あったかい
狩夜と花夜は街へ戻り、報酬を受け取った後に宿へ向かう。
その日暮らしの毎日は大変だ、毎日リソースを稼がなくては生きていけないのだから当然ではあるが。
宿で宿泊予定を入れると先に部屋の鍵をもらい夜の定食屋へと向かう。
夜の定食屋は昼の雰囲気とは打って変わり酒の匂いと男たちに笑い声が響いている。
狩夜は出来るだけ目立たない位置の席に座り花夜も続く。
狩夜は少し高めの定食屋を頼む、花夜にも同じ物を頼んだ、一品追加して。
花夜が運ばれてきた肉料理を見て狩夜に頭を下げる。
「こんなに美味しそうなものはいただけません、私は今日何も仕事をこなせていません」
「は?、何言ってんだお前、もう1人前になったつもりか?...、前にも言ったが今日のお前の失態は俺の裁量ミスによるものだ、お前が気にすることはない、それよりもしっかりと食え、食って明日への力を蓄えろ、明日はきちんと働いてもらう」
そういうと狩夜は目の前の食事にかぶりついた。
狩夜が肉にかぶりつくのを見ると花夜のお腹はぐ〜と鳴りお腹が空く。
焼きたての肉の匂いが鼻に入ってくると手を出せずにはいられない。
花夜はよだれを垂らしながら肉を食らった。
一噛みするたびに肉の旨味が口の中で弾ける。
これまでに味わったこのない肉の味を何度も堪能する。
たまらない。
気がつくと花夜は肉を平らげていた。
「食べるの早いな...」
狩夜はまだ食べて入る途中だ。
少しがっつきすぎたと思い花夜は赤面する。
花夜は水を飲みながら狩夜と話しをしようとした時。
「嬢ちゃんに食後のもう一品入りまーす」
店員さんは黄色いプルプルした小さい物体とスプーンを花夜の前に出して去る。
花夜は狩夜に聞く。
「これは何ですか?」
狩夜は静かに答える。
「デザートだ、食ってみろ、口に合うかはしらんが」
そのまま食事に戻る狩夜。
花夜はプルプルした物体をスプーンでつつく。
プリンッとはねて元の形に戻る。
その原理はわからないがなんだか面白い。
花夜は慣れない手つきでスプーンを持ち黄色い物体の端っこを救い恐る恐る口に運ぶ。
口に含んで噛み砕くと柔らかくてすぐに溶ける。
口の中で溶けた後に甘みが口の中に広がる。
「甘くて....美味しいです....」
花夜は一口でデザートの美味しさに気づき幸福そうな顔を見せる。
狩夜はその表情を見て少し和みながら食事を終わらせた。
「狩夜お兄ちゃんはデザートを食べないんですか?」
「ああ、俺はいいんだ」
「でも、私だけ食べるなんておかしい気がするのですが....」
花夜はこれ以上デザートを食べるのを躊躇している様だった。
「それはもうお前のものだ、お前がいらないんなら残して行くぞ」
「いえ、ありがたくいただきます」
その狩夜の言葉に花夜は急いでデザートを食べる。
〜宿〜
宿に戻った2人は相部屋の部屋を借りていた。
個室なんぞ取れるわけもないのでしょうがない。
まあ、花夜のベッドへの興味を見るとそこまで心配する必要はなかったが。
花夜は柔らかいベッドに手を当てて肌を滑らせて感触を楽しんでいる。
これまで柔らかい布団で寝たことがないのだろう。
「よし、今日はもう寝るぞ、お前ももう休め」
狩夜は布団にくるまり寝息を立て始めた。
花夜も布団の感触を楽しみながら少しずつ夢の世界へと微睡んで行く。
(あったかい....)
花夜はそのうち深い眠りに着いた。