第3話 ドラゴンとの戦い?
3話投稿です
ブックマークなどは伸びていませんが何人かの方々に見ていただけてるようで嬉しいです
馬車の外にはドラゴンがいた
20m程先に大きなクレーターが出来ていてそこからドラゴンが頭を覗かせている
冒険者になってすらいない一般人の俺でもわかる、あいつはやばい
ギラリ、とドラゴンの視線が俺を射抜いた気がした
「あ、あれはまさか........地龍じゃないでしょうか......?」
いつのまにか馬車から顔を出して外を見ていたエスラムさんが絞り出すように言った
「地龍って........ギルドの中でも特級扱いになってるドラゴンのことか........?なんでそんなやつがこんなところに........」
ケイシェルさんがエスラムさんに続く
特級ってなによ、何このがっつり負けイベムード!怖いんですけど
「とにかくだ!俺らは依頼主を無事に逃がさなきゃいけねぇ!ケイシェル!坊主を連れて逃げろ!!どうにか俺らが時間を稼ぐ!」
ラルスさんがロングソードをもって御者台から馬車の外へ出る
エスラムさんもそれに続いて外へ出る
「坊主、暴れんなよ.........おっさん!エスラム!必ず助けを呼んで戻ってくる!それまで死ぬんじゃねぇぞ!!」
ケイシェルさんが真剣な顔で叫びながら俺を抱える
逃げるのか、そうか........そうだよな
見るからに勝てそうにない相手だ
正直ラルスさん達でさえきっと長くは保たないだろう..........
「ラルスさん!エスラムさん!どうか、ご無事で!!」
ケイシェルさんに抱えられ馬車を飛び降りる際に叫ぶ
ラルスさんは返事をしなかった
ただしっかりとドラゴンを見据えたまま俺に向かって親指を立てた
俺がイルバホルツなんて目指さなければきっとラルスさん達は死なずに済んだのだろう
運がなかった、そう言い切るのは簡単なことかもしれない
だが
無力な自分を悔やんで俺は涙を流した
あんな脅威でも払えるくらいの力が欲しいと本気で思った
そのとき
《グギャアアアアアア》
大地を、空気を、脳を揺らす程の咆哮が聞こえた、気がした
それを咆哮だと認識する前に俺を抱えていたケイシェルさんは倒れた
ケイシェルさんに抱えられてた俺も当然バランスを崩し俺は意識を失った
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目を覚ますと既にあたりは暗かった
そして何かゴツゴツしたものに寄りかかっている、岩だろうか
「確か........ドラゴンの咆哮で気を失って........」
まだ少し痛む頭を抑えつつゆっくりと起き上がる
起き上がってからハッと気付く
何か大きな生き物の寝息のようなものが聞こえる
慎重にならなければ........クマとかモンスターとかそういうのだったら死んでしまう
そんなことを考えながら少し辺りを見回す
場所はさっきまでいたドラゴンに襲撃された場所から動いてはいないようだ
「なっ..........」
俺は絶句した
先ほどまで俺がもたれかかってた岩は少し前俺たちを襲撃したドラゴンだった
頭の先から尻尾の先までを測れば優に6mは超えるであろう巨体
ゴツゴツとした岩肌をそのままくっつけたような鱗
俺のことなど簡単に殺せてしまいそうなドラゴンは俺の隣で寝ていた
《ZZZ.........ZZZ........》
なんで俺がまだ生きてるかわからないが幸いなことにドラゴンはまだ眠っている様子
ここはゆっくりと後退してとりあえず逃げよう
ゆっくり.........ゆっくり........
しかし、主人公というのはこう言った場面でのお決まりは外さないものである
《グニッ》
何か踏んだ
表面は硬いがしなやかに動く蛇のようななにかを踏んだ
尻尾だ、ドラゴンの
《グルルルル........》
完全にお目覚めのご様子のドラゴンさん
せっかく拾った命を捨てた瞬間である
段々とドラゴンが近付いてくる
鼻息を荒くし、口は三日月状に開きその隙間からは獰猛な牙が覗いている
あーまじかーここで死ぬのかー、せっかく異世界来たのに恋人も何も出来ないのか..........
