度は窓の外を眺める。




 ……いつ見ても変わらない、私の故郷。




 一年中雪と氷に覆われている国、マクルーア王国。

 昔は四季が豊かで自然に富んだ国と聞いているが、今はそんな面影は微塵も感じられない。

 そんな窓の外では、しとしとと雪が今も降り続いている。



(……私は、“呪われ姫”。 この国で一生、生涯一人で生きていくの)




 私が跡を継ぎ、それを今はまだ幼い王太子に継承するまで、私はまだ死ねない。

 死ぬわけにはいかない。




(……それが私の、この国に生まれてきたせめてもの使命よ)





 そう自分に言い聞かせ、私は窓の外の雪をいつまでも、見つめていたのだった。







 ☆






(エルマー視点)


「……もう少しで、あの子に会えるんだ」




 俺は手の中に収まっている雪結晶を象ったアイスブルーの飾りを見て、そう呟く。




「エルマー、いつまでお前はそうしているつもりなんだ」




 そう呆れたような声で名を呼ばれ、後ろを振り返れば、二年前に即位した俺の兄……レナルド兄さんの姿があった。

 俺は雪結晶を服の中にしまい、少し不貞腐れたように口を開く。



「良いではないですか。 兄さんに言われた通り、俺は身を固める決意をしたんですよ」

「身を固めるといっても、まだ許可すら頂けていないではないか。

 ……それに、彼方の返答は十中八九、“ノー”と言われるだろう?」



 レナルド兄さんにそう言われ、俺は拳を握りしめて言う。




「……分かっています。 ただ俺は、あの子しか考えられないのです。

 ……もしあの子が振り向いてくれなければ、俺は一生独身を貫きますから」




 その言葉に、兄さんは「お前は乙女か」と言い、俺を軽く小突く。 それには少し苦笑を返し、それでも、と兄さんに向かって口を開いた。



「……あの子は俺の、大事な人ですから」




 ……そう、あの子は俺の大事な子。

 隣国の第一王女である。




(本当はもっと早く、あの子の近くに居られたら良かった)




 ただどうしても、あの子の近くに寄ることさえ出来なかった“事情”があった。

 ……それは、俺があの子の側にいることを、あの子の国が許さなかったからだ。





(それがようやく、あの子に会える)




 俺はそれでも、めげずに説得した結果、明日のあの子の誕生日に、正式な場で会えることになったのだ。




(……その場で俺は、あの子に面と向かって告げるんだ)




 もう一度、ペンダントを握りしめる。






「……やっと、やっと君に会える。 もうすぐだ」




 そして、あの子と居られる猶予は一年。 ……それまでに、あの子に似つかわしくない“鳥籠”のような呪縛の中から、外の広い世界へと、解き放たせてみせる。









「待っていてくれ、姫……いや、ローラ・マクルーア姫」







 氷の国の“呪い姫”と、隣国の第二王子の止まっていた運命の歯車が、少しずつ、回り始めようとしていた……―――




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