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〇月〇日  作者: by sky kt
ある使用人の日常
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7月5日

7月5日


オカルトなんて心霊写真や怖い話とかで盛り上がるネタでしかないと思っていたが、今日はにわかにも信じられないことと出くわした。


昨日飲み過ぎて夕方近くまで爆睡してた俺たちはやっとの思いで起き、祭り向かおうとした時偶然に宿泊先の娘さんと遭遇した。


偉い気合いの入った姿であって………てか、巫女さん衣装なんて何気にコスプレイヤーだったんだなと思っていた。


流石祭りだわ、こんな大人しそうな子もはちゃけさせるなんて。


調子に乗り、愛想よく挨拶したら無視されたにはいいトラウマ。


祭りをしている大通りになると多分この村の住民全員が参加していると思うぐらい人が集まっていた。


そのまま賑やかな雰囲気に飲まれ、俺は祭りをすごく楽しんでいた。


しかしあの娘さんの姿は全然見当たらなかった。


あんな別嬪で恰好も恰好だから目立つもんなんだが、全く見当たらない。


記念に写真を撮りたかったので、たまたま年配の婆さんに別嬪さんのことを聞いたところ、貢ぎ物という恐ろしい風習を聞いてしまった。


どうやらあの娘さんはその貢ぎ物になるらしい。


貢ぎ物の条件として穢れを知らない村一番の美人が条件だそうだ。


あの子が処女ってのが意外だったと思うのはまた次回に考えるとして、その儀式に俺は興味を湧いた。


めちゃくちゃ興味が湧いた俺は旧友を誘うも怖がってしまう。


仕方ないので俺は祭りを後に、一人その儀式の会場探しに行った。


見つかったらやばいが好奇心に負け、探し続ける俺。


そして遂にそれらしき場所を発見した。


そこは村はずれの森の中で小さな祠があり、その周りにはいい感じに配置されている大きな石が祠を囲うように並べられていた。


そして入口だと思われる古びた鳥居が建っている。


後、祠の後ろに人ひとり入りそうな穴も見つけた。


やっぱり儀式を行う場所であるだけあり、ここだけ空気が違っていた。


あのおいしいと感じた空気はここにはなかった。


とても冷たく、空気を吸うたびに喉に違和感を与える。


俺は、今更ながら身震いしてきた。


ざっと見た感じ何らかの方法で殺した後、この穴に埋めるんだろうなと勝手に想像してしまう。


そしてどうやら儀式をする前に一足先にここに着いちまったらしい。


それから俺は祠周りを色々見ていた。


だがすぐに飽きてしまい、そのときはまだ特に人の気配もなく、暇だったので何気なく祠の扉を開いてしまった。


ちょっと開けるのに手間取ったが、中を見ると人の骸があり、心臓がヒヤッとした。


こわっと思った瞬間、いきなり時が止まるのを感じた気がした。


しかしそれは杞憂だったのかすぐに元の感覚に戻った。


そして急に後ろに人の気配を感じた。


怖かったが意を決して振り向くと、そこには白装束の女性がいた。


驚きすぎると声がでなくなるってのは本当だった。


声にならない悲鳴を上げた俺は腰を抜かしてしまい、倒れてしまった。


俺は死んだと思い、目を閉じた。


段々白装束の女が近づいて来るのがわかる。


ゆっくりとゆっくり俺の元へ近寄ってくる。


足音が俺のすぐそばで止んだ。


多分今俺の目の前にいるのだろう。


まだまだやりたいことがたくさんあったが俺の人生もここまでようだと覚悟した。


その時だった。


白装束の女性は俺に何か語り掛けてきた。


自分が綺麗か?という問いかけをしてきた。


ぱっと目を開けて白装束の女を目視してすぐさま助かりたいために綺麗と言おうとしたが、顔を見て言い淀んだ。


ボブカット的な黒髪で顔は血など傷がないものの生きた表情をしてなかった。


ブサイクではないが美人でもなかったその顔を凝視した。


俺は無言で白装束の女性の顔に手が伸ばし頬を少し強くひっぱった。


今思うと本当に馬鹿なことをしたと思う。


白装束の女を無理に笑わした顔にするはずだったが、怒ったような顔になってしまった。


けど、俺はその顔に凄く魅力を感じ、不意にこっちの顔の方が好みとかよくわからないことを口走ってしまった。


今度こそ駄目と覚悟したとき、白装束の女性は惚れそうになるような極上の笑顔をしてお礼を言い消えてしまった。


多分その時俺の意識も飛んだと思う。


目が覚めたら宿泊先の部屋に寝ていた。


周りには旧友のほか宿泊先の親子となんか知らないおじさんが10人くらい俺を囲っていた。


それから俺はとりあえずそのおじさんたちに事情を説明し、そのことについて泣きそうになるくらい怒られた。


40代なのに恥ずかしい…しかしその後感謝もしてきた。


どうやら俺が災害の元凶を治めちまったらしい。


知らんうちにヒーローになってしまった俺。


どうやら明日はその歓迎会をしてくれるらしい。


これで双子の兄に聞かせる土産話できて良かったよかった。


それと、この家の両親が俺にお礼を言いなんと宿泊料を無しにしてくれるそうだ!これはおいしい!


その後その娘さんも泣きながらお礼を言ってきた。


何かお礼をしたいと言ってくるが、儀式に興味あった後ろめたさと、気の利いた言葉が出てこなかったので、取りあえず笑ってとだけ言い、とてもいい笑顔をしてくれたのでその表情を写真に収めてそれで良しとした。


これも土産のひとつにしよう。


てか、双子兄に今送ろう。

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