口を大きく開けたドラゴンはもう既に目と鼻の先だ
あー俺はこいつに食べられるんだな
痛いかなぁ、痛いのは嫌だなぁ
と目をつぶりながらその瞬間が訪れるのを待つ
《ペロッ》
何かが頬を撫でた
なんだ.......?
恐る恐る目を開く
ドラゴンが伏せをして頭を垂れている
えーっと、どういう状態?
『私、あなたに一目惚れしてしまいました!良かったら私のマスターになってください!!』
頭の中に女の人の声が響く
こいつ、脳内に直接.......!?
とまぁふざけるのも大概にしつつ声の主を探して辺りを見回す
声の主に検討はついてるが一応様式美だ
『あ、あのー、わかりませんか?私!私です!目の前のドラゴンです!』
まぁそうなるよね
前世ではファンタジーモノなどはよく読んだ
従魔などには念話が付き物だろう
ましてや伝説のドラゴンともなれば尚更だ
「え、えーと、ドラゴンの君が声の主?マスターっていうのは従魔契約とかそういう感じの?」
このドラゴンに敵意がないことはなんとなくわかったが出来るだけ言葉を選んで話しかける
『はい!そうです、従魔契約です!よくご存知ですねマスター!流石私のマスターです!』
まだマスターになった覚えはないのだがどうやらこのドラゴンはもう既に従魔のつもりらしい
「従魔契約っていうのはまぁいいんだけど........えーっと、あの、俺以外にいた他の人間は?」
ずっと気になってた事を聞く
敵意はなさそうだけどみんな殺したとか言われたらどうしよう
少なくともこのドラゴンとはうまくやっていけそうにない気がする
『あ、あの方たちならあそこに』
器用にドラゴンが指差した先では馬車の荷台に放り込まれただけ、という感じの3人の姿が
死んで、ないよね..........?
「一応確認取りたいんだけど、あの人たちって死んでないよね......?」
もうこの際ストレートに聞くしかないと思い勇気を振り絞って聞いた
『もちろん殺してはいません。マスターを守ろうと動いていたようなので気絶させているだけです』
良かった.......
いや、ほんとに良かった殺されてたら本当にどうしようかと..........
「じゃあ、まぁ君は悪いドラゴンじゃないみたいだし。従魔契約だっけ?してもいいよ.........」
ドラゴンが従魔とかテンプレな俺TUEEEEEEじゃないですかこんな機会逃したくないよね
『本当ですか?では、私の頭に手を置いていただけますか?』
ドラゴンが頭を差し出すので手をかざす
すると手から白い光が出始めた
『私に名前をつけてください』
ドラゴンがそう言った
名前?名前か.........岩のドラゴンなんだよなぁ
「じゃあローシュで」
名前をつけてから手の光が輝きを増す
5秒くらい光り続けたと思ったら急に光が消えた
「これで終わり?もっとこう詠唱とかなくていいの........?」
お互いの血を捧げよとかそういうのを想像してた俺はちょっと拍子抜けした
『はい、終わりですマスター。本来従魔契約というのは従魔のこの人についていきたい!という気持ちを主に伝え、主はその従魔に名を授けることで契約完了となります』
随分と曖昧なモノだなぁ
こんなもんでいいのか従魔契約
「んぅ........くそッ、頭が痛む.......」
そんなやりとりをしてると馬車の方からラルスさんの声が聞こえた
どうやら起きたようだ
この今の状況どうやって説明しよう........
