7月23日
7月23日
この日、ぼくは夢を見た。
驚くほどその夢は何もなくて唯一、白装束を着た女性が一人だけぽつんと佇んでいた。
彼女は悲しい表情で何もないはずの空間の中、何かをずっと見つめている。
まるで誰かの帰りを待ち、延々と待ち続けているようで………。
ずっとずっと愛しき人を待っているようで………。
ずっとずっとずっと………。
何年も何十年も何百年も。
しかし、いくら待ち続けても彼は現れない。
それでも彼女は待ち続ける。
そして、その様子を黙って傍観しているぼく。
発する音は一切なく、時間だけが動くのみ。
そんな中、ぼくの中に1つの疑問が浮かび上がってきた。
何でぼくは彼女が待ち続けていると思ったのか。
それも、不思議と彼女に親近感を感じながら。
顔も名前もまるで知らない彼女なのに。
………本当にぼくは彼女のことを知らないのか?
───夢から覚めると、汗をびっしょり掻いており、目頭が熱くなっていた。
洗面台まで顔を洗いに行ってみたら涙が頬を伝った形跡が鏡に写る。
鏡に写るのはひどい顔。
普段と別段変わったところはないはずなのに鏡が写す顔はとてもひどいものだった。
これもあんな夢を見てしまったせいなのかな。
夢の事だというのに目覚めた今でも鮮明に覚えている。
とても不思議な夢で悲しくて寂しい夢だった。
寒くて身体が自然と震える。
外は小雨が降ってはいるが、部屋は蒸し暑くて寒くなる要因なんてあるはずないのに。
…いや、もちろんわかっている。
これが外部的要因によるものではなく、ぼく自身が引き起こしてい事ってことは。
それもこれもあの夢のせいだ。
ぼくまでも夢の中の人物に感化されちゃうなんて。
負の感情は止まらず心が押し潰されそうになってしまいそうになる。
だからぼくは咄嗟にあの方にメールを送った。
もう無意識に両親よりもあの方にメールをするところ、ぼくにとってあの方がどれだけ大きな存在であるか思い知らされる。
数分後にあの方からしっかり返信がありホッとするが、今日はこれ以降連絡するのは厳しいとメールで告げられる。
理由はあの方のおっちょこちょいなミスのせいのため。
よりによって何で今日なのか。
流石に情けない理由であったため一言言ってしまおうと思ったが、すぐにその感情も収まる。
だって、ぼくのこの憤りの感情もあの方からすれば勝手過ぎる。
ぼくは別にあの方の彼女でも妻でもないのだから。
それにあの方だってあの方の時間がある。
今のぼくがとやかく言う権利なんて全くないんだ。
外様子を窺うと雨の勢いが少し増したように感じた。
今日一日のぼくの気持ちを体現しているかのように。