山越え
耳が痛い。
花夜は耳を抑えながらも進む。
山を登り始め少し経つと猛烈な吹雪に見舞われた。
少し進むだけでも一苦労だ。
息を吐くたびに白い煙のようなものが出る、花夜にとってこれははじめての経験だ。
「花夜!大丈夫か!」
狩夜の声が聞こえると花夜は答える。
「大丈夫です!」
私は狩夜に心配をかけないよう声をだす。
狩夜にとってもこれほどの吹雪は予想外だったが、方向感覚を失いながらも検討をつけ始めてはいた。
2人は離れすぎると鼓動を使いお互いの位置を把握する。
同じ鼓動音なので近くにいれば音で気付けるのだ。
ゆっくりとだが確実に進んでいく。
....?。
花夜は何かに気づいて足を止める。
何かの物体が足元の転がっていたので確認すると、それは子供だった。
酷い傷を負っているようで息が弱々しい。
なんでこんなところに..、いやそんなことを言っている場合ではない。
「小屋が見えた!」
狩夜の声が聞こえる。
花夜は子供を引きずって運ぶ。
「もう少しだから頑張って」
花夜は子供に声をかけながら小屋を目指す。
なんとか小屋に引きずり込んだが重傷だ。
傷口は凍傷でやられ閉じてはいるが危険な状態だ。
「とりあえず温めるぞ!」
狩夜は暖炉に火をつけて部屋の中を温めながら皮袋から傷薬を取り出して花夜に渡す。
花夜は子供の酷い傷がある部分にはふんだんに薬を塗りつける。
子供は呻き声を上げながら痛みに耐えているようだった。
花夜は声をかけ続ける。
赤の他人だろうが目の前で死なれるのは目覚めが悪いという理由で狩夜は尽力する。
だが、2人とも医者でもなく魔法使いでもない。
一般的な傷薬くらいしかしてやれる治療方がない。
傷薬を塗り終えると狩夜は防寒着を着る前の服を袋から取り出して子供にかけてやる。
「やれるだけのことはした...、あとはこいつ次第だ..」
狩夜はそれだけ言うとさっさと寝てしまう。
花夜は子供の手を握りしめて一夜を過ごした。