「あ、おはようございますラルスさん」
とりあえず挨拶をしよう
挨拶は大事だからね、うん
「あぁおはよう坊主........って!ドラゴンは!一体........ど、こに.......」
頭をボリボリと書きつつ馬車のなかでゆっくりと起き上がったラルスさんはさっきまでの状況を思い出し慌て始め、俺の横にドラゴンがいるのを見つけて固まった
「え、えーとですね。このドラゴン.......ローシュは.....えーと、従魔契約で僕の従魔になりました。なので安全なはずです、はい」
だよね?と横のローシュに確認する
ローシュは何も言わずに首を縦に振り俺の言った事を肯定した
「従魔契約........?ローシュ.......?なんだそら、聞いたこともねぇな。でも、まだ坊主や俺らが生きてるのはそいつが安全だって保証にはなるか」
少し悩んだようだが、経験からとりあえず危険はないと判断した様子のラルスさん
その後ほかの人達も起こして同様の説明を行った
「従魔契約、ですか.....そのような事が出来た者がいる、と文献で読んだことはありますが。どういったことができるようになるのですか?」
二人ともローシュ相手にしばらく取り乱していたがエスラムさんが口を開く
そういえば何ができるようになるとか全く聞いてなかったな
「従魔契約ってどんな恩恵があるの?」
俺の後ろでくつろいでるローシュに聞く
『このように念話で会話ができるようになります』
ローシュが答えた
急に頭の中に響いた声に3人は驚いているようだ
「あれ、でもさっき従魔契約交わす前にもう念話で話出来てたよねローシュと俺は」
ローシュから話しかけて来たのだ
じゃなければまず従魔契約などできない
『はい、適性のある人とのみ。従魔契約前から会話が出来るものと思われます』
なるほど、じゃあつまり俺にはモンスターテイマーの適性があったってことか
これはチート能力だわ!これで勝つる!
「他にはなにかできたりしないの?」
念話だけっていうのもしょっぱいだろう、きっと他に何かできることがあるはずだ
『マスターからの念話を私たち従魔が感知することもできます』
俺が考えただけで指示が出せるってことか
『尻尾を持ち上げてみて』
試しにローシュに指示を出してみる
ローシュはこちらを一瞬見ると尻尾を持ち上げた
どうやら念話で会話できることは本当らしい
ラルスさん達の反応を見るに俺からの念話は聞こえてなさそうだ
「すごいな〜、従魔契約か!他には何か出来たりしないの?」
テンションの上がって来たらしいケイシェルさんが聞く
『恐らくですが、従魔の一部の技などをマスターが使えるようになると思うのですが........』
おお、なんかそういうの聞いたことある!
魔王とかになれそ.......いやこれはやめておこう
「ローシェは何が出来るの?俺にもできそうなことがあったら教えてよ」
もしかしたら魔法とか使えるようになるかもしれない
「そうですね........マスターにも使えそうなものは.......私の地魔法などは使えるかもしれません」
きたあああああああああ
やったあああああああ
やっと魔法が使えるようになるのか
いよっしゃあああああ
ん?俺得意属性とかないんだけど大丈夫かな?
「へぇ........地魔法か.......例えばどんなのができるの?」
出来るだけクールを装いつつローシェに聞く
こんなことで騒ぐほど俺は子供ではないのだ
「こんな感じですかね.......【アースウォール】」
ローシェが魔法を発動するとローシェの前に高さ5m程の土の壁が出来上がる
これが俺にも出来るのか........テンション上がってきた
「すごい.........これが龍......。中級魔法でもこの大きさとなると相当な量の魔力が必要なのでは.......」
魔法職のエスラムさんが驚いてる
この大きさを作るのは難しいのかなるほど
じゃあこの大きさの半分くらい作れれば上々かな
「よーし行くぞー【アースウォール】」
魔法を唱える
《ゴゴゴゴゴ.........》
遺跡の隠し扉を開くような壮大な音が聞こえた、気がした
周りの景色に代わり映えはない
「えーと........失敗、ってことか?」
やばい、へこむ
どうしよ.......やっぱり俺に魔法は使えないのか........?
「まぁまぁ落ち込むなよ坊主!モンスターテイムなんて聞いたことないしすげぇよ。魔法はこれからどうにかしていけばいいじゃんか」
ケイシェルさんが俺を励ましに近寄ってくる
ケイシェルさんが俺の肩に手を置こうとした時、盛大に転んだ
「いってぇ、なんだこれ?!」
みんなの視線がケイシェルさんの足元に集まる
なんか5cmくらいの石板が地面から突き出してた
ん.......?これってもしかして........
『流石ですマスター!私の魔法は無事使えるようですね!!」
やはり俺の【アースウォール】だったようだ
え、うそ、俺の魔法しょぼくない?
「魔力の差、ですかねぇ......」
エスラムさんがボソッと呟いた
魔法が使えるようにはなったが、どうやらいきなりチートというわけにはいかないらしい
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