準備
狩夜と花夜は氷の国へと足を進めて数日。
その道中に商人と出会い、狩夜は何やら買い込んでいる。
20分ほど商談を横で聞いている花夜。
狩夜と商人の話が終わると狩夜は花夜に色々と渡していた。
防寒着に長めの黒いブーツ、分厚い手袋など保温性の高い品物ばかりだった。
狩夜に手渡された物に着替えながらも、狩夜の袋に目がいった。
どう考えても袋の体積より入れたものの体積の方が大きいので不思議に思い訪ねて見る。
「狩夜お兄ちゃん...、その袋すごいですね」
狩夜は袋を指差しながら疑問に答える。
「これはどこかの偉い魔法使いが売り始めた袋で、どんな物でも圧縮して袋にそのままの形で入れることができるが、値段が値段でな、一番物を入れられないこの袋でも10万ガルだ...」
「10万....!」
花夜は驚いた顔で袋を見つめる。
「旅の必需品だから仕方なく買ったがデメリットもある、これを落とせば持ち物全て失うのがデメリットと言っていい」
そう言いながら袋に必要な物をしまっていく。
10万なんて価値がその袋にあるなんて見ただけではわからない。
それほどまでになんの変哲もない皮袋にしか見えないのだ。
しかし、花夜の前で買った商品がどんどん吸い込まれるように入って行くので信じざるを得ない。
〜山のふもと〜
狩夜と花夜は山越えをするためにふもとまで移動した。
この山の向こうに目的地の氷の国がある。
だが、その前に....。
狩夜と花夜は身構えて特訓をする。
無駄な体力を使うのはやめておいた方がいいと思うだろうが、花夜の鼓動はまだ未完全だ。
少なくとも基本の形ができるまでは場所を問わずに特訓はするつもりだ。
時間は開けずに毎日しっかりと実力をつけていく。
一日、また一日と研鑽を重ねる度に花夜の鼓動は強く鋭くなっていく。
花夜の鼓動は身体能力の向上だけではなく、嗅覚の鋭さが増し聴覚の範囲が広がる事も事前の特訓で判明した。
人狼と人間では鼓動を使った際の効果が違うのだろう。
実際のところ狩夜も鼓動について深く考えたことはない。
わかっているのは、弱い人間が魔族に対応するために編み出した技が鼓動であるということくらいだ。
特訓がひと段落つくと狩夜と花夜は山を登り始めた。
とりあえず中間地点の小屋を目指して...。